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法令上の制限 第7章

農地法

この章では農地法を学びます。農地法は、食料の生産基盤である農地を守るため、農地の売買や転用を許可制にしています。試験では3条・4条・5条の違いが繰り返し問われます。3つの条文を表で比べながら、それぞれの例外を押さえていきましょう。

農地と採草放牧地

農地法の「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいいます。「採草放牧地」とは、農地以外の土地で、主として耕作や養畜のための採草、または家畜の放牧の目的に供される土地をいいます(農地法2条1項)。

農地かどうかは、登記簿上の地目ではなく、現に耕作の目的に供されているかという土地の現況で判断されます。たとえば、登記簿上の地目が「山林」でも、実際に畑として耕作されていれば農地です。

3条・4条・5条の比較

項目3条(権利移動)4条(転用)5条(転用目的の権利移動)
対象となる行為農地・採草放牧地を、農地・採草放牧地のまま売る・貸すなど自分の農地を農地以外にする農地を農地以外に、または採草放牧地を採草放牧地以外にするために、売る・貸すなど
例農家Aが農家Bに畑を売る農家Aが自分の畑に住宅を建てる農家Aの畑を、住宅を建てるためにCが買う
許可権者農業委員会都道府県知事等都道府県知事等
申請者当事者(売主と買主など)転用する人当事者(売主と買主など)
市街化区域内の特例なしあらかじめ農業委員会に届け出れば許可不要あらかじめ農業委員会に届け出れば許可不要
許可を受けなかった場合契約の効力が生じない工事の停止・原状回復などの命令の対象契約の効力が生じない。原状回復などの命令の対象
出典:e-Gov法令検索「農地法」3条・4条・5条・51条(2026年10月確認)。都道府県知事等とは、都道府県知事と、農林水産大臣が指定する市町村(指定市町村)の区域では市町村長をいいます。

3条(権利移動)

農地または採草放牧地について、所有権を移転したり、地上権・永小作権・質権・使用貸借による権利・賃借権などを設定・移転したりする場合は、当事者が農業委員会の許可を受けなければなりません(農地法3条1項)。売買だけでなく、賃貸借や使用貸借で貸す場合も対象です。一方、抵当権は使用・収益を目的とする権利ではないので、抵当権の設定には許可は不要です。

許可を受けないでした行為は、効力を生じません(同条6項)。3条には市街化区域の特例がないため、市街化区域内の農地を耕作目的で売買する場合も、農業委員会の許可が必要です。

3条の許可が不要な場合

  • 権利を取得する者が国または都道府県である場合(同条1項5号)
  • 遺産の分割、離婚による財産分与の裁判・調停などによる場合(同項12号)
  • 民事調停法による農事調停による場合、土地収用法などによる収用・使用の場合(同項10号・11号)

相続によって農地を取得した場合も、3条の許可は不要です。ただし、許可を受けずに相続や遺産分割などで農地の権利を取得した人は、遅滞なく、その農地がある市町村の農業委員会に届け出なければなりません(同法3条の3)。

なお、かつて3条の許可の要件にあった「下限面積」(一定以上の面積を経営すること)の要件は、2023年4月施行の改正で廃止され、現在の条文にはありません。農地のすべてを効率的に利用することなどの要件は残っています(同条2項)。

4条(転用)

農地を農地以外のものにする人は、都道府県知事等の許可を受けなければなりません(農地法4条1項)。転用とは、農地を住宅地、駐車場、資材置場などにすることです。一時的に資材置場にする場合も転用に当たります。4条の対象は農地だけで、採草放牧地を自分で転用する場合は4条の許可は不要です。

4条の許可が不要な場合

  • 市街化区域内の農地を、あらかじめ農業委員会に届け出て転用する場合(同項7号)
  • 国または都道府県等が、道路・農業用用排水施設など地域振興上または農業振興上の必要性が高い一定の施設のために転用する場合(同項2号)
  • 土地収用法などで収用・使用した農地を、その目的に供する場合(同項6号)
  • 耕作者が、2アール未満の自分の農地を、自分の農作物の育成や養畜のための農業用施設(農業用倉庫など)にする場合(同項8号、同法施行規則29条1号)

