法令上の制限 第3章
建築基準法(用途制限・道路)
この章から建築基準法に入ります。まず法律の全体像をつかみ、そのうえで「道路」と「用途制限」を学びます。どちらも毎年のように問われる重要論点です。用途制限は覚える量が多いので、細部より「どの系統の地域で何が建てられないか」という考え方を先に身につけましょう。
建築基準法の全体像
建築基準法のルールは、大きく2つに分かれます。
- 単体規定:個々の建物の安全・衛生のためのルール(構造、採光、換気など)。全国どこでも適用されます
- 集団規定:街づくりのためのルール(道路、用途制限、建蔽率、容積率、高さ制限、防火地域など)。原則として都市計画区域と準都市計画区域の中だけで適用されます(建築基準法41条の2)
この章で扱う道路と用途制限は、どちらも集団規定です。したがって、都市計画区域・準都市計画区域の外では、原則として接道義務や用途制限はかかりません。
また、文化財保護法で国宝・重要文化財などに指定された建築物には、建築基準法は適用されません(同法3条1項1号)。法律の施行や改正の際に、すでに建っていた建物や工事中の建物が新しいルールに合わない場合も、そのまま使い続けることができます(同条2項)。これを「既存不適格建築物」といいます。ただし、その後に増築や大規模な修繕などをするときは、原則として現行のルールに合わせる必要があります(同条3項3号)。
道路の定義
建築基準法の「道路」は、原則として幅員4メートル以上のもので、次のいずれかに当たるものです(建築基準法42条1項)。特定行政庁(建築主事などを置く市町村の長、またはそれ以外の区域では都道府県知事)が、都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域では、6メートル以上が基準になります。地下にあるものは道路に含まれません。
- 道路法による道路(国道・都道府県道・市町村道など)
- 都市計画法、土地区画整理法などによる道路
- 都市計画区域・準都市計画区域の指定などで集団規定が適用されることになった際、すでにあった道
- 道路法・都市計画法などによる事業計画がある道路で、2年以内に事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもの
- 土地を建築物の敷地として利用するため、政令の基準に適合する道を築造する人が、特定行政庁から位置の指定を受けたもの(位置指定道路)
2項道路とセットバック
古い市街地には、幅員4メートル未満の道に沿って家が建ち並んでいる場所がたくさんあります。このような道でも、集団規定が適用されることになった際に現に建築物が立ち並んでいて、特定行政庁が指定したものは、道路とみなされます。これを「2項道路」といいます(建築基準法42条2項)。
2項道路では、原則として道の中心線から水平距離2メートルの線が道路の境界線とみなされます。たとえば幅員3メートルの2項道路に面したAの敷地では、中心線から2メートルの位置まで、つまり敷地側に0.5メートル下がった線が道路境界線になります。この後退部分(セットバック部分)は道路として扱われるため、建物を建てられず、建蔽率・容積率を計算するときの敷地面積にも含めません(建築基準法施行令2条1項1号)。
道の片側が崖地・川・線路敷地などに沿っている場合は、反対側に後退できないため、崖地等の側の境界線から道の側に4メートルの線が道路境界線とみなされます(建築基準法42条2項ただし書)。なお、特定行政庁は、土地の状況によりやむを得ない場合には、中心線からの距離を2メートル未満1.35メートル以上の範囲で別に指定できます(同条3項)。
接道義務と道路内の建築制限
敷地は道路に2メートル以上接する
建築物の敷地は、道路に2メートル以上接しなければなりません(建築基準法43条1項)。火事や災害のときに、避難や消防活動ができるようにするためです。自動車専用道路や、地区計画で建築物の敷地として併せて利用すべき区域とされた区域内の道路に接していても、接道したことにはなりません(同項1号・2号)。
ただし、次の建築物には接道義務が適用されません(同条2項)。
- 幅員4メートル以上の道(道路に当たらないもの)に2メートル以上接する建築物で、利用者が少数であるものとして基準に適合し、特定行政庁が交通上・安全上・防火上・衛生上支障がないと認めるもの
- 敷地の周囲に広い空地がある建築物などで、特定行政庁が支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの
逆に、地方公共団体は、特殊建築物、階数3以上の建築物、延べ面積1,000平方メートル超の建築物などについて、条例で接道の条件を厳しくすることができます(同条3項)。条例で緩和することはできない点に注意しましょう。
道路内には建築できない
建築物や敷地を造成するための擁壁は、道路内に、または道路に突き出して建築・築造してはなりません(建築基準法44条1項)。例外は次のとおりです。
- 地盤面下に設ける建築物(地下街など)。許可は不要です
- 公衆便所、巡査派出所などの公益上必要な建築物で、特定行政庁が通行上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの
- 公共用歩廊(アーケードなど)などで、特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可したもの
私道を変更・廃止することで、その私道に接する敷地が接道義務を満たさなくなる場合、特定行政庁は私道の変更・廃止を禁止または制限できます(同法45条1項)。また、特定行政庁は建築審査会の同意を得て壁面線を指定でき、建築物の壁や高さ2メートルを超える門・塀は壁面線を越えて建築できません(同法46条1項・47条)。
用途地域による用途制限
