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法令上の制限 第8章

盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)

この章では、宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)を学びます。この法律は、旧「宅地造成等規制法」を改正したもので、2023年5月26日に施行されました。宅地の造成だけでなく、農地や森林での盛土や、土砂を一時的に積み上げる「土石の堆積」も規制の対象になったのが大きな特徴です。旧法の知識で覚えている人は、区域の名前と規模の数字を改めて確認してください。

法律の目的と用語

盛土規制法は、宅地造成・特定盛土等・土石の堆積に伴う崖崩れや土砂の流出による災害を防止するための法律です。主な用語は次のとおりです(宅地造成及び特定盛土等規制法2条)。

  • 宅地:農地・採草放牧地・森林(農地等)と、道路・公園・河川などの公共施設用地以外の土地
  • 宅地造成:宅地以外の土地を宅地にするために行う、一定規模の盛土その他の土地の形質の変更
  • 特定盛土等:宅地または農地等で行う盛土その他の土地の形質の変更で、隣接・近接する宅地で災害を発生させるおそれが大きい一定規模のもの
  • 土石の堆積:宅地または農地等で行う一定規模の土石の堆積で、一定期間の経過後に除却するもの
  • 工事主:工事の請負契約の注文者、または請負契約によらないで自ら工事をする者

この法律で「都道府県知事」とあるのは、指定都市・中核市の区域内では、その市の長を指します(同法5条1項かっこ書)。

3つの区域

区域指定される場所主な規制条文
宅地造成等工事規制区域宅地造成等に伴い災害が生ずるおそれが大きい市街地・市街地となろうとする区域・集落の区域など一定規模以上の工事は許可制盛土規制法10条・12条
特定盛土等規制区域宅地造成等工事規制区域以外で、特定盛土等や土石の堆積が行われれば住民の生命・身体に危害を生ずるおそれが特に大きい区域一定規模以上の工事は届出制、さらに大規模なものは許可制盛土規制法26条・27条・30条
造成宅地防災区域宅地造成等工事規制区域外にある、災害の危険が大きい一団の造成宅地擁壁の設置などの勧告・改善命令盛土規制法45条
出典:e-Gov法令検索「宅地造成及び特定盛土等規制法」(2026年10月確認)

どの区域も、都道府県知事が、基本方針にもとづき基礎調査の結果を踏まえて指定します。指定しようとするときは関係市町村長の意見を聴き、指定は公示によって効力を生じます(同法10条2項・6項、26条2項・6項、45条3項)。造成宅地防災区域は、宅地造成等工事規制区域内には指定できません(同法45条1項かっこ書)。

宅地造成等工事規制区域内の許可

宅地造成等工事規制区域内で行われる宅地造成等に関する工事については、工事主は、工事に着手する前に、都道府県知事の許可を受けなければなりません(盛土規制法12条1項)。許可が必要になる規模は次のとおりです(同法施行令3条・4条)。

工事の種類許可が必要な規模
盛土高さ1メートルを超える崖を生ずるもの
切土高さ2メートルを超える崖を生ずるもの
盛土と切土を同時に行う高さ2メートルを超える崖を生ずるもの
崖を生じない盛土高さ2メートルを超えるもの
上のいずれにも当たらない盛土・切土面積500平方メートルを超えるもの
土石の堆積高さ2メートルを超えるもの、または面積500平方メートルを超えるもの
出典:e-Gov法令検索「宅地造成及び特定盛土等規制法施行令」3条・4条(2026年10月確認)

たとえば、規制区域内でAが畑に土を入れ、高さ1.5メートルの崖ができる盛土をする場合、農地での盛土でも特定盛土等として許可が必要です。旧法では宅地を造成する工事だけが対象でしたが、現在は土地の用途を問わず規制されます。

許可の手続きと基準

  • 住民への周知:工事主は、許可の申請をするときは、あらかじめ説明会の開催などにより、周辺地域の住民に工事の内容を周知させなければなりません(同法11条)
  • 許可の基準:工事の計画が技術的基準に適合すること、工事主に資力・信用があること、工事施行者に工事を完成する能力があること、工事をする土地について所有権などを有する者の全ての同意を得ていることなど(同法12条2項)
  • 技術的基準:擁壁・排水施設などを政令の基準に従って設置します。一定の擁壁などの工事は、政令で定める資格を持つ者が設計しなければなりません(同法13条)
  • 許可の条件・公表:知事は、災害防止のため必要な条件を付けることができ、許可をしたときは工事主の氏名などを公表します(同法12条3項・4項)
  • 国や都道府県・指定都市・中核市が行う工事は、知事との協議の成立で許可があったものとみなされます(同法15条1項)。区域の指定後に宅地造成・特定盛土等について都市計画法の開発許可を受けた場合も、許可を受けたものとみなされます(同条2項)

許可後の手続き

  • 計画の変更:知事の許可。軽微な変更は遅滞なく届出(同法16条)
  • 完了検査:宅地造成・特定盛土等の工事を完了したときは、知事の検査を申請し、適合すれば検査済証が交付されます。土石の堆積で全ての土石を除却したときは、確認を申請します(同法17条)
  • 中間検査:一定規模以上の宅地造成・特定盛土等で特定工程を含む場合は、その工程の工事を終えたときに検査を申請します(同法18条)
  • 定期の報告:一定規模以上の工事は、工事の実施状況などを定期的に知事に報告します(同法19条)

