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宅建業法 第4章

営業保証金

宅建業者と取引をした相手が損害を受けたときに、確実にお金が戻るようにするための仕組みが営業保証金です。この章では、供託する金額と場所、事業を始めるまでの手順、還付・不足額の補充・保管替え・取戻しのルールをまとめます。手続の順番と期間を正確に覚えることが得点のポイントです。

営業保証金の目的

宅建業者と取引をした人が、業者の倒産や不正によって代金などを回収できなくなることがあります。そこで、宅建業者にあらかじめ一定額を国の機関である供託所に預けさせ(供託)、取引の相手方がそこから弁済を受けられるようにしています。これが営業保証金です。

宅建業者は、営業保証金を供託するかわりに、次の章で学ぶ保証協会に加入する方法も選べます。保証協会の社員になれば、営業保証金を供託する必要はありません(宅建業法64条の13)。

供託する額と場所

供託額

営業保証金の額は、主たる事務所(本店)につき1,000万円、その他の事務所(支店)につき事務所ごとに500万円の合計額です(宅建業法施行令2条の4)。たとえば、本店1か所と支店2か所の業者なら、1,000万円+500万円×2=2,000万円です。案内所などの事務所以外の場所については、供託は不要です。

供託所

営業保証金は、主たる事務所の最寄りの供託所に供託します(宅建業法25条1項)。支店の分も、支店の近くではなく、本店の最寄りの供託所にまとめて供託します。

有価証券による供託

営業保証金は、金銭のほか、国債証券・地方債証券などの有価証券で供託することもできます(宅建業法25条3項)。有価証券は、種類によって評価額が変わります(同法施行規則15条)。

有価証券の種類評価額
国債証券額面金額の100%
地方債証券・政府が保証する債券額面金額の90%
その他の債券(国土交通大臣が指定した社債券など)額面金額の80%
出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」15条・15条の2(2026年10月確認)

株券は、営業保証金に充てられる有価証券に含まれていません。

供託から事業開始までの流れ

宅建業者は、営業保証金を供託したら、供託書の写しを添えて、その旨を免許権者に届け出ます。この届出をした後でなければ、事業を開始してはなりません(宅建業法25条4項・5項)。

  1. 免許を受ける
  2. 営業保証金を供託する
  3. 供託した旨を免許権者に届け出る
  4. 事業を開始する

免許権者は、免許をした日から3か月以内に業者が届出をしないときは、届出をするよう催告しなければなりません。催告が到達した日から1か月以内に届出がないときは、免許を取り消すことができます(宅建業法25条6項・7項)。「取り消さなければならない」ではなく「取り消すことができる」です。

届出をせずに事業を開始した業者には、6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されます(宅建業法81条1号)。

事務所を新設したとき

事業開始後に事務所を新しく設けたときは、その事務所の分の営業保証金(1か所につき500万円)を、主たる事務所の最寄りの供託所に供託し、届出をした後でなければ、その新しい事務所で事業を開始できません(宅建業法26条)。新設の事務所の近くの供託所ではない点に注意しましょう。

還付

還付を受けられる者

宅建業者と宅建業に関し取引をした者は、その取引によって生じた債権について、業者が供託した営業保証金から弁済を受ける権利があります(宅建業法27条1項)。ただし、宅建業者は還付を受ける権利を持ちません。業者どうしの取引で生じた債権は、営業保証金の対象外です。

還付の対象は「宅建業に関する取引」から生じた債権です。たとえば、宅建業者に広告物を納品した広告会社の代金債権や、従業員の給与債権は、宅建業の取引によって生じた債権ではないため、還付の対象にならないと解されています。

還付の限度額

還付を受けられるのは、その業者が供託している営業保証金の額の範囲内です。本店と支店2か所の業者なら、2,000万円が上限です。支店で取引をした人も、支店の分の500万円に限られるわけではありません。

