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宅建業法 第6章

事務所・案内所の規制

宅建業者には、事務所や案内所ごとに守るべき義務があります。どの義務がどの場所に課されるかを区別して覚えることが、この分野のポイントです。この章では、専任の宅建士の設置、標識、案内所等の届出、帳簿・従業者名簿、報酬額の掲示、従業者証明書を順に確認し、最後に場所ごとの一覧表で整理します。

義務がかかる場所の分類

宅建業法の規制を考えるうえで、場所は大きく3つに分けられます。

  • 事務所:本店・支店など、免許の基準になる場所(宅建業法施行令1条の2)
  • 契約の締結や申込みの受付をする案内所等:専任の宅建士を置くべき「事務所以外の場所」(同法施行規則15条の5の2)
  • 契約や申込みを受け付けない案内所や、分譲物件の現地など:標識だけが必要な場所(同法施行規則19条1項)

専任の宅建士を置くべき事務所以外の場所

次の場所のうち、宅地・建物の売買や交換の契約(予約を含む)、売買・交換・貸借の代理や媒介の契約を締結し、またはこれらの申込みを受ける場所には、専任の宅建士を置かなければなりません(同法施行規則15条の5の2)。

  • 継続的に業務を行うことができる施設がある場所で、事務所以外のもの
  • 10区画以上の一団の宅地または10戸以上の一団の建物の分譲を行う案内所
  • 他の宅建業者が行う、10区画以上・10戸以上の一団の宅地建物の分譲の代理・媒介を行う案内所
  • 業務に関して実施する展示会その他これに類する催しの場所

この章では、事務所とこれらの場所をあわせて「事務所等」と呼びます(宅建業法31条の3第1項)。

専任の宅建士の設置

必要な人数

宅建業者は、事務所等ごとに、成年者である専任の宅建士を、国土交通省令で定める数以上置かなければなりません(宅建業法31条の3第1項)。

場所必要な数
事務所その事務所で業務に従事する者の5分の1以上
契約・申込みを受ける案内所等1人以上
出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」15条の5の3(2026年10月確認)

たとえば、業務に従事する者が12人の事務所では、12÷5=2.4なので、専任の宅建士が3人以上必要です。端数は切り上げて考えます。

成年者であること

専任の宅建士は成年者でなければなりません。ただし、宅建業者本人(法人の場合は役員)が宅建士であるときは、その者が自ら主として業務に従事する事務所等については、成年者である専任の宅建士とみなされます(宅建業法31条の3第2項)。

不足したとき

宅建業者は、専任の宅建士の数が足りない事務所等を開設してはなりません。既存の事務所等で、退職などにより数が足りなくなったときは、2週間以内に補充などの必要な措置をとらなければなりません(宅建業法31条の3第3項)。違反した場合は、100万円以下の罰金の対象です(同法82条2号)。

標識の掲示

宅建業者は、事務所等と、国土交通省令で定める業務を行う場所ごとに、公衆の見やすい場所に標識を掲げなければなりません(宅建業法50条1項)。標識が必要な場所は、次のとおりです(同法施行規則19条1項)。

  • 事務所
  • 継続的に業務を行うことができる施設がある事務所以外の場所
  • 一団の宅地建物の分譲をする場合の、その宅地・建物の所在する場所(現地)
  • 一団の宅地建物の分譲を行う案内所(他の業者の分譲の代理・媒介を行う案内所を含む)
  • 業務に関して展示会などの催しを行う場所

標識は、契約や申込みを受け付けない案内所や、分譲の現地にも必要です。専任の宅建士の設置や届出よりも、対象が広い点に注意しましょう。

案内所等の届出

宅建業者は、専任の宅建士を置くべき事務所以外の場所(契約・申込みを受ける案内所等)について、所在地・業務内容・業務を行う期間・専任の宅建士の氏名を、あらかじめ届け出なければなりません(宅建業法50条2項)。届出は、業務を開始する日の10日前までに行います(同法施行規則19条3項)。

届出先は、免許を受けた国土交通大臣または知事と、その場所の所在地を管轄する知事の両方です。たとえば、甲県知事の免許を受けた業者が、乙県に契約を受け付ける案内所を設ける場合は、甲県知事と乙県知事の両方に届け出ます。

