宅建業法 第14章
住宅瑕疵担保履行法
新築住宅を売った宅建業者には、引渡しから10年間、構造などの欠陥に責任を負う義務があります。しかし、業者が倒産すれば、買主は修理費用を受け取れません。そこで、業者にあらかじめ資金を確保させるのが住宅瑕疵担保履行法(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律)です。この章では、宅建業者に関する部分を中心に、制度の仕組みと数字を整理します。
前提となる住宅品質確保法の10年責任
住宅品質確保法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)は、新築住宅の売主に、買主に引き渡した時から10年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵について、担保の責任を負わせています(住宅品質確保法95条1項)。この規定に反する特約で買主に不利なものは無効です(同条2項)。特約で、責任を負う期間を引渡しから20年以内まで延ばすことはできます(同法97条)。
- 新築住宅:新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもの(建設工事の完了の日から1年を経過したものを除く)(同法2条2項)
- 瑕疵:種類または品質に関して契約の内容に適合しない状態(同法2条5項)
- 構造耐力上主要な部分等:基礎・壁・柱・はりなどの構造耐力上主要な部分と、屋根・外壁・開口部の建具などの雨水の浸入を防止する部分
この10年の責任を「特定住宅瑕疵担保責任」といいます。住宅瑕疵担保履行法は、この責任を実際に果たせるように、資金の確保(資力確保)を義務づける法律です(住宅瑕疵担保履行法1条・2条5項)。
資力確保義務の対象
宅建業者に資力確保義務があるのは、宅建業者が自ら売主となって、宅建業者でない買主に新築住宅を販売し、引き渡す場合です(住宅瑕疵担保履行法2条7項・11条1項)。
| 取引 | 資力確保義務 |
|---|---|
| 業者が自ら売主、買主が宅建業者でない者の新築住宅 | あり |
| 業者が自ら売主、買主が宅建業者の新築住宅 | なし |
| 業者が媒介・代理をするだけの売買 | なし(媒介業者には義務がない) |
| 中古住宅(既存住宅)の売買 | なし |
| 新築住宅の賃貸 | なし |
8種制限と同じく、買主が宅建業者の場合は対象外です。また、住宅の建設工事を請け負う建設業者にも、同様の義務が別に定められています(同法3条)。
資力確保の2つの方法
資力確保の方法は、次の2つです。両方を組み合わせることもできます。
- 住宅販売瑕疵担保保証金を供託する
- 住宅瑕疵担保責任保険法人との間で、住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結する
保険契約
保険契約を締結し、買主に保険証券またはこれに代わる書面を交付した(または記載事項を記録した電磁的記録を提供した)新築住宅は、保証金の供託額を計算する戸数から除かれます(住宅瑕疵担保履行法11条2項)。保険契約は、次の要件を満たすものでなければなりません(同法2条7項)。
- 宅建業者が保険料を支払うこと
- 業者が責任を果たしたときは業者の損害を、業者が相当の期間を経過しても責任を果たさないときは買主の請求に基づき買主の損害を、保険で塡補すること
- 保険金額が2,000万円以上であること
- 買主が新築住宅の引渡しを受けた時から10年以上有効であること
- 国土交通大臣の承認を受けた場合を除き、変更や解除ができないこと
保険料を支払うのは業者で、買主ではありません。業者が倒産して責任を果たせない場合には、買主が保険法人に直接保険金を請求できる点がこの制度の大切な部分です。
保証金の供託
保険契約を締結しない新築住宅については、宅建業者は、毎年、基準日(3月31日)から3週間を経過する日までの間に、基準日前10年間に引き渡した新築住宅の戸数に応じた額以上の住宅販売瑕疵担保保証金を供託していなければなりません(住宅瑕疵担保履行法11条1項・2項)。
- 供託先:業者の主たる事務所の最寄りの供託所(同法11条6項)
- 有価証券:国債証券・地方債証券など、国土交通省令で定める有価証券でも供託できる(同条5項)
- 床面積55平方メートル以下の住宅:2戸をもって1戸として数える(同条3項、同法施行令6条)
- 複数の業者が共同で売主となり、負担割合を37条書面に記載した住宅は、負担割合に応じて戸数を計算する(同法施行令7条)
供託すべき額は、戸数の区分ごとに「戸数×乗ずる金額+加える金額」で計算します(同法施行令5条・別表)。たとえば、1戸なら2,000万円、10戸なら200万円×10+1,800万円=3,800万円です。上限は120億円です。
届出と契約締結の制限
基準日ごとの届出
新築住宅を引き渡した宅建業者は、基準日ごとに、保証金の供託と保険契約の締結の状況について、免許権者に届け出なければなりません(住宅瑕疵担保履行法12条1項)。届出は、基準日から3週間以内に行います(同法施行規則16条)。
新たな契約の締結の制限
供託をし、かつ届出をしなければ、基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後は、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結してはなりません(住宅瑕疵担保履行法13条)。ただし、その後に不足額を供託し、免許権者の確認を受けたときは、確認を受けた日以後は契約できます。
