法令上の制限 第10章
その他の法令上の制限
この章では、都市計画法や建築基準法などの主要な法律以外の「その他の法令上の制限」を学びます。対象になる法律は多いのですが、試験で問われるのは主に「誰の許可(または誰への届出)が必要か」です。一つひとつの法律を深く学ぶより、許可権者・届出先を一覧で押さえるのが効率的です。
考え方:原則は都道府県知事、例外を覚える
その他の法令上の制限では、許可権者が都道府県知事であるものが多くあります。そこで、「原則は都道府県知事」と考えたうえで、知事以外の者が許可権者・届出先になるものを重点的に覚えると、知識を整理しやすくなります。知事以外の例としては、国の大臣・長官、市町村長、施設の管理者(河川管理者・海岸管理者・港湾管理者など)があります。
許可・届出の相手方の一覧
| 法律 | 区域・対象 | 手続き | 相手方 |
|---|---|---|---|
| 自然公園法 | 国立公園の特別地域内の工作物の新築など | 許可 | 環境大臣 |
| 自然公園法 | 国定公園の特別地域内の工作物の新築など | 許可 | 都道府県知事 |
| 自然公園法 | 普通地域内の一定規模以上の工作物の新築など | 届出 | 国立公園は環境大臣、国定公園は都道府県知事 |
| 生産緑地法 | 生産緑地地区内の建築物の新築、宅地の造成など | 許可 | 市町村長 |
| 文化財保護法 | 重要文化財の現状変更など、史跡名勝天然記念物の現状変更など | 許可 | 文化庁長官 |
| 河川法 | 河川区域内の土地の占用、工作物の新築、土地の掘削など/河川保全区域内の一定の行為 | 許可 | 河川管理者 |
| 海岸法 | 海岸保全区域内の一定の行為 | 許可 | 海岸管理者 |
| 港湾法 | 臨港地区内の一定の工場などの建設 | 工事開始の60日前までに届出 | 港湾管理者 |
| 森林法 | 保安林での立木の伐採 | 許可 | 都道府県知事 |
| 森林法 | 地域森林計画の対象民有林での一定規模を超える開発行為 | 許可 | 都道府県知事 |
| 森林法 | 地域森林計画の対象民有林の土地の所有者になった | 届出 | 市町村長 |
| 急傾斜地法 | 急傾斜地崩壊危険区域内の一定の行為 | 許可 | 都道府県知事 |
| 地すべり等防止法 | 地すべり防止区域内の一定の行為 | 許可 | 都道府県知事 |
| 都市緑地法 | 特別緑地保全地区内の建築物の新築、宅地の造成、木竹の伐採など | 許可 | 都道府県知事等 |
| 都市緑地法 | 緑地保全地域内の建築物の新築など | あらかじめ届出 | 都道府県知事等 |
| 景観法 | 景観計画区域内の建築物の新築など | あらかじめ届出 | 景観行政団体の長 |
| 景観法 | 景観地区内の建築物の建築など | 認定 | 市町村長 |
| 土壌汚染対策法 | 形質変更時要届出区域内での土地の形質の変更 | 着手の14日前までに届出 | 都道府県知事 |
| 津波防災地域づくり法 | 津波防護施設区域内の土地の占用など | 許可 | 津波防護施設管理者 |
| 津波防災地域づくり法 | 津波災害特別警戒区域内の一定の開発行為(特定開発行為) | 許可 | 都道府県知事等 |
表のうち、知事以外が相手方になるもの(環境大臣、市町村長、文化庁長官、各施設の管理者、景観行政団体の長)が、試験で特に問われやすい部分です。なお、景観法の届出をした人は、原則として景観行政団体が届出を受理した日から30日を経過するまでは、届け出た行為に着手できません(景観法18条1項)。
生産緑地法
生産緑地地区は、市街化区域内の農地などを計画的に保全するために、都市計画で定める地区です(都市計画法8条1項14号)。生産緑地地区内で、建築物その他の工作物の新築・改築・増築、宅地の造成や土地の形質の変更、水面の埋立て・干拓をするには、市町村長の許可が必要です(生産緑地法8条1項)。市町村長が許可できるのは、農業用の施設や、地域の農産物を使う加工施設・直売所・農家レストランなど、一定の施設の設置・管理に係る行為に限られます(同条2項)。
買取りの申出
- 生産緑地地区の都市計画の告示の日から起算して30年を経過する日(申出基準日)以後、所有者は市町村長に対して、時価で買い取るよう申し出ることができます(生産緑地法10条1項)
- 農林漁業の主たる従事者が死亡したり、従事できなくなる故障を負ったりしたときは、30年を待たずに申し出ることができます(同条2項)