用途地域ごとに、建てられる建築物の用途が決まっています(建築基準法48条、別表第二)。住居系の地域ほど厳しく、商業系・工業系に行くほど住環境と相いれない用途が認められる、というのが基本的な流れです。ただし、工業専用地域では住宅が建てられないなど、逆方向の制限もあります。
| 建築物 | 建築できる用途地域(特例許可を除く) |
|---|---|
| 神社・寺院・教会、保育所、診療所、公衆浴場(個室付浴場を除く)、巡査派出所 | 13種類すべての用途地域 |
| 住宅・共同住宅・寄宿舎・下宿、老人ホーム、図書館 | 工業専用地域以外 |
| 幼稚園・小学校・中学校・高等学校 | 工業地域・工業専用地域以外 |
| 大学・高等専門学校・専修学校、病院 | 第一種中高層住居専用地域から準工業地域まで(低層住居専用地域・田園住居地域・工業地域・工業専用地域は不可) |
| ホテル・旅館 | 第一種住居地域(3,000平方メートル以下)、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域 |
| ボーリング場・スケート場・水泳場など | 第一種住居地域(3,000平方メートル以下)から工業地域まで |
| マージャン屋・ぱちんこ屋・勝馬投票券発売所など | 第二種住居地域から工業地域まで |
| カラオケボックスなど | 第二種住居地域から工業専用地域まで |
| 劇場・映画館・演芸場・観覧場 | 準住居地域(客席200平方メートル未満)、近隣商業地域、商業地域、準工業地域 |
| キャバレー・料理店など | 商業地域、準工業地域 |
| 個室付浴場など | 商業地域のみ |
| 倉庫業を営む倉庫 | 準住居地域から工業専用地域まで |
店舗・飲食店の制限
店舗・飲食店は、住居系の地域では床面積と階数で細かく制限されます(建築基準法別表第二、同法施行令130条の3)。
- 第一種低層住居専用地域:店舗単独は不可。延べ面積の2分の1以上が住居で、店舗等の部分が50平方メートル以下の兼用住宅なら可
- 第二種低層住居専用地域:一定の店舗・飲食店で150平方メートル以内、2階以下
- 田園住居地域:一定の店舗・飲食店で150平方メートル以内、地域の農産物の直売所や農家レストランなどは500平方メートル以内(いずれも2階以下)
- 第一種中高層住居専用地域:一定の店舗・飲食店で500平方メートル以内、2階以下
- 第二種中高層住居専用地域:1,500平方メートル以内、2階以下
- 第一種住居地域:3,000平方メートル以下
- 第二種住居地域・準住居地域・工業地域:1万平方メートル以下(1万平方メートルを超える大規模なものは、近隣商業地域・商業地域・準工業地域に限られます)
- 工業専用地域:物品販売店舗・飲食店は不可
例外と敷地がまたがる場合
表の制限に当たる建築物でも、特定行政庁が住環境を害するおそれがないと認めるなどして許可すれば、建築できます(建築基準法48条各項ただし書)。この特例許可をするときは、利害関係者の出頭を求めて公開の意見聴取を行い、建築審査会の同意を得なければなりません(同条15項)。
敷地が2つの用途地域にまたがるときは、敷地の過半が属する地域の用途制限が、敷地全体に適用されます(同法91条)。たとえばBの敷地の6割が第一種住居地域、4割が近隣商業地域なら、敷地全体が第一種住居地域の制限を受けます。
特別用途地区では、地方公共団体が条例で用途制限を加えることができ、国土交通大臣の承認を得れば、条例で用途制限を緩和することもできます(同法49条)。特定用途制限地域の用途制限は、都市計画に即して地方公共団体の条例で定めます(同法49条の2)。
数字・期間のまとめ
| 項目 | 数字 | 条文 |
|---|---|---|
| 道路の幅員 | 原則4メートル以上(指定区域は6メートル以上) | 建築基準法42条1項 |
| 事業執行予定の道路 | 2年以内に執行予定のものを特定行政庁が指定 | 建築基準法42条1項4号 |
| 2項道路の後退 | 中心線から2メートル(崖地等の側から4メートル) | 建築基準法42条2項 |
| 接道義務 | 道路に2メートル以上接する | 建築基準法43条1項 |
| 壁面線を越えられない門・塀 | 高さ2メートル超 | 建築基準法47条 |
| 第一種低層住居専用地域の兼用住宅 | 店舗等部分50平方メートル以下、延べ面積の2分の1以上が住居 | 建築基準法施行令130条の3 |
| 店舗の上限(住居系) | 150(二種低層・田園)/500(一種中高層)/1,500(二種中高層)/3,000(一種住居)平方メートル | 建築基準法別表第二 |
| 準住居地域の劇場・映画館 | 客席200平方メートル未満 | 建築基準法別表第二(と)項 |
試験で問われやすいポイント
- 接道義務や用途制限は集団規定なので、都市計画区域・準都市計画区域の外では原則として適用されません。
- 2項道路のセットバック部分は敷地面積に算入しません。
- 地方公共団体の条例で接道義務を「付加」することはできますが、「緩和」することはできません。
- 地盤面下の建築物は許可なく道路内に建築できますが、公衆便所や派出所は特定行政庁の許可(建築審査会の同意)が必要です。
- 神社・保育所・診療所・派出所はすべての用途地域で建築可能。住宅と老人ホームは工業専用地域だけが不可、大学・病院は低層住居専用・田園住居・工業・工業専用で不可です。
- 敷地が用途地域にまたがるときは「過半の地域」の用途制限が全体に適用されます。
まとめ
- 建築基準法は単体規定(全国)と集団規定(都市計画区域・準都市計画区域内)に分かれます。
- 道路は原則幅員4メートル以上。4メートル未満の2項道路は中心線から2メートル後退した線が境界線です。
- 敷地は道路に2メートル以上接する必要があり、道路内には原則として建築できません。
- 用途制限は「すべての地域で可」「工業専用地域だけ不可」など、グループごとに覚えると効率的です。
建物の大きさや高さの制限は、次の章建築基準法(建蔽率・容積率・高さ制限)で学びます。
この章の内容は、法令上の制限の一問一答で確認できます。