制限されるのは「新たな」「自ら売主となる新築住宅の」売買契約です。媒介や代理、中古住宅の売買は制限されません。
| 期限 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 基準日から3週間を経過する日まで | 保証金を供託していなければならない | 同法11条1項 |
| 基準日から3週間以内 | 供託と保険契約の状況を届け出る | 同法12条1項、同法施行規則16条 |
| 基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後 | 供託・届出をしていない業者は新たな契約を締結できない | 同法13条 |
供託所の所在地などの説明
保証金を供託している宅建業者は、自ら売主となる新築住宅の買主に対し、売買契約を締結するまでに、保証金を供託している供託所の所在地などについて、これらを記載した書面を交付して説明しなければなりません(住宅瑕疵担保履行法15条1項)。説明事項には、供託所の表示のほか、共同売主の場合の負担割合が含まれます(同法施行規則21条)。
買主の承諾を得れば、書面の交付にかえて電磁的方法で提供することもできます(同法15条2項・10条2項)。この説明は、宅建業法35条の2の供託所等の説明(営業保証金・保証協会)とは別のものです。
還付・不足額の供託・取戻し
還付
保証金を供託している業者が責任を負う期間内に、瑕疵によって損害を受けた買主は、その瑕疵を理由とする代金の返還請求権や損害賠償請求権について、他の債権者に先立って保証金から弁済を受ける権利を持ちます(住宅瑕疵担保履行法14条1項)。還付を請求できるのは、債務名義を取得したとき、業者と合意した旨の公正証書を作成したとき、業者の死亡などで履行が困難な場合に国土交通大臣の確認を受けたときなどに限られます(同条2項)。
不足額の供託と取戻し
還付などで保証金が基準額に不足することになったときは、業者は、国土交通省令などで定める日から2週間以内に不足額を供託し、免許権者に届け出なければなりません(同法16条で準用する7条)。
一方、基準日に保証金が基準額を超えることになったときは、超過額を取り戻せますが、免許権者の承認を受けなければなりません(同法16条で準用する9条)。
紛争の処理
保険契約が付けられた新築住宅の売買契約などに関する紛争については、住宅品質確保法の指定住宅紛争処理機関が、当事者の双方または一方の申請により、あっせん・調停・仲裁を行うことができます(住宅瑕疵担保履行法33条1項)。裁判よりも簡易な手続で紛争を解決できるようにするための仕組みです。
宅建業法との関係
宅建業者が住宅瑕疵担保履行法の供託・届出・契約締結の制限・説明などの規定に違反した場合は、宅建業法の指示処分や業務停止処分の対象になります(宅建業法65条1項・2項)。また、契約不適合責任の履行に関する保証保険契約などの措置を講ずるかどうかは、35条書面の説明事項です(同法35条1項13号、同法施行規則16条の4の2)。
数字・期間のまとめ
| 項目 | 数字・期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 新築住宅の売主の担保責任 | 引渡しから10年(特約で20年まで延長可) | 住宅品質確保法95条・97条 |
| 新築住宅の定義 | 未入居で、工事完了から1年以内 | 住宅品質確保法2条2項 |
| 基準日 | 毎年3月31日 | 住宅瑕疵担保履行法3条1項 |
| 供託の対象期間 | 基準日前10年間に引き渡した新築住宅 | 住宅瑕疵担保履行法11条1項 |
| 届出の期限 | 基準日から3週間以内 | 同法施行規則16条 |
| 契約締結の制限 | 基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後 | 住宅瑕疵担保履行法13条 |
| 保険金額 | 2,000万円以上 | 住宅瑕疵担保履行法2条7項3号 |
| 保険期間 | 引渡しから10年以上 | 住宅瑕疵担保履行法2条7項4号 |
| 2戸で1戸と数える住宅 | 床面積55平方メートル以下 | 同法施行令6条 |
| 不足額の供託 | 2週間以内 | 住宅瑕疵担保履行法16条・7条 |
試験で問われやすいポイント
- 資力確保義務は、業者が自ら売主で、買主が業者でない新築住宅の売買だけが対象。媒介業者には義務がない
- 保険料を支払うのは業者で、保険金額は2,000万円以上、期間は引渡しから10年以上
- 保証金は主たる事務所の最寄りの供託所に供託し、有価証券も使える
- 床面積55平方メートル以下の住宅は2戸で1戸と数える
- 届出をしないと、基準日の翌日から50日を経過した日以後は新たな新築住宅の売買契約ができない
- 供託所の所在地などは、売買契約を締結するまでに書面を交付して説明する
まとめ
- 新築住宅の売主は、構造耐力上主要な部分等について引渡しから10年間責任を負う
- 宅建業者は、保証金の供託か保険契約の締結で、その責任の資力を確保する
- 基準日は3月31日、届出は3週間以内、届出がないと50日経過後から新たな契約ができない
- 違反は宅建業法の監督処分の対象になる
この章の内容は、宅建業法の一問一答で確認できます。