不足額の供託

還付によって営業保証金が不足したときは、宅建業者は、免許権者から不足の通知書の送付を受けた日から2週間以内に不足額を供託しなければなりません(宅建業法28条1項、宅地建物取引業者営業保証金規則5条)。さらに、供託した日から2週間以内に、その旨を免許権者に届け出ます(宅建業法28条2項)。

保管替え

主たる事務所を移転して最寄りの供託所が変わった場合は、営業保証金を新しい供託所に移さなければなりません(宅建業法29条1項)。方法は、供託している財産の種類で変わります。

供託しているもの方法
金銭のみ遅滞なく、費用を予納して、従前の供託所に保管替えを請求する
有価証券(金銭との併用を含む)遅滞なく、移転後の最寄りの供託所に新たに供託する(その後、従前の供託所から取り戻す)
出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」29条(2026年10月確認)

有価証券が含まれる場合は保管替えを請求できず、いったん二重に供託する形になります。

取戻し

取り戻せる場合

次のような場合には、宅建業者であった者やその承継人は、営業保証金を取り戻すことができます(宅建業法30条1項・64条の14)。

  • 免許の有効期間が満了したとき
  • 破産・解散・廃業の届出で免許が効力を失ったとき、業者が死亡したとき、法人が合併で消滅したとき
  • 免許を取り消されたとき
  • 一部の事務所を廃止して、営業保証金が必要額を超えたとき(超過額)
  • 主たる事務所の移転で新たに供託したとき(従前の供託所の分)
  • 保証協会の社員となったとき

公告の要否

取戻しの際は、原則として、還付を受ける権利を持つ人に対し、6か月を下らない一定期間内に申し出るよう公告しなければなりません。その期間内に申出がなかった場合に限り、取り戻せます(宅建業法30条2項)。公告は官報で行い、公告をしたら遅滞なく免許権者に届け出ます(宅地建物取引業者営業保証金規則7条)。

ただし、次の場合は公告が不要です。

  • 主たる事務所の移転により、従前の供託所の分を取り戻すとき(宅建業法30条2項かっこ書)
  • 保証協会の社員となって取り戻すとき(同法64条の14第2項は、公告の規定を準用していない)
  • 取戻しの事由が発生してから10年を経過したとき(同法30条2項ただし書)

数字・期間のまとめ

項目数字・期間根拠
供託額主たる事務所1,000万円、その他の事務所1か所につき500万円宅建業法施行令2条の4
届出がないときの催告免許の日から3か月以内に届出がないとき宅建業法25条6項
催告後の免許取消し(任意)催告の到達から1か月以内に届出がないとき宅建業法25条7項
不足額の供託通知書の送付を受けた日から2週間以内宅建業法28条1項
不足額供託の届出供託から2週間以内宅建業法28条2項
取戻しの公告期間6か月以上宅建業法30条2項
公告不要となる経過期間取戻し事由の発生から10年宅建業法30条2項ただし書
出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」「同法施行令」「同法施行規則」「宅地建物取引業者営業保証金規則」(2026年10月確認)

試験で問われやすいポイント

  • 支店の分も、本店の最寄りの供託所にまとめて供託する
  • 供託しただけでは事業を開始できず、免許権者への届出が必要
  • 催告後1か月以内に届出がない場合の免許取消しは「できる」であり、義務ではない
  • 宅建業者は還付を受けられない。還付の上限は、その業者が供託している全額
  • 有価証券で供託している場合は保管替えを請求できず、新たに供託する
  • 保証協会に加入した場合の取戻しは、公告が不要

まとめ

  • 営業保証金は、本店1,000万円・支店500万円の合計を本店最寄りの供託所に供託する
  • 供託、届出の順に済ませてからでないと事業を開始できない
  • 還付による不足は、通知を受けた日から2週間以内に補充し、さらに2週間以内に届け出る
  • 取戻しには原則6か月以上の公告が必要だが、例外が3つある

営業保証金にかわる制度は、保証協会の章で学びます。

この章の内容は、宅建業法の一問一答で確認できます。

宅建業法の目次