事務所だけに課される義務

報酬額の掲示

宅建業者は、事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければなりません(宅建業法46条4項)。案内所には不要です。

帳簿の備付け

宅建業者は、事務所ごとに業務に関する帳簿を備え、取引のあったつど、取引の年月日、宅地・建物の所在と面積などを記載しなければなりません(宅建業法49条)。帳簿は各事業年度の末日に閉鎖し、閉鎖後5年間(自ら売主となる新築住宅に係るものは10年間)保存します(同法施行規則18条3項)。パソコンのファイルなどに記録し、必要に応じて紙面に表示できるなら、それで帳簿への記載にかえられます(同条2項)。

従業者名簿

宅建業者は、事務所ごとに従業者名簿を備え、従業者の氏名、従業者証明書の番号、主たる職務内容、宅建士であるかどうかの別などを記載しなければなりません(宅建業法48条3項、同法施行規則17条の2第1項)。名簿は最終の記載をした日から10年間保存し(同条4項)、取引の関係者から請求があれば閲覧させなければなりません(宅建業法48条4項)。

従業者証明書

宅建業者は、従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させなければ、業務に従事させてはなりません(宅建業法48条1項)。従業者は、取引の関係者から請求があったときは、証明書を提示しなければなりません(同条2項)。

宅建士証を持っている宅建士でも、従業者証明書の携帯は必要です。宅建士証で従業者証明書にかえることはできません。また、代表者や非常勤の役員、一時的に業務に従事する者にも携帯させる必要があると解されています。

場所ごとの義務の一覧

義務事務所契約・申込みを受ける案内所等契約・申込みを受けない案内所・現地
専任の宅建士5分の1以上1人以上不要
標識必要必要必要
案内所等の届出不要(免許・変更の届出で把握)10日前までに必要不要
報酬額の掲示必要不要不要
帳簿必要不要不要
従業者名簿必要不要不要
出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」「宅地建物取引業法施行規則」(2026年10月確認)

契約・申込みを受ける案内所等は、後で学ぶクーリング・オフの「事務所等」にもかかわります。土地に定着する建物内にある案内所で専任の宅建士を置くべきものは、クーリング・オフができない場所になります。テント張りの案内所のように土地に定着していないものは、クーリング・オフの対象になる場所です(同法施行規則16条の5)。詳しくは8種制限の章で扱います。

数字・期間のまとめ

項目数字・期間根拠
専任の宅建士(事務所)業務に従事する者の5分の1以上同法施行規則15条の5の3
専任の宅建士(案内所等)1人以上同法施行規則15条の5の3
不足したときの補充2週間以内宅建業法31条の3第3項
一団の分譲の規模10区画以上の宅地・10戸以上の建物同法施行規則15条の5の2
案内所等の届出業務開始の10日前まで同法施行規則19条3項
帳簿の保存閉鎖後5年(自ら売主の新築住宅は10年)同法施行規則18条3項
従業者名簿の保存最終の記載から10年同法施行規則17条の2第4項
出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」「宅地建物取引業法施行規則」(2026年10月確認)

試験で問われやすいポイント

  • 専任の宅建士の割合は「業務に従事する者」の5分の1以上で、端数は切り上げる
  • 不足したときの補充期限は2週間以内
  • 標識は、契約・申込みを受けない案内所や分譲の現地にも必要
  • 案内所等の届出は、免許権者と所在地の知事の両方に、業務開始の10日前までに行う
  • 帳簿の保存は閉鎖後5年(新築住宅の自ら売主は10年)、従業者名簿は10年
  • 宅建士証では従業者証明書にかえられない

まとめ

  • 契約や申込みを受ける場所には専任の宅建士が必要で、事務所は5分の1以上、案内所等は1人以上
  • 標識はほぼすべての業務場所に必要で、届出は契約・申込みを受ける案内所等だけ
  • 報酬額の掲示、帳簿、従業者名簿は事務所だけの義務
  • 従業者証明書は全従業者に携帯させ、請求があれば提示する

この章の内容は、宅建業法の一問一答で確認できます。

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