宅建業法 第12章
報酬の制限
宅建業者が媒介や代理をして受け取る報酬(仲介手数料)には、上限が決められています。この章では、報酬告示にもとづく計算方法を、売買と貸借に分けて確認します。2024年7月1日施行の改正で、空き家に関する特例が拡充された点も押さえておきましょう。計算問題は手順を覚えれば確実に得点できます。
報酬規制の仕組み
宅建業者が、宅地・建物の売買・交換・貸借の代理や媒介に関して受け取ることのできる報酬の額は、国土交通大臣が定めて告示します。宅建業者は、その額を超えて報酬を受けてはなりません(宅建業法46条1項〜3項)。この告示が「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号、以下「報酬告示」)で、最終改正は2024年(令和6年)6月の国土交通省告示第949号です(2024年7月1日施行)。
上限を超えて報酬を受け取ると、100万円以下の罰金の対象になります(宅建業法82条2号)。また、不当に高額な報酬を要求する行為は、受け取らなくても禁止されています(同法47条2号)。宅建業者は、事務所ごとに、公衆の見やすい場所に報酬の額を掲示しなければなりません(同法46条4項)。
報酬は、契約が成立して初めて請求できるものです。媒介をしても契約が成立しなければ、報酬は受け取れません。
消費税の扱い
報酬告示の料率は、消費税等相当額を含んだ額で定められています。課税事業者である宅建業者の場合、売買の媒介では、代金を税抜きにして計算します。
- 計算の基礎になる代金は、消費税等相当額を含まない額(税抜き)
- 土地の売買には消費税がかからないが、業者が売主の建物などには消費税がかかる
- 報酬告示の料率(5.5%など)は、報酬にかかる消費税を含んだ数字
消費税の免税事業者である宅建業者の報酬の上限は、課税事業者の場合の算出額に110分の100を乗じた額に、媒介などにおける仕入れに係る消費税等相当額などを加えた額とされています(報酬告示第11②)。
売買・交換の媒介の報酬
計算方法
売買・交換の媒介で、依頼者の一方から受け取れる報酬の上限は、代金(税抜き)を次の3つの部分に分け、それぞれに料率を掛けて合計した額です(報酬告示第2)。
| 代金の部分 | 料率(税込) |
|---|---|
| 200万円以下の部分 | 5.5% |
| 200万円を超え400万円以下の部分 | 4.4% |
| 400万円を超える部分 | 3.3% |
代金が400万円を超える場合は、次の速算式で同じ結果が得られます。
- 税抜きの報酬額=代金(税抜き)×3%+6万円
- 課税事業者の上限=上の額×1.1
交換の場合は、交換する物件の価額に差があるときは、高いほうの価額を基準にします。
計算例
業者Aが、土地付き建物の売買を媒介した場合を考えます。土地の代金は3,000万円、建物の代金は2,200万円(消費税200万円を含む)です。
- 代金を税抜きにする:土地3,000万円+建物2,000万円=5,000万円
- 速算式に当てはめる:5,000万円×3%+6万円=156万円
- 消費税を加える:156万円×1.1=171万6,000円
Aは、売主と買主の双方から媒介を依頼されていれば、それぞれから171万6,000円まで受け取れます。
売買・交換の代理の報酬
代理の場合、依頼者から受け取れる報酬の上限は、媒介の計算方法で算出した額の2倍以内です。ただし、取引の相手方からも報酬を受ける場合は、両方から受ける額の合計が、媒介の計算額の2倍を超えてはなりません(報酬告示第3)。
上の例で、Aが売主の代理をしたなら、売主から受け取れる上限は171万6,000円×2=343万2,000円です。Aが買主からも媒介の報酬を受けるなら、売主と買主から受ける合計が343万2,000円以内でなければなりません。
1つの取引に複数の業者が関わる場合も、業者全体が受け取る報酬の合計は、1つの業者が関わった場合の上限(代理なら媒介の計算額の2倍)を超えられないと解されています。
低廉な空家等の特例
売買・交換の媒介
2024年7月1日施行の改正で、低廉な空家等の特例が拡充されました。低廉な空家等とは、売買代金(税抜き)または交換の価額が800万円以下の宅地・建物をいいます(報酬告示第7)。改正前の基準は400万円以下でした。
低廉な空家等の売買・交換の媒介では、媒介に要する費用を勘案して、通常の計算額を超えて報酬を受けることができます。ただし、依頼者から受ける報酬は、30万円の1.1倍(33万円)を超えてはなりません。物件が実際に空家であるかどうかは問われず、代金の額で判断します。
国土交通省は、この特例で報酬を受ける場合には、媒介契約の締結に際し、あらかじめ上限の範囲内で報酬額について依頼者に説明し、合意する必要があることを、「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」に明記したとしています。
