宅建業法 第13章
監督処分・罰則
宅建業法に違反した宅建業者や宅建士には、行政による監督処分と、刑事上の罰則が科されることがあります。この章では、誰が・どの処分をできるのか、処分の前後の手続(聴聞・公告)、罰則の重さを整理します。業者に対する処分と宅建士に対する処分を、表で比べながら覚えましょう。
宅建業者に対する監督処分
3種類の処分
宅建業者に対する監督処分には、軽い順に、指示処分、業務停止処分、免許取消処分の3つがあります。
| 処分 | 内容 | 処分できる者 |
|---|---|---|
| 指示処分 | 必要な指示をする | 免許権者、業務を行った区域の知事 |
| 業務停止処分 | 1年以内の期間を定めて、業務の全部または一部の停止を命じる | 免許権者、業務を行った区域の知事 |
| 免許取消処分 | 免許を取り消す | 免許権者のみ |
甲県知事の免許を受けた業者が乙県内で違反行為をした場合、乙県知事は、指示処分や業務停止処分はできますが、免許を取り消すことはできません(宅建業法65条3項・4項)。
指示処分
免許権者は、業者が業務に関し取引の関係者に損害を与えたとき(またはそのおそれが大きいとき)、取引の公正を害する行為をしたとき、他の法令に違反して業者として不適当と認められるとき、宅建士が処分を受けた場合で業者に責任があるとき、宅建業法や住宅瑕疵担保履行法の一定の規定に違反したときなどに、必要な指示ができます(宅建業法65条1項)。
業務停止処分
免許権者は、業者が名義貸し、誇大広告、重要事項の説明義務違反、37条書面の交付義務違反、手付金等の保全措置義務違反、報酬の制限違反、重要な事項の不告知などの禁止行為をしたときや、指示処分に従わないときなどに、1年以内の期間を定めて業務の全部または一部の停止を命じることができます(宅建業法65条2項)。
免許取消処分
免許の取消しには、免許権者が必ず取り消さなければならない場合と、取り消すことができる場合があります。
必ず取り消さなければならない主な場合(宅建業法66条1項)は、次のとおりです。
- 破産、拘禁刑以上の刑、一定の罪による罰金刑、暴力団員、心身の故障などの欠格事由にあたることになったとき
- 法人の役員や政令で定める使用人、未成年者の法定代理人が欠格事由にあたることになったとき
- 免許換えをすべきなのに、新しい免許を受けていないことが判明したとき
- 免許を受けてから1年以内に事業を開始しないとき、または引き続いて1年以上事業を休止したとき
- 廃業等の届出がないまま、破産・解散・廃止の事実が判明したとき
- 不正の手段により免許を受けたとき
- 業務停止処分の事由にあたり情状が特に重いとき、または業務停止処分に違反したとき
取り消すことができる場合は、次のとおりです。
- 免許に付された条件に違反したとき(宅建業法66条2項)
- 営業保証金を供託した旨の届出をせず、催告から1か月を経過したとき(同法25条7項)
- 事務所の所在地や業者の所在(法人は役員の所在)を確知できないため官報などで公告し、公告の日から30日を経過しても申出がないとき(同法67条1項)
宅建士に対する監督処分
3種類の処分
宅建士に対する監督処分は、指示処分、事務禁止処分、登録消除処分の3つです。
| 処分 | 内容 | 処分できる者 |
|---|---|---|
| 指示処分 | 必要な指示をする | 登録をしている知事、行為地の知事 |
| 事務禁止処分 | 1年以内の期間を定めて、宅建士としてすべき事務を禁止する | 登録をしている知事、行為地の知事 |
| 登録消除処分 | 登録を消除する | 登録をしている知事のみ |
国土交通大臣は、宅建士に対する監督処分をする権限を持ちません。宅建士の登録は知事が行うからです。
指示処分・事務禁止処分の事由
知事は、宅建士が次のことをしたときに、指示処分ができます。また、これらにあたるときや、指示処分に従わないときは、1年以内の事務禁止処分ができます(宅建業法68条)。
- 宅建業者に、自分が専任の宅建士として従事している事務所以外の事務所の専任の宅建士である旨の表示をすることを許し、業者がその表示をしたとき
- 他人に自分の名義の使用を許し、その他人が宅建士である旨の表示をしたとき
- 宅建士として行う事務に関し、不正または著しく不当な行為をしたとき
事務禁止処分を受けた宅建士は、速やかに、宅建士証を交付を受けた知事に提出しなければなりません(宅建業法22条の2第7項)。
登録消除処分
登録をしている知事は、宅建士が次のどれかにあたるときは、登録を消除しなければなりません(宅建業法68条の2第1項)。
- 登録の欠格事由(破産、拘禁刑、一定の罪による罰金刑、暴力団員、心身の故障など)にあたることになったとき
- 不正の手段により登録を受けたとき
- 不正の手段により宅建士証の交付を受けたとき
- 指示処分・事務禁止処分の事由にあたり情状が特に重いとき、または事務禁止処分に違反したとき
宅建士証の交付を受けていない登録者が、宅建士としてすべき事務を行い、情状が特に重いときも、登録が消除されます(同条2項3号)。
監督処分の手続
聴聞
監督処分をしようとするときは、原則として聴聞を行わなければなりません。指示処分も含まれます(宅建業法69条1項)。聴聞の期日における審理は、公開で行います(同条2項、同法16条の15第5項)。
