法令上の制限 第9章
土地区画整理法
この章では、土地区画整理法を学びます。土地区画整理事業は、道路や公園などの公共施設を整備しながら、土地の区画を整える事業です。用語が多く最初は取っつきにくいのですが、「事業の開始→仮換地→換地処分」という時間の流れに沿って、誰がいつ何をするのかを整理すれば理解しやすくなります。
土地区画整理事業の仕組み
土地区画整理事業とは、都市計画区域内の土地について、公共施設の整備改善と宅地の利用の増進を図るため、土地の区画形質の変更と公共施設の新設・変更を行う事業です(土地区画整理法2条1項)。都市計画区域外では行えません。
事業では、各地権者の土地(従前の宅地)を少しずつ提供してもらい(減歩)、それを道路や公園、事業費に充てるための土地に回します。整理後は、従前の宅地に代わる新しい土地(換地)が与えられます。土地の面積は減っても、道路が整い区画が整うことで、土地の利用価値が高まるという考え方です。
この法律の「宅地」は、公共施設の用に供されている国・地方公共団体の所有地以外の土地をいいます(同条6項)。建物が建っているかどうかや地目は関係ありません。
施行者
| 施行者 | 要件・手続き | 条文 |
|---|---|---|
| 個人施行者 | 宅地の所有者・借地権者(またはその同意を得た者)が1人または数人で施行。規準または規約と事業計画を定め、都道府県知事の認可を受ける | 土地区画整理法3条1項・4条 |
| 土地区画整理組合 | 宅地の所有者・借地権者が7人以上共同して定款と事業計画を定め、都道府県知事の認可を受けて設立 | 土地区画整理法3条2項・14条 |
| 区画整理会社 | 宅地の所有者・借地権者を株主とする一定の株式会社 | 土地区画整理法3条3項 |
| 都道府県・市町村 | 施行区域(都市計画に定められた区域)の土地について施行 | 土地区画整理法3条4項 |
| 国土交通大臣 | 国の利害に重大な関係があるなどの事業を、施行区域の土地について施行 | 土地区画整理法3条5項 |
都道府県・市町村などの公的な施行者は、都市計画で定められた施行区域でしか施行できません。一方、個人・組合・区画整理会社は、施行区域以外でも(都市計画区域内であれば)施行できます。
土地区画整理組合
- 設立の認可を申請するには、施行地区となる区域内の宅地の所有者全員と借地権者全員の、それぞれ3分の2以上の同意を得なければなりません(土地区画整理法18条)。同意は人数だけでなく地積の要件もあります
- 組合が施行する事業の施行地区内の宅地の所有者と借地権者は、すべて組合員になります(同法25条1項)。設立に反対した人も組合員です
- 未登記の借地権は、施行者に申告しなければ、組合員の資格などの点で存在しないものとみなされます(同条2項・85条)
都道府県や市町村が施行する場合は、事業ごとに土地区画整理審議会が置かれ、換地計画、仮換地の指定、減価補償金の交付に関する事項について権限を持ちます(同法56条1項・3項)。
施行地区内の建築行為等の制限
事業の認可などの公告があった日後、換地処分の公告がある日までは、施行地区内で、事業の施行の障害となるおそれがある次の行為をしようとする人は、都道府県知事等の許可を受けなければなりません(土地区画整理法76条1項)。
- 土地の形質の変更
- 建築物その他の工作物の新築・改築・増築
- 政令で定める移動の容易でない物件の設置・堆積
許可権者は、国土交通大臣が施行する事業では国土交通大臣、それ以外は都道府県知事です。ただし、市の区域内で個人施行者・組合・区画整理会社が施行する事業や、市が施行する事業では、市長が許可します(同項)。施行者の許可ではない点に注意しましょう。知事等は許可をしようとするときは施行者の意見を聴きます(同条2項)。違反した場合は、原状回復や建築物の移転・除却を命じられることがあります(同条4項)。
換地計画と仮換地
換地計画
施行者は、換地処分を行うため換地計画を定めます。個人施行者・組合・区画整理会社・市町村などが施行者のときは、換地計画について都道府県知事の認可を受けます(土地区画整理法86条1項)。個人施行者以外の施行者は、換地計画を2週間公衆の縦覧に供し、利害関係者は縦覧期間内に意見書を提出できます(同法88条2項・3項)。
- 照応の原則:換地は、従前の宅地と位置・地積・土質・水利・利用状況・環境などが照応するように定めます(同法89条1項)
- 換地不交付:宅地の所有者の申出または同意があれば、換地を定めないことができます(同法90条)。その場合は金銭で清算されます
- 保留地:個人・組合・区画整理会社が施行する事業では、事業の費用に充てるためなどの目的で、一定の土地を換地とせず保留地として定めることができます(同法96条1項)。公的施行者の場合は、施行後の宅地の価額の総額が施行前の総額を超えるときに、費用に充てるため、その差額を超えない価額の範囲でのみ定めることができ、土地区画整理審議会の同意が必要です(同条2項・3項)
- 清算金:換地の位置や地積などに不均衡が生ずるときは、金銭で清算する清算金を定めます(同法94条)
仮換地の指定