国や都道府県等が上の施設以外のために転用する場合は、知事等との協議が成立すれば許可があったものとみなされます(同法4条8項)。許可の申請書は、農業委員会を経由して知事等に提出します(同条2項)。

5条(転用目的の権利移動)

農地を農地以外のものにするため、または採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く)にするため、これらの土地について所有権の移転や賃借権の設定などをする場合は、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければなりません(農地法5条1項)。

たとえば、宅建業者Dが分譲住宅を建てるために農家Eの畑を買う場合は、5条の許可が必要です。この場合、3条と4条の許可を別々に受ける必要はありません。市街化区域内であれば、あらかじめ農業委員会に届け出れば許可は不要です(同項6号)。

採草放牧地を農地にするために取得する場合は、「転用目的」ではなく農地・採草放牧地としての権利移動なので、5条ではなく3条の許可が必要です。

5条の許可を受けないでした行為は、効力を生じません(同条3項による3条6項の準用)。国または都道府県等が、4条1項2号の施設のために権利を取得する場合は許可不要で、それ以外の場合は知事等との協議の成立で許可があったものとみなされます(同法5条1項1号・4項)。

違反に対する措置と罰則

4条・5条に違反して転用した人や、その一般承継人、違反の工事を請け負った人などに対し、都道府県知事等は、許可の取消し、工事の停止、原状回復などを命じることができます(農地法51条1項)。

3条・4条・5条の許可を受けずに行為をした人などは、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象です(同法64条1号)。法人の従業者などが4条・5条の違反や原状回復命令の違反をした場合、法人には1億円以下の罰金が科されます(同法67条1号)。

農地の賃貸借

  • 対抗力:農地・採草放牧地の賃貸借は、登記がなくても、引渡しがあれば、その後に物権を取得した第三者に対抗できます(農地法16条)
  • 解約などの制限:賃貸借の解除、解約の申入れ、合意解約、更新をしない旨の通知は、原則として都道府県知事の許可が必要です(同法18条1項)。許可を受けないでした行為は効力を生じません(同条5項)
  • 許可が不要な場合の例:引き渡す期限前6か月以内に成立した合意で、その旨が書面で明らかな合意解約など(同条1項2号)
  • 契約の文書化:当事者は、存続期間、借賃の額・支払条件などを書面で明らかにしなければなりません(同法21条)

数字・期間のまとめ

項目数字・期間条文
4条の許可が不要な農業用施設への転用2アール未満農地法施行規則29条1号
罰則(無許可の権利移動・転用)3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金農地法64条
法人の罰金(4条・5条違反など)1億円以下農地法67条1号
許可が不要な合意解約引渡し期限前6か月以内に成立し、書面で明らかなもの農地法18条1項2号
出典:e-Gov法令検索「農地法」「農地法施行規則」(2026年10月確認)

試験で問われやすいポイント

  • 農地かどうかは登記簿の地目ではなく現況で判断します。
  • 市街化区域の届出の特例は4条・5条だけ。3条には特例がなく、市街化区域内でも農業委員会の許可が必要です。
  • 抵当権の設定は許可不要ですが、賃借権・使用貸借による権利の設定は3条の許可が必要です。
  • 相続・遺産分割による取得は許可不要ですが、農業委員会への届出が必要です。
  • 一時的な資材置場への転用も転用に当たり、許可が必要です。
  • 5条の許可を受けた場合は、3条・4条の許可を別に受ける必要はありません。

まとめ

  • 3条は権利移動で農業委員会の許可、4条は転用、5条は転用目的の権利移動で都道府県知事等の許可です。
  • 市街化区域内では、4条・5条は農業委員会への事前の届出で足ります。
  • 3条・5条の無許可の契約は効力を生じず、4条・5条の違反転用には原状回復命令や罰則があります。
  • 農地の賃貸借は引渡しで対抗でき、解約などには原則として知事の許可が必要です。

国土利用計画法の届出との関係は国土利用計画法の章で確認できます。

この章の内容は、法令上の制限の一問一答で確認できます。

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