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宅建業法 第3章

宅地建物取引士(登録・宅建士証)

宅地建物取引士(以下、宅建士)は、宅建業法で特別な役割を与えられた資格者です。この章では、試験に合格してから宅建士として仕事ができるようになるまでの流れと、登録・宅建士証に関するルールを整理します。宅建業者の免許のルールと似ている部分が多いので、違いを意識しながら読み進めましょう。

宅建士になるまでの3段階

宅建士とは、宅建士証の交付を受けた者をいいます(宅建業法2条4号)。試験に合格しただけでは宅建士ではありません。次の3段階を経る必要があります。

  1. 宅地建物取引士資格試験に合格する
  2. 試験を行った都道府県知事の登録を受ける
  3. 登録をしている知事から宅建士証の交付を受ける

試験の合格には有効期限がなく、合格後何年たっても登録を申請できます。試験は都道府県知事が行い、不正な手段で受験した者については、合格の取消しや受験の禁止ができます。さらに、情状により3年以内の期間を定めて受験できないものとすることもできます(宅建業法17条)。合格後の手続の全体像は合格後の流れも参考にしてください。

宅建士の登録

登録の要件

登録を受けられるのは、試験に合格した者で、宅地・建物の取引に関して2年以上の実務経験がある者、または国土交通大臣がそれと同等以上の能力があると認めた者です(宅建業法18条1項、同法施行規則13条の15)。同等以上の能力があると認められるのは、登録実務講習を修了した者や、国・地方公共団体などで宅地・建物の取得や処分の業務に通算2年以上従事した者などです(同法施行規則13条の16)。実務経験のない人の多くは、登録実務講習を受けて登録します。

登録は、試験を行った都道府県知事に申請します。2つ以上の都道府県で合格した者でも、登録を受けられるのはそのうち1つの知事だけです(同法施行規則14条)。登録は一生有効で、更新の制度はありません。

登録の欠格事由

次のような者は登録を受けられません(宅建業法18条1項)。宅建業者の欠格事由とほぼ同じですが、違いのある部分に注意します。

  • 宅建業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者
  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 不正手段による免許取得などで宅建業の免許を取り消され、取消しの日から5年を経過しない者(取消しを受けた法人の、聴聞の公示の日前60日以内の役員を含む)
  • 拘禁刑以上の刑に処せられ、執行を終わるなどした日から5年を経過しない者
  • 宅建業法違反や傷害・暴行・脅迫・背任などの一定の罪で罰金刑に処せられ、執行を終わるなどした日から5年を経過しない者
  • 暴力団員等
  • 不正な登録・不正な宅建士証の取得・事務禁止処分違反などを理由に登録を消除され、処分の日から5年を経過しない者
  • 上の消除処分の聴聞の公示後に、自ら登録の消除を申請した者(相当の理由がある者を除く)で、消除の日から5年を経過しないもの
  • 事務禁止処分を受け、その期間中に本人の申請で登録が消除され、まだ禁止期間が満了しない者
  • 心身の故障により宅建士の事務を適正に行うことができない者として国土交通省令で定めるもの

宅建業者の場合、未成年者は法定代理人に欠格事由がなければ免許を受けられます。これに対して宅建士の登録では、営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者は、法定代理人の事情を問わず登録を受けられません。

変更の登録と死亡等の届出

登録を受けている者は、登録事項に変更があったときは、遅滞なく変更の登録を申請しなければなりません(宅建業法20条)。登録事項には、氏名・生年月日・住所・本籍のほか、宅建業者の業務に従事している場合のその業者の商号・名称と免許証番号などが含まれます(同法施行規則14条の2の2)。勤務先の業者が変わったときや、勤務先が商号を変更したときも、変更の登録が必要です。

宅建業者の変更の届出は「30日以内」でしたが、宅建士の変更の登録は「遅滞なく」です。数字の違いが問われます。

登録を受けている者が死亡したときや、欠格事由にあたることになったときは、次の者が、その日(死亡は相続人が知った日)から30日以内に登録をしている知事へ届け出ます(宅建業法21条)。

事由届出をする者
死亡相続人
破産・刑罰・暴力団員などの欠格事由にあたった本人
心身の故障により事務を適正に行えない者にあたった本人、法定代理人または同居の親族
出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」21条(2026年10月確認)

登録の移転

登録をしている知事の都道府県以外にある宅建業者の事務所で働く場合(働こうとする場合を含む)は、移転先の知事に対して、現在登録をしている知事を経由して、登録の移転を申請することができます(宅建業法19条の2)。

