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宅建業法 第9章

重要事項の説明(35条書面)

重要事項の説明は、宅建業法の中でも出題が多い中心的な論点です。契約をする前に、物件や取引条件の重要な情報を、宅建士から書面で説明させる仕組みです。この章では、説明の方法に関するルールと、売買と貸借で異なる説明事項を整理し、次の章で学ぶ37条書面との違いにもふれます。

重要事項の説明の基本ルール

宅建業者は、取引の相手方などに対して、契約が成立するまでの間に、宅建士に、法定の事項を記載した書面を交付して説明をさせなければなりません(宅建業法35条1項)。5W1H で整理すると、次のとおりです。

項目内容
誰が説明するか宅建士(専任の宅建士である必要はない)
誰に説明するか物件を取得しようとする者、借りようとする者(買主・借主など)
いつまでに契約が成立するまでの間
どうやって書面(35条書面)を交付して説明する
宅建士証説明のときに、請求がなくても提示する
記名35条書面に宅建士が記名する
出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」35条(2026年10月確認)

説明の相手方

説明の相手方は、宅地・建物を取得し、または借りようとしている者です。売買なら買主、貸借なら借主に説明します。売主や貸主には、説明する義務はありません。交換の場合は、双方が物件を取得するので、両方に説明します。

業者が媒介をしていて、売主側と買主側に別々の業者がかかわる場合は、それぞれの業者に説明義務があります。

説明の場所と宅建士

説明をする場所について、宅建業法に制限はありません。事務所でなくても、相手方の自宅や喫茶店で説明してもかまいません。説明をする宅建士は、専任の宅建士でなくてもかまいません。

宅建士は、説明をするときは、相手方から請求がなくても宅建士証を提示しなければなりません(宅建業法35条4項)。違反すると10万円以下の過料の対象です(同法86条)。

宅建士の記名

35条書面には、宅建士が記名しなければなりません(宅建業法35条5項)。2022年5月の改正で、宅建士の押印は不要になりました。

相手方が宅建業者の場合

相手方が宅建業者である場合は、35条書面を交付すれば足り、宅建士による説明は不要です(宅建業法35条6項)。ただし、書面の交付は省略できず、その書面には宅建士が記名しなければなりません(同条7項)。

プロである業者には説明までは必要ないが、記録として書面は残す、という考え方です。37条書面とあわせて、よく問われます。

電磁的方法による提供とIT重説

35条書面の電子化

2022年5月の改正により、宅建業者は、相手方の承諾を得れば、35条書面の交付にかえて、宅建士に、記載事項を電磁的方法で提供させることができるようになりました(宅建業法35条8項)。相手方が宅建業者の場合も同様です(同条9項)。

  • 承諾は、あらかじめ電磁的方法の種類と内容を示したうえで、書面や電子的な方法で得る(同法施行令3条の3第1項)
  • 承諾後に相手方から電磁的方法による提供を受けない旨の申出があったときは、電磁的方法で提供できない(同条2項)
  • 相手方が出力して書面を作成できること、改変が行われていないか確認できる措置を講じていること、記名にかわり書面の交付に係る宅建士が明示されることなどが必要(同法施行規則16条の4の8)

ITを活用した説明

説明そのものについては、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」で、テレビ会議などのITを活用した重要事項の説明(いわゆるIT重説)を、一定の条件を満たす場合に対面の説明と同様に扱うとされています。くわしくはIT重説の解説を参照してください。

主な説明事項

35条1項に列挙された事項と、施行規則で追加された事項があります。契約が売買・交換か、貸借かで、説明事項の一部が変わります。

すべての取引で共通する主な事項

  • 登記された権利の種類・内容と、登記名義人または表題部に記録された所有者の氏名(抵当権など)
  • 都市計画法・建築基準法その他の法令に基づく制限の概要(貸借の場合は、対象となる制限が限られる)
  • 私道に関する負担(建物の貸借の場合は不要)
  • 飲用水・電気・ガスの供給施設、排水施設の整備状況(未整備なら、整備の見通しと特別の負担)
  • 工事完了前の物件の場合は、完了時の形状・構造など(宅地は接する道路の構造・幅員、建物は主要構造部・内装・外装の構造や仕上げ、設備の設置・構造)
  • 代金・交換差金・借賃以外に授受される金銭の額と授受の目的(手付金、敷金、礼金など)
  • 契約の解除に関する事項
  • 損害賠償額の予定または違約金に関する事項
  • 支払金・預り金を受領する場合の保全措置を講ずるかどうかと、その概要(50万円未満のものなどを除く)
  • 造成宅地防災区域内、土砂災害警戒区域内、津波災害警戒区域内にあるときはその旨
  • 市町村長が提供する水害ハザードマップに物件の位置が表示されているときは、その図面における所在地

主に売買・交換で説明する事項

  • 手付金等を受領する場合の保全措置の概要(宅建業者が自ら売主の場合)
  • 代金・交換差金に関する金銭の貸借のあっせんの内容と、あっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置
  • 契約不適合責任の履行に関し、保証保険契約の締結などの措置を講ずるかどうかと、その概要
  • 既存住宅の場合、設計図書・点検記録などの建物の建築・維持保全の状況に関する書類の保存状況
  • 新築住宅で住宅性能評価を受けているときは、その旨

