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税・その他 第8章

不動産の鑑定評価

この章では、不動産鑑定士が不動産の価格を求めるときのルールである「不動産鑑定評価基準」(国土交通省)を学びます。前の章の地価公示と並んでよく出題される分野で、価格の種類や鑑定評価の3手法の定義が問われます。用語の定義を正確に覚えることが得点への近道です。

不動産の価格はどう決まるか

不動産鑑定評価基準によると、不動産の価格は、一般に、その不動産の効用、相対的稀少性、有効需要の3つが結びついて生じる経済価値を、貨幣額で表したものです(不動産鑑定評価基準 総論第1章)。

この3つに影響を与える要因を「価格形成要因」といい、次の3つに分けられます(同総論第3章)。

  • 一般的要因:一般経済社会における不動産のあり方や価格水準に影響を与える要因。自然的要因・社会的要因・経済的要因・行政的要因に大別されます。
  • 地域要因:その不動産が属する地域の特性をつくる要因
  • 個別的要因:その不動産に固有の要因(形状、接道状況など)

価格の諸原則

基準は、不動産の価格がどのように形成されるかについて、いくつかの原則を示しています(同総論第4章)。特に重要なのが最有効使用の原則です。不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(最有効使用)を前提として把握される価格を標準として形成されます。最有効使用は、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法をいい、現実の使用方法が必ずしも最有効使用とは限りません。

このほか、代替性のある財の価格は互いに影響し合うという代替の原則、不動産の構成要素の組合せが均衡していることが必要という均衡の原則、不動産がその環境に適合していることが必要という適合の原則、不動産の一部が全体の収益にどれだけ寄与するかが全体の価格に影響するという寄与の原則などがあります。

種別と類型、地域分析と個別分析

不動産の種別は不動産の用途による分類で、類型は有形的な利用と権利関係の態様による分類です(同総論第2章)。

  • 種別の例:地域の種別は宅地地域・農地地域・林地地域など。土地の種別は宅地・農地・林地・見込地・移行地などです。
  • 類型の例(宅地):更地、建付地、借地権、底地、区分地上権など。更地は建物などの定着物がなく、使用収益を制約する権利も付いていない宅地、建付地は建物などの敷地で建物と敷地の所有者が同じ宅地、底地は借地権が付いている宅地の所有権をいいます。
  • 類型の例(建物とその敷地):自用の建物及びその敷地、貸家及びその敷地、借地権付建物、区分所有建物及びその敷地など

鑑定評価では、まず地域分析で対象不動産がどのような地域にあり、その地域がどんな特性を持つかを分析します。特に重要な地域は、対象不動産が属する用途的地域である近隣地域、近隣地域と似た特性を持つ類似地域、そしてこれらを含む広域の同一需給圏です。次に個別分析で、対象不動産の個別的要因を分析して最有効使用を判定します(同総論第6章)。

求める価格の種類

鑑定評価で求める価格は基本的に正常価格ですが、依頼目的に応じて限定価格・特定価格・特殊価格を求める場合があります(同総論第5章第3節)。

価格の種類意味例
正常価格市場性のある不動産について、現実の社会経済情勢のもとで合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表す適正な価格通常の売買の目安となる価格
限定価格不動産の併合や一部の分割などにより、市場が相対的に限定される場合の、取得部分の市場価値を表す価格借地権者が底地を買う場合、隣地を併合するために買う場合
特定価格法令などによる社会的要請を背景とする評価目的のもとで、正常価格の前提となる条件を満たさない場合の経済価値を表す価格証券化対象不動産の投資採算価値、民事再生法にもとづく早期売却を前提とした価格
特殊価格文化財など一般的に市場性を持たない不動産について、利用現況などを前提とした経済価値を表す価格文化財に指定された建造物、宗教建築物の保存を主眼とする評価
出典:国土交通省「不動産鑑定評価基準」総論第5章(2026年10月時点で公表されているもの)

「市場性があるか」がポイントです。正常・限定・特定価格は市場性のある不動産、特殊価格は市場性のない不動産が対象です。また、価格時点(価格判定の基準日)は、鑑定評価を行った日を基準として、現在・過去・将来のいずれにも設定できます(同総論第5章第2節)。