  • 登録の移転は義務ではなく、申請することが「できる」制度
  • 住所を他の都道府県に移しただけでは、登録の移転はできない(勤務する事務所の所在地が基準)
  • 事務禁止処分を受け、その期間が満了していないときは申請できない

宅建士証

交付と法定講習

宅建士証の交付を受けようとする者は、登録をしている知事が指定する講習(法定講習)で、交付の申請前6か月以内に行われるものを受講しなければなりません。ただし、試験に合格した日から1年以内に交付を受ける者と、登録の移転にともなって交付を受ける者は、受講が免除されます(宅建業法22条の2第2項)。

有効期間と更新

宅建士証の有効期間は5年です(宅建業法22条の2第3項)。申請により更新でき、更新のときも申請前6か月以内の法定講習を受講します(同法22条の3)。

登録の移転と宅建士証

登録の移転があると、それまでの宅建士証は効力を失います。移転の申請とあわせて交付を申請すれば、移転先の知事は、前の宅建士証の残りの有効期間を有効期間とする新しい宅建士証を交付します(宅建業法22条の2第4項・5項)。新たに5年が始まるわけではありません。

返納・提出・書換え

  • 登録が消除されたときや、宅建士証が効力を失ったときは、速やかに交付を受けた知事に返納する(宅建業法22条の2第6項)
  • 事務禁止処分を受けたときは、速やかに交付を受けた知事に提出する。禁止期間が満了して返還を請求すれば、直ちに返還される(同条7項・8項)
  • 氏名または住所を変更したときは、変更の登録とあわせて宅建士証の書換え交付を申請する(同法施行規則14条の13)

宅建士の義務と宅建士だけができる事務

宅建士証の提示

宅建士は、取引の関係者から請求があったときは、宅建士証を提示しなければなりません(宅建業法22条の4)。また、重要事項の説明をするときは、請求がなくても、説明の相手方に宅建士証を提示しなければなりません(同法35条4項)。

宅建士の事務

宅建業法が宅建士にさせなければならないと定めている事務は、次の3つです。

  • 重要事項の説明(宅建業法35条1項)
  • 重要事項説明書(35条書面)への記名(同条5項)
  • 37条書面への記名(同法37条3項)

2022年5月の改正で、35条書面・37条書面への宅建士の押印は不要になり、記名だけでよくなりました。この3つの事務は、専任の宅建士でなくても、宅建士であれば行えます。

宅建士の心構え

宅建士は、公正かつ誠実に事務を行い、関連業務の従事者と連携に努めること(宅建業法15条)、信用・品位を害する行為をしないこと(同法15条の2)、知識・能力の維持向上に努めること(同法15条の3)が求められています。信用失墜行為の禁止は、職務と関係のない私的な行為にも及ぶと考えられています。

事務所ごとに置く専任の宅建士の人数などは、事務所・案内所の規制の章で扱います。

数字・期間のまとめ

項目数字・期間根拠
登録に必要な実務経験2年以上(または登録実務講習の修了など)同法施行規則13条の15・13条の16
不正受験者の受験禁止3年以内の期間宅建業法17条3項
登録の欠格期間原則5年宅建業法18条1項
変更の登録遅滞なく宅建業法20条
死亡等の届出30日以内(死亡は知った日から)宅建業法21条
法定講習交付申請前6か月以内のもの。合格から1年以内の交付は免除宅建業法22条の2第2項
宅建士証の有効期間5年(登録移転後は前の証の残り期間)宅建業法22条の2第3項・5項
宅建士証の返納・提出・重説時の提示義務違反10万円以下の過料宅建業法86条
出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」「宅地建物取引業法施行規則」(2026年10月確認)

試験で問われやすいポイント

  • 試験合格だけでは宅建士ではなく、登録と宅建士証の交付が必要
  • 登録の移転は任意。住所の移転ではなく、他県の事務所で働くことが要件
  • 登録の移転後の新しい宅建士証の有効期間は、前の証の残りの期間
  • 宅建士の変更の登録は「遅滞なく」、宅建業者の変更の届出は「30日以内」
  • 重要事項の説明のときは、請求がなくても宅建士証を提示する
  • 35条書面・37条書面への記名は、専任でない宅建士でもできる

まとめ

  • 宅建士になるには、合格・登録・宅建士証の交付の3段階が必要
  • 登録は一生有効だが、宅建士証の有効期間は5年で、更新には法定講習が必要
  • 登録の移転は他県の事務所で働く場合の任意の手続で、事務禁止期間中はできない
  • 重要事項の説明と、35条書面・37条書面への記名は宅建士の事務

この章の内容は、宅建業法の一問一答で確認できます。

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