中間検査と定期報告の対象となる規模は、盛土で高さ2メートルを超える崖、切土で高さ5メートルを超える崖、崖を生じない盛土で高さ5メートル超、面積3,000平方メートル超などです(同法施行令23条・25条1項)。

宅地造成等工事規制区域内の届出

許可が不要な場合でも、次のときは都道府県知事への届出が必要です(盛土規制法21条)。

  • 区域の指定の際に、すでに行われている工事:工事主が、指定があった日から21日以内に届出(同条1項)
  • 高さ2メートルを超える擁壁・崖面崩壊防止施設、地表水等を排除するための排水施設、地滑り抑止ぐいなどの全部または一部を除却する工事:工事に着手する日の14日前までに届出(同条3項、同法施行令26条)
  • 公共施設用地を宅地または農地等に転用した場合:転用した日から14日以内に届出(同法21条4項)

土地の保全と監督

宅地造成等工事規制区域内の土地の所有者・管理者・占有者は、区域の指定前に行われた宅地造成等も含めて、災害が生じないよう、その土地を常時安全な状態に維持するように努めなければなりません(盛土規制法22条1項)。知事は、必要があれば、土地の所有者・管理者・占有者・工事主・工事施行者に対して、擁壁等の設置や改造などを勧告できます(同条2項)。

擁壁などが設置されていない、または極めて不完全で、放置すると災害の発生のおそれが大きい場合は、知事は土地所有者等に対し、擁壁等の設置・改造などの工事を命じることができます(同法23条1項)。土地所有者等以外の者の不完全な工事などが原因であることが明らかで、土地所有者等に異議がないときは、その原因者に工事を命じることもできます(同条2項)。無許可の工事などに対しては、工事の停止や災害防止措置を命じることができます(同法20条2項)。

特定盛土等規制区域の届出と許可

特定盛土等規制区域内で、特定盛土等または土石の堆積に関する工事を行う場合、工事主は、工事に着手する日の30日前までに、工事の計画を都道府県知事に届け出なければなりません(盛土規制法27条1項)。知事は、届出を受理した日から30日以内に限り、計画の変更などを勧告できます(同条3項)。

大規模な崖崩れや土砂の流出を生じさせるおそれが大きい規模のものは、届出ではなく知事の許可が必要です(同法30条1項、同法施行令28条)。

  • 盛土で高さ2メートルを超える崖、切土で高さ5メートルを超える崖、盛土と切土を同時に行って高さ5メートルを超える崖を生ずるもの
  • 崖を生じない盛土で高さ5メートルを超えるもの、盛土・切土の面積が3,000平方メートルを超えるもの
  • 土石の堆積で、高さ5メートル超かつ面積1,500平方メートル超のもの、または面積3,000平方メートル超のもの

許可を受けた工事については、30日前の届出は不要です(同法30条5項)。

数字・期間のまとめ

項目数字・期間条文
規制区域で許可が必要な盛土崖の高さ1メートル超、または盛土の高さ2メートル超施行令3条
規制区域で許可が必要な切土崖の高さ2メートル超施行令3条
規制区域で許可が必要な面積500平方メートル超施行令3条・4条
指定時に工事中の場合の届出指定から21日以内盛土規制法21条1項
擁壁等の除却工事の届出着手の14日前まで盛土規制法21条3項
公共施設用地の転用の届出転用から14日以内盛土規制法21条4項
特定盛土等規制区域の届出着手の30日前まで(勧告は受理から30日以内)盛土規制法27条
特定盛土等規制区域で許可が必要な規模盛土の崖2メートル超、切土の崖5メートル超、面積3,000平方メートル超など施行令23条・28条
罰則(無許可の工事など)3年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(法人は3億円以下の罰金)盛土規制法55条・60条
出典:e-Gov法令検索「宅地造成及び特定盛土等規制法」「同法施行令」(2026年10月確認)

試験で問われやすいポイント

  • 現在の法律名は「宅地造成及び特定盛土等規制法」。農地や森林での盛土、土石の一時的な堆積も対象です。
  • 許可を受けるのは「工事主」で、着手前に受けます。工事施行者(請負人)ではありません。
  • 盛土は崖1メートル超、切土は崖2メートル超。盛土と切土で数字が異なる点がひっかけになります。
  • 届出の期限は、21日以内(指定時の工事中)、14日前まで(擁壁等の除却)、14日以内(公共施設用地の転用)、30日前まで(特定盛土等規制区域)と、それぞれ異なります。
  • 土地の所有者等が土地を安全に保つ義務は「努力義務」です。改善命令は、擁壁が不完全で災害のおそれが大きいときに出されます。

まとめ

  • 盛土規制法は2023年5月施行。宅地造成等工事規制区域・特定盛土等規制区域・造成宅地防災区域の3つの区域があります。
  • 宅地造成等工事規制区域では、一定規模以上の工事に着手前の知事の許可が必要です。
  • 特定盛土等規制区域は原則30日前の届出で、大規模なものは許可が必要です。
  • 許可後は完了検査・中間検査・定期報告があり、区域内の土地所有者等には安全維持の努力義務があります。

数字の比較は法令上の制限の数字まとめでも確認できます。

この章の内容は、法令上の制限の一問一答で確認できます。

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