宅建業法 第5章
保証協会(弁済業務保証金)
保証協会は、営業保証金にかわる仕組みです。宅建業者は、営業保証金を自分で供託するか、保証協会に加入して分担金を納めるかのどちらかを選びます。この章では、保証協会の業務、分担金の納付、還付と還付充当金、社員の地位を失ったときの手続を、前の章の営業保証金と比べながら整理します。
保証協会とは
保証協会(宅地建物取引業保証協会)は、国土交通大臣が指定する一般社団法人で、宅建業者だけを社員とするものです(宅建業法64条の2第1項)。宅建業者は、保証協会の社員になれば、営業保証金を供託する必要がありません(同法64条の13)。
1つの保証協会の社員である者は、他の保証協会の社員になることはできません(宅建業法64条の4第1項)。保証協会は、新たに社員が加入したときや、社員が地位を失ったときは、直ちにその社員の免許権者に報告します(同条2項)。
保証協会の業務
保証協会の業務には、必ず行う業務と、行うことができる業務があります(宅建業法64条の3)。
| 区分 | 業務 |
|---|---|
| 必ず行う業務 | 苦情の解決、宅建士などに対する研修、弁済業務 |
| 行うことができる業務 | 一般保証業務、手付金等保管事業、全国の業者を社員とする団体が行う研修の費用の助成 |
| 大臣の承認を受けて行う業務 | 宅建業の健全な発達を図るため必要な業務 |
一般保証業務と手付金等保管事業を行うには、あらかじめ国土交通大臣の承認を受ける必要があります(宅建業法64条の17・64条の17の2)。
苦情の解決
保証協会は、取引の相手方などから社員の取引について苦情の申出があったときは、相談に応じ、助言をし、事情を調査し、社員に苦情の内容を通知して迅速な処理を求めます。必要なら社員に文書や口頭での説明、資料の提出を求めることができ、社員は正当な理由がなければ拒めません。また、申出と解決の結果を社員に周知させなければなりません(宅建業法64条の5)。
弁済業務保証金分担金の納付
加入するとき
保証協会に加入しようとする宅建業者は、加入しようとする日までに、弁済業務保証金分担金を保証協会に納付します(宅建業法64条の9第1項)。額は、主たる事務所につき60万円、その他の事務所につき事務所ごとに30万円の合計額です(同法施行令7条)。本店と支店2か所なら、60万円+30万円×2=120万円です。
分担金を受け取った保証協会は、納付を受けた日から1週間以内に、同じ額の弁済業務保証金を、法務大臣と国土交通大臣が定める供託所に供託します(宅建業法64条の7第1項・2項)。供託したときは、保証協会が、社員の免許権者に供託した旨を届け出ます(同条3項)。
宅建業者が納付する分担金は金銭で納めます。分担金について、有価証券で納付できるとする規定はありません。これに対して、保証協会が供託する弁済業務保証金は、営業保証金と同じく有価証券で供託することもできます(宅建業法64条の7第3項)。
事務所を新設したとき
社員が新たに事務所を設置したときは、その日から2週間以内に、1か所につき30万円の分担金を保証協会に納付しなければなりません。期間内に納付しないときは、社員の地位を失います(宅建業法64条の9第2項・3項)。
還付
還付を受けられる者と限度額
保証協会の社員と宅建業に関し取引をした者は、その取引によって生じた債権について、保証協会が供託した弁済業務保証金から弁済を受ける権利があります。社員になる前に取引をした者も含まれますが、宅建業者は除かれます(宅建業法64条の8第1項)。
還付の限度額は、その社員が社員でなかったとしたら供託すべき営業保証金の額に相当する額の範囲内です。本店と支店2か所の業者なら、分担金は120万円ですが、還付の限度額は営業保証金に相当する2,000万円です。
認証
還付を受けようとする者は、弁済を受けられる額について、保証協会の認証を受けなければなりません(宅建業法64条の8第2項)。認証を受けた後、供託所に還付を請求します。
保証協会は、社員が社員となる前の取引について弁済が行われると弁済業務の運営に支障が生じるおそれがあると認めるときは、その社員に担保の提供を求めることができます(宅建業法64条の4第3項)。
還付後の手続
- 還付があったら、保証協会は、国土交通大臣から通知書の送付を受けた日から2週間以内に、還付された額と同額の弁済業務保証金を供託する(宅建業法64条の8第3項、宅地建物取引業保証協会弁済業務保証金規則1条)