たとえば、代金300万円の土地の売買を媒介した場合、通常の計算では、200万円×5.5%+100万円×4.4%=15万4,000円が上限です。この特例を使えば、事前の説明と合意を前提に、33万円まで受け取ることができます。
売買・交換の代理
低廉な空家等の代理の場合は、媒介の特例で算出した額の2倍以内です。相手方からも報酬を受ける場合は、合計がその2倍を超えてはなりません(報酬告示第8)。
貸借の報酬
貸借の媒介
貸借の媒介で、依頼者の双方から受け取れる報酬の合計額は、借賃の1か月分の1.1倍以内です(報酬告示第4)。借賃は消費税等相当額を含まない額で、使用貸借の場合は通常の借賃を基準にします。
居住用建物の賃貸借の媒介では、依頼者の一方から受け取れる報酬は、借賃の1か月分の0.55倍以内が原則です。ただし、媒介の依頼を受けるに当たって依頼者の承諾を得ている場合は、この制限はかからず、双方の合計が1.1倍以内であればかまいません。承諾は、依頼を受けるときに得る必要があり、契約成立後に得ても足りません。
貸借の代理
貸借の代理で依頼者から受け取れる報酬は、借賃の1か月分の1.1倍以内です。相手方からも報酬を受ける場合は、合計が1.1倍を超えてはなりません(報酬告示第5)。
権利金の授受がある場合の特例
居住用建物以外の宅地・建物の賃貸借で、権利金(権利設定の対価として支払われ、返還されない金銭)の授受がある場合は、権利金の額を売買代金とみなして、売買の計算方法で報酬を計算することができます(報酬告示第6)。居住用建物には使えません。
たとえば、店舗の賃貸借で月額借賃30万円、権利金300万円(いずれも税抜き)の場合、借賃による上限は双方合計で30万円×1.1=33万円です。権利金を代金とみなすと、一方から(200万円×5%+100万円×4%)×1.1=15万4,000円、双方で30万8,000円となります。このケースでは、借賃を基準にしたほうが高くなります。
長期の空家等の特例
2024年7月1日施行の改正で、長期の空家等の貸借の特例が新設されました。長期の空家等とは、現に長期間にわたって居住・事業その他の用途に使われておらず、または将来にわたり使われる見込みがない宅地・建物をいいます(報酬告示第9)。
長期の空家等の貸借の媒介では、借主から受ける報酬が借賃の1か月分の1.1倍以内(居住用は承諾がない限り0.55倍以内)である場合に限り、媒介に要する費用を勘案して、通常の上限を超えて、双方から合計で借賃の1か月分の2.2倍まで受け取ることができます。つまり、上乗せは貸主から受け取る形になります。代理についても、借賃の1か月分の2.2倍以内とする特例があります(報酬告示第10)。
報酬以外に受け取れるもの
宅建業者は、報酬告示による報酬のほかは、報酬を受けることができません。ただし、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額は、別に受け取ることができます(報酬告示第11①)。依頼者から頼まれていない広告の費用や、通常の業務で行う広告の費用は請求できません。
数字のまとめ
| 項目 | 上限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 売買の媒介(依頼者の一方から) | 5.5%・4.4%・3.3%の段階計算(400万円超は(代金×3%+6万円)×1.1) | 報酬告示第2 |
| 売買の代理 | 媒介の計算額の2倍(相手方からの分と合計して) | 報酬告示第3 |
| 低廉な空家等の媒介 | 代金800万円以下、依頼者1人から33万円(30万円×1.1)まで | 報酬告示第7 |
| 貸借の媒介 | 双方合計で借賃の1か月分×1.1(居住用は一方から0.55倍が原則) | 報酬告示第4 |
| 貸借の代理 | 借賃の1か月分×1.1(相手方からの分と合計して) | 報酬告示第5 |
| 長期の空家等の貸借の媒介 | 双方合計で借賃の1か月分×2.2 | 報酬告示第9 |
| 上限を超えた受領の罰則 | 100万円以下の罰金 | 宅建業法82条2号 |
試験で問われやすいポイント
- 売買の報酬は、税抜きの代金で計算する。土地には消費税がかからない
- 代理の上限は媒介の2倍で、相手方からも受ける場合は合計で2倍以内
- 低廉な空家等は代金800万円以下が対象で、上限は依頼者1人につき33万円
- 居住用建物の貸借の媒介では、承諾がない限り一方から0.55か月分まで。承諾は依頼を受けるときに得る
- 権利金の特例は居住用建物には使えない
- 依頼者の依頼による広告の料金は、報酬とは別に受け取れる
まとめ
- 報酬の上限は国土交通大臣の告示で決まり、超えて受け取ると罰則がある
- 売買の媒介は税抜き代金で段階計算し、400万円超は(代金×3%+6万円)×1.1
- 2024年7月から、低廉な空家等は800万円以下・33万円まで、長期の空家等の貸借は2.2か月分までに拡充
- 貸借の媒介は双方合計で1.1か月分、居住用は一方から0.55か月分が原則
実際の金額は仲介手数料の解説や実務ツールでも確認できます。
この章の内容は、宅建業法の一問一答で確認できます。