賃料については、新規の賃貸借で成立する正常賃料・限定賃料と、賃貸借が継続している特定の当事者間で成立する継続賃料があります(同総論第5章第3節)。

鑑定評価の3手法

鑑定評価の基本的な手法は、原価法・取引事例比較法・収益還元法の3つです。このほか、これらの考え方を活用した開発法などがあります(同総論第7章)。

原価法(積算価格)

価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、これに減価修正を行って試算価格を求める手法です。この試算価格を積算価格といいます。対象不動産が建物、または建物とその敷地である場合に有効で、土地だけの場合でも再調達原価を適切に求められるときは適用できます。

再調達原価とは、対象不動産を価格時点で再調達すると想定した場合に必要な適正な原価の総額です。減価の要因には物理的要因・機能的要因・経済的要因があり、減価額は「耐用年数に基づく方法」と「観察減価法」を併用して求めます。

取引事例比較法(比準価格)

多数の取引事例を集めて適切な事例を選び、必要に応じて事情補正と時点修正を行い、地域要因と個別的要因を比較して求めた価格を比較考量し、試算価格を求める手法です。この試算価格を比準価格といいます。

  • 事情補正:売り急ぎや買い進みなど、取引に特殊な事情がある場合に、それを補正すること
  • 時点修正:取引の時点と価格時点が違い、その間に価格水準が変動している場合に、価格時点の価格に修正すること
  • 事例の選び方:原則として近隣地域または同一需給圏内の類似地域にある不動産から選びます。投機的取引と認められる事例など、適正さを欠くものは使えません。

収益還元法(収益価格)

対象不動産が将来生み出すと期待される純収益の現在価値の総和を求めて、試算価格を求める手法です。この試算価格を収益価格といいます。賃貸用不動産や事業用不動産の価格を求める場合に特に有効です。また、文化財に指定された建造物など市場性のない不動産以外には基本的にすべて適用すべきもので、自用の不動産でも賃貸を想定して適用します。

収益価格を求める方法には、一期間の純収益を還元利回りで還元する直接還元法と、連続する複数の期間の純収益と復帰価格(保有期間満了時の価格)を、それぞれ発生時期に応じて現在価値に割り引いて合計するDCF法があります。

手法の適用と鑑定評価額の決定

鑑定評価では、対象不動産に係る市場の特性などを反映した複数の手法を適用すべきとされています。複数の手法の適用が難しい場合でも、その考え方をできるだけ参酌するよう努めます(同総論第8章第7節)。

複数の手法で求めた試算価格は、「試算価格の調整」を経て鑑定評価額に導かれます。調整とは、各試算価格を再吟味し、それぞれが持つ説得力を判断する作業です(同第8節)。単純に平均するものではありません。また、公示区域で土地の正常価格を求めるときは、公示価格を規準としなければなりません(同第9節)。

なお、賃料を求める手法として、新規賃料には積算法・賃貸事例比較法・収益分析法、継続賃料には差額配分法・利回り法・スライド法・賃貸事例比較法などがあります(同総論第7章第2節)。

試験で問われやすいポイント

  • 特殊価格は市場性のない不動産、限定・特定価格は市場性のある不動産が対象です。
  • 借地権者が底地を買う場合や隣地を併合する場合は限定価格です。証券化対象不動産の投資採算価値は特定価格です。
  • 原価法は土地だけの場合でも、再調達原価を適切に求められれば適用できます。
  • 取引事例比較法では、投機的取引と認められる事例は使えません。
  • 収益還元法は自用の不動産にも、賃貸を想定して適用します。
  • 試算価格の調整は単純平均ではなく、各試算価格の説得力を判断する作業です。

まとめ

  • 不動産の価格は効用・相対的稀少性・有効需要の3つから生じ、最有効使用を前提に形成されます。
  • 求める価格は正常価格が基本で、目的に応じて限定価格・特定価格・特殊価格を求めます。
  • 3手法は原価法(積算価格)・取引事例比較法(比準価格)・収益還元法(収益価格)で、複数の手法を適用して調整します。

公示価格との関係は、前の章地価公示法で確認できます。

この章の内容は、税・その他の一問一答で確認できます。

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