法令上の制限 第4章
建築基準法(建蔽率・容積率・高さ制限)
この章では、建物の「大きさ」と「高さ」の制限を学びます。建蔽率・容積率は計算問題としても出題されるため、数値を覚えるだけでなく、自分で計算できるようにしておくことが大切です。高さの制限は、どの用途地域に何が適用されるかを表で整理しましょう。いずれも集団規定なので、都市計画区域・準都市計画区域内の話です。
建蔽率
建蔽率は、建築物の建築面積(同じ敷地に2つ以上の建物があるときはその合計)の、敷地面積に対する割合です(建築基準法53条1項)。敷地に空地を残し、日当たりや通風、延焼防止を確保するための制限です。
| 用途地域 | 建蔽率(都市計画で定める) |
|---|---|
| 第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、田園住居地域、工業専用地域 | 10分の3、4、5、6のいずれか |
| 第一種・第二種住居地域、準住居地域、準工業地域 | 10分の5、6、8のいずれか |
| 近隣商業地域 | 10分の6、8のいずれか |
| 商業地域 | 10分の8 |
| 工業地域 | 10分の5、6のいずれか |
| 用途地域の指定のない区域 | 10分の3、4、5、6、7のうち特定行政庁が定めるもの |
建蔽率の緩和
次のいずれかに当たると、建蔽率の上限に10分の1が加算されます。両方に当たれば10分の2が加算されます(建築基準法53条3項)。
- 防火地域(建蔽率10分の8の地域を除く)内にある耐火建築物等、または準防火地域内にある耐火建築物等・準耐火建築物等(同項1号)
- 街区の角にある敷地またはこれに準ずる敷地で、特定行政庁が指定するものの内にある建築物(いわゆる角地。同項2号)
耐火建築物等とは、耐火建築物と、それと同等以上の延焼防止性能を持つ建築物をいいます(同項1号イ)。準耐火建築物等も同様です(同号ロ)。
建蔽率の制限がない建築物
次の建築物には建蔽率の制限が適用されません(建築基準法53条6項)。
- 建蔽率10分の8とされている地域で、防火地域内にある耐火建築物等
- 巡査派出所、公衆便所、公共用歩廊など
- 公園・広場・道路・川などの内にある建築物で、特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可したもの
敷地が防火地域の内外にわたる場合でも、敷地内の建築物がすべて耐火建築物等であれば、敷地全体が防火地域内にあるとみなして、緩和や適用除外を判断します(同条7項)。敷地が準防火地域と、防火地域・準防火地域以外の区域にわたる場合も、建築物がすべて耐火建築物等または準耐火建築物等であれば、敷地全体が準防火地域内にあるとみなされます(同条8項)。
容積率
容積率は、建築物の延べ面積の、敷地面積に対する割合です(建築基準法52条1項)。建物の総ボリュームを抑え、道路や下水道などの公共施設の容量とのバランスをとるための制限です。
| 用途地域 | 容積率(都市計画で定める) |
|---|---|
| 第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域 | 10分の5、6、8、10、15、20のいずれか |
| 第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域 | 10分の10、15、20、30、40、50のいずれか |
| 商業地域 | 10分の20から10分の130まで(10分の10刻み)のいずれか |
| 工業地域、工業専用地域 | 10分の10、15、20、30、40のいずれか |
| 用途地域の指定のない区域 | 10分の5、8、10、20、30、40のうち特定行政庁が定めるもの |
前面道路の幅員による制限
前面道路の幅員が12メートル未満の場合は、「前面道路の幅員(メートル)×法定乗数」で求めた数値と、都市計画で定めた容積率のうち、小さいほうが上限になります(建築基準法52条2項)。前面道路が2つ以上あるときは、幅員が最大のものを使います。
- 第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域:10分の4
- 第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域:10分の4(特定行政庁が指定する区域では10分の6)
- その他の地域(商業系・工業系、用途地域の指定のない区域):10分の6(特定行政庁が指定する区域では10分の4または10分の8)
なお、幅員15メートル以上の道路(特定道路)に接続する幅員6メートル以上12メートル未満の前面道路で、特定道路から70メートル以内の部分に敷地が接している場合は、前面道路の幅員に一定の数値を加えて計算できる緩和があります(同条9項)。
計算例
Aが、第一種住居地域内にある200平方メートルの敷地に建物を建てるとします。都市計画で定められた建蔽率は10分の6、容積率は10分の30、敷地は幅員6メートルの道路だけに接していて、特定行政庁が指定する角地です。防火地域・準防火地域ではありません。
- 建蔽率:角地なので10分の6に10分の1を加えて10分の7。建築面積の上限は200×7/10=140平方メートル
- 容積率:前面道路による上限は6×4/10=10分の24。都市計画の10分の30より小さいので、10分の24が適用されます。延べ面積の上限は200×24/10=480平方メートル
延べ面積に算入しない部分と敷地がまたがる場合
- 住宅・老人ホーム等の地階で、天井が地盤面から1メートル以下にあるものは、住宅・老人ホーム等の部分の床面積の合計の3分の1を限度に、延べ面積に算入しません(建築基準法52条3項)
- エレベーターの昇降路の部分、共同住宅・老人ホーム等の共用の廊下・階段の部分は、延べ面積に算入しません(同条6項)