- 保証協会は、還付に関係した社員(または社員であった者)に、還付額に相当する還付充当金を納付するよう通知する(宅建業法64条の10第1項)
- 通知を受けた社員は、通知を受けた日から2週間以内に還付充当金を保証協会に納付する(同条2項)
- 期間内に納付しないときは、社員の地位を失う(同条3項)
営業保証金では業者自身が供託所に不足額を供託しましたが、保証協会では、まず保証協会が供託し、その後に社員が保証協会へ還付充当金を納めます。
弁済業務保証金準備金と特別弁済業務保証金分担金
保証協会は、還付充当金が納付されない場合に備えて、弁済業務保証金準備金を積み立てます。準備金でも足りないときは、全社員に特別弁済業務保証金分担金を納付するよう通知し、通知を受けた社員は1か月以内に納付しなければなりません。納付しないと社員の地位を失います(宅建業法64条の12)。
社員の地位を失ったとき
社員の地位を失った宅建業者は、営業を続けるなら、地位を失った日から1週間以内に営業保証金を供託しなければなりません(宅建業法64条の15)。供託後は、免許権者への届出も必要です。
保証協会は、社員が地位を失ったときは、還付を受ける権利を持つ者に対し、6か月を下らない一定期間内に認証の申出をするよう公告しなければなりません。分担金に相当する弁済業務保証金を取り戻し、分担金を返還するのは、この期間が経過した後です(宅建業法64条の11)。
一方、社員が一部の事務所を廃止した場合は、公告をせずに超過額を取り戻し、分担金を返還できます。
営業保証金との比較
| 項目 | 営業保証金 | 保証協会 |
|---|---|---|
| 業者が負担する額 | 本店1,000万円・支店500万円 | 本店60万円・支店30万円 |
| 納める先 | 本店最寄りの供託所 | 保証協会(協会が法務大臣・国土交通大臣の定める供託所に供託) |
| 有価証券 | 使える | 分担金は金銭。協会の供託には使える |
| 事務所新設 | 供託・届出後に新事務所で開始 | 新設から2週間以内に分担金を納付 |
| 還付の手続 | 供託所に直接請求 | 保証協会の認証を受けて請求 |
| 還付後の補充 | 通知を受けた日から2週間以内に不足額を供託 | 通知を受けた日から2週間以内に還付充当金を協会に納付 |
| 取戻しの公告 | 原則6か月以上必要 | 地位喪失時は協会が6か月以上の公告。一部事務所廃止は不要 |
数字・期間のまとめ
| 項目 | 数字・期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 分担金の額 | 主たる事務所60万円、その他の事務所1か所につき30万円 | 宅建業法施行令7条 |
| 加入時の分担金納付 | 加入しようとする日まで | 宅建業法64条の9第1項 |
| 協会による弁済業務保証金の供託 | 分担金の納付から1週間以内 | 宅建業法64条の7第1項 |
| 事務所新設時の分担金 | 新設から2週間以内 | 宅建業法64条の9第2項 |
| 還付後の協会による供託 | 通知書の送付を受けた日から2週間以内 | 宅建業法64条の8第3項 |
| 還付充当金の納付 | 通知を受けた日から2週間以内 | 宅建業法64条の10第2項 |
| 特別弁済業務保証金分担金 | 通知を受けた日から1か月以内 | 宅建業法64条の12第4項 |
| 地位を失った後の営業保証金の供託 | 地位を失った日から1週間以内 | 宅建業法64条の15 |
| 地位喪失時の公告期間 | 6か月以上 | 宅建業法64条の11第4項 |
試験で問われやすいポイント
- 還付の限度額は、納付した分担金の額ではなく、営業保証金に相当する額
- 社員になる前の取引の相手方も還付を受けられる。宅建業者は受けられない
- 還付を受けるには、保証協会の認証が必要
- 事務所新設の分担金は「新設から2週間以内」、地位喪失後の営業保証金は「1週間以内」
- 複数の保証協会の社員を兼ねることはできない
- 一部事務所の廃止による分担金の返還には公告が不要
まとめ
- 保証協会に加入すれば、営業保証金の供託は不要になる
- 分担金は本店60万円・支店30万円で、加入しようとする日までに納める
- 還付は営業保証金相当額まで、協会の認証を受けて行い、社員は2週間以内に還付充当金を納める
- 社員の地位を失ったら、1週間以内に営業保証金を供託する
この章の内容は、宅建業法の一問一答で確認できます。