工事のため必要がある場合や、換地処分を行うため必要がある場合、施行者は換地処分の前に仮換地を指定できます(土地区画整理法98条1項)。工事の期間中、地権者が仮の土地を使えるようにするための制度です。
指定する前に、個人施行者は従前の宅地や仮換地となる宅地の所有者などの同意を、組合は総会(またはその部会・総代会)の同意を得る必要があります。都道府県・市町村などは土地区画整理審議会の意見を聴きます(同条3項)。指定は、仮換地となる土地の所有者と従前の宅地の所有者に、仮換地の位置・地積と効力発生の日を通知して行います(同条5項)。
仮換地の指定の効果
仮換地が指定されると、従前の宅地を使用・収益できた人は、効力発生の日から換地処分の公告の日まで、仮換地を従前と同じ内容で使用・収益でき、従前の宅地は使用・収益できなくなります(土地区画整理法99条1項)。仮換地の元の所有者などは、その間、仮換地を使用・収益できません(同条3項)。
具体例で考えます。Aの従前の宅地甲に対して、Bの従前の宅地だった乙の部分が仮換地に指定されたとします。Aは乙を使えるようになり、甲は使えなくなります。ただし、所有権は甲のままAにあるので、Aは甲を売却したり抵当権を設定したりすることはできます。甲を買った人は、仮換地である乙を使用・収益できます。使用・収益する人がいなくなった土地は、換地処分の公告の日まで施行者が管理します(同法100条の2)。
換地処分とその効果
換地処分は、関係権利者に換地計画で定められた関係事項を通知して行います(土地区画整理法103条1項)。原則として換地計画に係る区域の全部について工事が完了した後、遅滞なく行いますが、規準・規約・定款・施行規程に別段の定めがあれば、工事完了前でも行えます(同条2項)。個人施行者・組合・市町村などが換地処分をしたときは知事に届け出て、知事が(国土交通大臣が施行するときは大臣が)換地処分があった旨を公告します(同条3項・4項)。
| 時点 | 効果 | 条文 |
|---|---|---|
| 公告があった日の終了時 | 換地を定めなかった従前の宅地に存する権利が消滅。事業により行使する利益がなくなった地役権も消滅 | 土地区画整理法104条1項・5項 |
| 公告があった日の翌日 | 換地が従前の宅地とみなされる(所有権や抵当権などが換地に移る) | 土地区画整理法104条1項・2項 |
| 公告があった日の翌日 | 清算金が確定する | 土地区画整理法104条8項 |
| 公告があった日の翌日 | 保留地を施行者が取得する | 土地区画整理法104条11項 |
| 公告があった日の翌日 | 事業で設置された公共施設は、原則として所在する市町村の管理に属する | 土地区画整理法106条1項 |
地役権は、原則として換地処分後も従前の宅地の上に存続します(同法104条4項)。所有権などが換地に移るのとは扱いが異なります。
換地処分の公告があったら、施行者は直ちに登記所に通知し、遅滞なく変動に係る登記を申請または嘱託します(同法107条1項・2項)。公告の後、この登記がされるまでは、施行地区内の土地・建物について原則として他の登記をすることができません(同条3項)。施行者は、確定した清算金を徴収または交付します(同法110条1項)。
数字・期間のまとめ
| 項目 | 数字・期間 | 条文 |
|---|---|---|
| 組合の設立に必要な人数 | 7人以上 | 土地区画整理法14条1項 |
| 組合設立の同意 | 所有者全員・借地権者全員のそれぞれ3分の2以上 | 土地区画整理法18条 |
| 換地計画の縦覧 | 2週間(個人施行者以外) | 土地区画整理法88条2項 |
| 建築行為等の制限の期間 | 事業認可等の公告日後から換地処分の公告の日まで | 土地区画整理法76条1項 |
| 権利の消滅 | 換地処分の公告の日が終了した時 | 土地区画整理法104条1項 |
| 換地が従前の宅地とみなされる時期 | 換地処分の公告の日の翌日 | 土地区画整理法104条1項 |
試験で問われやすいポイント
- 施行地区内の建築行為等の許可権者は、都道府県知事等(国土交通大臣施行のときは大臣)で、施行者ではありません。
- 組合の設立に反対した宅地の所有者・借地権者も、全員が組合員になります。
- 仮換地が指定されても、従前の宅地の所有権は移りません。従前の宅地の売却や抵当権の設定は可能です。
- 換地処分は「関係権利者への通知」で行い、効果は公告に結びつきます。「公告の日の終了時に消滅」「公告の日の翌日に取得・確定」を区別します。
- 地役権は原則として従前の宅地の上に残ります。
- 換地処分は工事完了後が原則ですが、規準・定款などに定めがあれば工事完了前でもできます。
まとめ
- 土地区画整理事業は都市計画区域内で行い、個人・組合・区画整理会社・地方公共団体などが施行します。
- 組合は7人以上で設立し、所有者・借地権者それぞれ3分の2以上の同意が必要です。
- 仮換地の指定で、使用・収益は仮換地に移りますが、所有権は従前の宅地に残ります。
- 換地処分の公告の翌日に、換地が従前の宅地とみなされ、清算金が確定し、保留地は施行者のものになります。
市街地開発事業の位置づけは都市計画法(区域と都市計画)の章で確認できます。
この章の内容は、法令上の制限の一問一答で確認できます。