敷地が容積率の異なる地域にまたがる場合は、それぞれの地域の容積率の限度に、その地域にある敷地部分の面積の割合を掛けて合計した数値が上限になります(同条7項)。建蔽率も同じ方法(加重平均)で計算します(同法53条2項)。用途制限の「過半の地域で判断する」ルールとは異なるので、混同しないようにしましょう。
敷地面積と外壁の後退距離
用途地域に関する都市計画で、建築物の敷地面積の最低限度を定めることができます。その数値は200平方メートルを超えてはなりません(建築基準法53条の2第1項・2項)。敷地の細分化(ミニ開発)を防ぐためのルールで、すべての用途地域で定めることができます。
第一種・第二種低層住居専用地域と田園住居地域では、都市計画で外壁の後退距離(外壁から敷地境界線までの距離)の限度を定めることができ、その限度は1.5メートルまたは1メートルです(同法54条)。
高さの制限
低層住居専用地域・田園住居地域の絶対高さ
第一種・第二種低層住居専用地域と田園住居地域では、建築物の高さは10メートルまたは12メートルのうち、都市計画で定めた限度を超えてはなりません(建築基準法55条1項)。敷地の周囲に広い公園などがあり、特定行政庁が許可した建築物や、学校など用途上やむを得ないと許可した建築物には適用されません(同条4項)。
斜線制限
斜線制限は、道路や隣地、北側の日照・採光・通風を確保するため、敷地境界などから一定の勾配の斜線の内側に建物を収めるルールです(建築基準法56条)。
| 種類 | 適用される区域 |
|---|---|
| 道路斜線制限 | すべての用途地域と、用途地域の指定のない区域 |
| 隣地斜線制限 | 第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域以外(これらの地域は絶対高さ制限があるため) |
| 北側斜線制限 | 第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種・第二種中高層住居専用地域(中高層住居専用地域で日影規制の対象区域となっているものを除く) |
日影規制
日影規制は、中高層の建築物が周囲に落とす日影の時間を制限するものです。地方公共団体の条例で指定する区域(対象区域)内の、次の建築物が対象になります(建築基準法56条の2第1項、別表第四)。商業地域・工業地域・工業専用地域は、対象区域に指定できる地域に含まれていません。
- 第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域:軒の高さが7メートルを超える建築物、または地階を除く階数が3以上の建築物
- 第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域:高さが10メートルを超える建築物
- 用途地域の指定のない区域:上の2つのうち、地方公共団体が条例で指定するもの
対象区域の外にある建築物でも、高さが10メートルを超え、冬至日に対象区域内の土地に日影を生じさせるものは、対象区域内にあるものとみなして規制が適用されます(同条4項)。同じ敷地内に2つ以上の建築物があるときは、1つの建築物とみなします(同条2項)。
高度地区
高度地区内では、建築物の高さは、高度地区に関する都市計画で定められた内容に適合しなければなりません(建築基準法58条1項)。高度地区は用途地域内に定める地区で、高さの最高限度または最低限度を定めます(都市計画法9条18項)。
数字・期間のまとめ
| 項目 | 数字 | 条文 |
|---|---|---|
| 建蔽率の緩和 | 防火関係または角地で10分の1、両方で10分の2を加算 | 建築基準法53条3項 |
| 建蔽率の制限がなくなる場合 | 建蔽率10分の8の地域で防火地域内の耐火建築物等 | 建築基準法53条6項1号 |
| 前面道路による容積率の制限 | 幅員12メートル未満のとき、幅員×10分の4(住居系)または10分の6(その他) | 建築基準法52条2項 |
| 特定道路による緩和 | 幅員15メートル以上の道路から70メートル以内 | 建築基準法52条9項 |
| 地階の住宅部分の不算入 | 住宅等の床面積の3分の1が限度 | 建築基準法52条3項 |
| 敷地面積の最低限度 | 200平方メートル以下で定める | 建築基準法53条の2第2項 |
| 外壁の後退距離 | 1.5メートルまたは1メートル | 建築基準法54条2項 |
| 絶対高さ | 10メートルまたは12メートル | 建築基準法55条1項 |
| 日影規制の対象(低層住居専用・田園住居) | 軒高7メートル超または地上3階以上 | 建築基準法別表第四 |
| 日影規制の対象(その他) | 高さ10メートル超 | 建築基準法別表第四 |
試験で問われやすいポイント
- 容積率は「都市計画の数値」と「前面道路の幅員×乗数」の小さいほう。前面道路が複数あれば最も広い道路で計算します。
- 敷地が地域にまたがるとき、建蔽率・容積率は面積の加重平均、用途制限は過半の地域。ルールが異なります。
- 防火地域の加算は「建蔽率10分の8の地域を除く」。10分の8の地域で防火地域内の耐火建築物等は、加算ではなく制限そのものがなくなります。
- 隣地斜線制限は低層住居専用地域・田園住居地域には適用されず、北側斜線制限は商業系・工業系には適用されません。
- 日影規制の対象区域は条例で指定します。商業地域・工業地域・工業専用地域は対象区域にできません。
まとめ
- 建蔽率は建築面積、容積率は延べ面積の、敷地面積に対する割合です。
- 建蔽率は角地・防火関係で緩和され、容積率は前面道路の幅員で制限されます。
- 低層住居専用地域・田園住居地域には、絶対高さ(10メートルまたは12メートル)と外壁の後退距離の制限があります。
- 斜線制限と日影規制は、適用される用途地域を表で区別して覚えましょう。
防火地域の規制や建築確認は、次の章建築基準法(防火・建築確認・単体規定)で学びます。
この章の内容は、法令上の制限の一問一答で確認できます。