ただし、所在不明を理由とする免許取消し(宅建業法67条1項)には、行政手続法の聴聞の規定は適用されません(同条2項)。相手の所在がわからないので、聴聞ができないためです。
公告
国土交通大臣または知事は、業務停止処分や免許取消処分をしたときは、その旨を公告しなければなりません(宅建業法70条1項)。指示処分については公告は不要です。また、宅建士に対する監督処分も公告の対象ではありません。
処分の通知
業務を行った区域の知事が、他の免許権者の免許を受けた業者に指示処分や業務停止処分をしたときは、遅滞なく、大臣免許の業者なら国土交通大臣に報告し、他の知事の免許の業者ならその知事に通知します(宅建業法70条3項)。宅建士の場合も、行為地の知事が処分をしたときは、登録をしている知事に通知します(同条5項)。
指導・報告・検査
国土交通大臣はすべての宅建業者に対して、知事は区域内で宅建業を営む業者に対して、必要な指導・助言・勧告をすることができます(宅建業法71条)。また、業務について報告を求めたり、事務所に立ち入って帳簿などを検査させたりすることができます(同法72条1項)。宅建士に対しても、事務について報告を求めることができます(同条3項)。
国土交通大臣は、大臣免許の業者が個人の消費者と契約する場合の一定の違反について処分をしようとするときは、あらかじめ内閣総理大臣に協議しなければなりません(宅建業法71条の2)。
罰則
宅建業法違反には、監督処分とは別に、刑事罰や過料が科されることがあります。主なものは次のとおりです。2025年6月1日から、懲役は「拘禁刑」に改められています。
| 罰則 | 主な違反行為 | 根拠 |
|---|---|---|
| 3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、または併科 | 不正の手段による免許取得、無免許営業、名義貸しで他人に営業させること、業務停止処分に違反して営業すること | 宅建業法79条 |
| 2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、または併科 | 重要な事項の故意の不告知・不実告知 | 宅建業法79条の2 |
| 1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、または併科 | 不当に高額の報酬の要求 | 宅建業法80条 |
| 6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、または併科 | 営業保証金の供託の届出前の事業開始、誇大広告等、不当な履行遅延、手付の信用供与による誘引 | 宅建業法81条 |
| 100万円以下の罰金 | 免許申請書の虚偽記載、無免許での表示・広告、名義貸しによる表示・広告、専任の宅建士の不足を2週間以内に解消しないこと、報酬の上限超過 | 宅建業法82条 |
| 50万円以下の罰金 | 変更の届出・案内所等の届出をしないこと、37条書面の交付義務違反、報酬額の掲示義務違反、従業者証明書・標識・帳簿・従業者名簿の義務違反、秘密を守る義務の違反、報告・検査の拒否など | 宅建業法83条 |
| 10万円以下の過料 | 宅建士証の返納・提出義務違反、重要事項の説明時の宅建士証の提示義務違反 | 宅建業法86条 |
法人の代表者や従業者が、法人の業務に関して79条または79条の2の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、法人にも1億円以下の罰金が科されます(宅建業法84条1号)。
重要事項の説明をしなかったこと(35条違反)そのものには罰則の規定がなく、監督処分の対象になります。一方、37条書面の交付義務違反には、50万円以下の罰金の規定があります。
数字・期間のまとめ
| 項目 | 数字・期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 業務停止処分の期間 | 1年以内 | 宅建業法65条2項・4項 |
| 事務禁止処分の期間 | 1年以内 | 宅建業法68条2項・4項 |
| 事業を開始しない・休止したことによる免許取消し | 免許後1年以内に開始しない、または1年以上休止 | 宅建業法66条1項6号 |
| 所在不明による免許取消し | 公告の日から30日経過 | 宅建業法67条1項 |
| 法人に対する罰金(重い違反) | 1億円以下 | 宅建業法84条1号 |
試験で問われやすいポイント
- 免許取消しは免許権者だけ、宅建士の登録消除は登録をしている知事だけができる
- 業務停止と事務禁止の期間は、どちらも1年以内
- 指示処分を含め、監督処分の前には公開による聴聞が必要。所在不明による取消しは例外
- 公告が必要なのは業者の業務停止処分と免許取消処分で、指示処分や宅建士の処分は不要
- 国土交通大臣は宅建士に監督処分をすることはできない
- 35条違反そのものに罰則はないが、37条書面の交付義務違反には罰金がある
まとめ
- 業者には指示・業務停止(1年以内)・免許取消し、宅建士には指示・事務禁止(1年以内)・登録消除の処分がある
- 指示と停止(禁止)は行為地の知事もできるが、取消しと消除は免許権者・登録知事だけ
- 処分の前には聴聞が必要で、業務停止と免許取消しは公告される
- 無免許営業や名義貸しは最も重い罰則の対象で、法人には1億円以下の罰金がある
この章の内容は、宅建業法の一問一答で確認できます。