建物に関する事項

  • 既存の建物の場合、建物状況調査(実施後1年以内、鉄筋コンクリート造などの共同住宅等は2年以内のもの)を実施しているかどうかと、その結果の概要(売買・貸借とも)
  • 石綿の使用の有無の調査結果が記録されているときは、その内容(売買・貸借とも)
  • 1981年(昭和56年)6月1日より前に新築の工事に着手した建物で、一定の者が行う耐震診断を受けたものであるときは、その内容(売買・貸借とも)

貸借で説明する主な事項

  • 台所・浴室・便所などの設備の整備状況(建物の貸借)
  • 契約期間と契約の更新に関する事項
  • 定期借地権、定期建物賃貸借、終身建物賃貸借にしようとするときは、その旨
  • 宅地・建物の用途その他の利用の制限に関する事項
  • 敷金など、契約終了時に精算する金銭の精算に関する事項
  • 管理が委託されているときは、委託先の氏名・住所(区分所有建物以外。区分所有建物は次の項目で扱う)
  • 宅地の貸借で、契約終了時の建物の取壊しに関する事項を定めようとするときは、その内容

(根拠:宅建業法35条1項各号、同法施行規則16条〜16条の4の3)

区分所有建物(マンション)の説明事項

区分所有建物では、一棟の建物や敷地の管理に関する事項も説明します(宅建業法35条1項6号、同法施行規則16条の2)。

説明事項売買・交換貸借
敷地に関する権利の種類・内容必要不要
共用部分に関する規約の定め(案を含む)必要不要
専有部分の用途その他の利用制限に関する規約の定め必要必要
専用使用権に関する規約の定め(案を含む)必要不要
費用を特定の者にだけ減免する旨の規約の定め必要不要
修繕積立金の規約の定めと、すでに積み立てられている額必要不要
通常の管理費用の額必要不要
管理の委託先の氏名・住所必要必要
管理者等が、管理組合から委託を受けて管理事務を行うマンション管理業者であるときはその旨(2026年4月から)必要不要
維持修繕の実施状況が記録されているときはその内容必要不要
出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」16条の2(2026年10月確認)

貸借で必要なのは、専有部分の用途制限と、管理の委託先の2つだけです。

35条書面に記載しなくてよい事項

次の事項は、37条書面には記載しますが、35条書面の説明事項ではありません。

  • 代金・借賃の額、その支払時期・方法
  • 宅地・建物の引渡しの時期
  • 移転登記の申請の時期

代金の額そのものは重要事項の説明の対象ではない、という点がひっかけになりやすいので注意しましょう。一方、代金以外に授受される金銭(手付金など)の額と目的は説明事項です。

供託所等に関する説明

宅建業者は、相手方(宅建業者を除く)に対して、契約が成立するまでの間に、営業保証金を供託した供託所とその所在地、または保証協会の社員である旨・保証協会の名称・住所・事務所の所在地と弁済業務保証金を供託した供託所とその所在地を、説明するようにしなければなりません(宅建業法35条の2)。この説明は、宅建士でなくてもよく、書面の交付も義務ではありません。

数字・期間のまとめ

項目数字・期間根拠
説明の時期契約が成立するまでの間宅建業法35条1項
建物状況調査の対象期間実施後1年以内(鉄筋コンクリート造などの共同住宅等は2年以内)同法施行規則16条の2の2
保全措置の説明が不要な支払金・預り金50万円未満のものなど同法施行規則16条の3
耐震診断の説明の対象1981年6月1日より前に新築工事に着手した建物同法施行規則16条の4の3第5号
宅建士証の提示義務違反10万円以下の過料宅建業法86条
出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」「宅地建物取引業法施行規則」(2026年10月確認)

試験で問われやすいポイント

  • 説明の相手方は買主・借主など取得する側で、売主・貸主には不要
  • 説明は宅建士なら専任でなくてもよく、場所の制限もない
  • 相手方が宅建業者なら説明は不要だが、宅建士が記名した書面の交付は必要
  • 代金の額、引渡しの時期、移転登記の時期は35条書面の説明事項ではない
  • 区分所有建物の貸借で説明するのは、専有部分の用途制限と管理の委託先の2つ
  • 水害ハザードマップ上の所在地は、売買・貸借どちらでも説明する

まとめ

  • 重要事項の説明は、契約成立前に、宅建士が宅建士証を提示し、記名した書面を交付して行う
  • 相手方が業者なら書面の交付だけでよく、承諾があれば電磁的方法でも提供できる
  • 説明事項は売買と貸借で異なり、私道負担や管理費などは売買だけ、契約期間や敷金精算は貸借だけ
  • 供託所等の説明は、業者以外の相手方に契約成立前に行う

実務の流れは重要事項説明の実務ガイドでも解説しています。

この章の内容は、宅建業法の一問一答で確認できます。

宅建業法の目次