- 市町村長は、申出の日から1か月以内に、買い取るかどうかを書面で通知します(同法12条1項)
- 申出の日から3か月以内に所有権の移転(相続などの一般承継を除く)が行われなかったときは、行為の制限が解除されます(同法14条)
- 市町村長は、申出基準日が近い生産緑地を特定生産緑地に指定でき、指定されると買取りの申出ができる時期が先に延びます(同法10条の2・10条の5)
公有地の拡大の推進に関する法律(公拡法)
公拡法は、地方公共団体などが道路・公園などの用地を先に確保できるよう、一定の土地を有償で譲り渡す前に届け出させる制度です。国土利用計画法が「契約後」の届出なのに対し、公拡法は「譲渡の前」に届け出る点が異なります。
次の土地を所有する人が、その土地を有償で譲り渡そうとするときは、譲渡予定価額や相手方などを届け出ます。届出先は、土地が町村の区域内なら町村長を経由して都道府県知事、市の区域内なら市長です(公有地の拡大の推進に関する法律4条1項)。
- 都市計画施設の区域内の土地、道路の区域として決定された区域内の土地、生産緑地地区の区域内の土地など(同項1号〜5号)
- 市街化区域内の5,000平方メートル以上の土地、市街化区域以外の都市計画区域(市街化調整区域を除く)内の1万平方メートル以上の土地(同項6号、同法施行令2条2項)
ただし、国・地方公共団体等に譲り渡す場合や、200平方メートル未満の土地などは届出が不要です(同法4条2項、同法施行令3条3項)。所有者は、土地の買取りを希望する場合に、地方公共団体等に申し出ることもできます(同法5条1項)。
届出・申出があると、知事または市長は、届出等の日から3週間以内に、買取りの協議を行う地方公共団体等を定めて通知します(同法6条1項・2項)。届出等をした人は、通知があった場合は通知の日から3週間(協議不成立が明らかになればその時)まで、通知がなかった場合は届出等の日から3週間まで、地方公共団体等以外の者に土地を譲り渡すことができません(同法8条)。
森林・土壌汚染に関する届出
地域森林計画の対象となっている民有林について、新たに森林の土地の所有者となった人は、市町村長に届け出なければなりません。ただし、国土利用計画法23条1項の事後届出をしたときは不要です(森林法10条の7の2第1項)。相続などで森林を取得した場合も、この届出の対象になります。
土壌汚染対策法では、土壌の汚染があり、健康被害が生ずるおそれがない区域として指定された「形質変更時要届出区域」内で土地の形質の変更をしようとする人は、着手する日の14日前までに、都道府県知事に届け出なければなりません(土壌汚染対策法12条1項)。
数字・期間のまとめ
| 項目 | 数字・期間 | 条文 |
|---|---|---|
| 港湾法の臨港地区の届出 | 工事開始の60日前まで | 港湾法38条の2第1項 |
| 景観計画区域の届出後の着手制限 | 受理の日から30日 | 景観法18条1項 |
| 形質変更時要届出区域の届出 | 着手の14日前まで | 土壌汚染対策法12条1項 |
| 生産緑地の買取りの申出 | 告示から30年経過後(主たる従事者の死亡などは随時) | 生産緑地法10条 |
| 生産緑地の買取りの通知 | 申出から1か月以内 | 生産緑地法12条1項 |
| 生産緑地の行為制限の解除 | 申出から3か月以内に所有権移転がないとき | 生産緑地法14条 |
| 公拡法の届出が必要な面積 | 市街化区域5,000平方メートル以上、その他の都市計画区域(市街化調整区域を除く)1万平方メートル以上 | 公拡法4条1項6号、施行令2条2項 |
| 公拡法の譲渡制限 | 原則3週間 | 公拡法8条 |
試験で問われやすいポイント
- 国立公園の特別地域は環境大臣、国定公園の特別地域は都道府県知事の許可です。
- 生産緑地地区内の行為は市町村長の許可。都道府県知事ではありません。
- 重要文化財の現状変更は文化庁長官の許可です。
- 河川区域・海岸保全区域は、それぞれ河川管理者・海岸管理者の許可。臨港地区は港湾管理者への届出です。
- 景観計画区域は「届出」、景観地区は市町村長の「認定」です。
- 公拡法の届出は譲渡の「前」、国土利用計画法の事後届出は契約の「後」です。
まとめ
- その他の法令上の制限は、許可権者・届出先を一覧で覚えるのが効率的です。
- 原則は都道府県知事。環境大臣・文化庁長官・市町村長・各施設の管理者などの例外を重点的に押さえます。
- 生産緑地は30年経過後に買取りの申出ができ、3か月以内に所有権の移転がなければ行為制限が解除されます。
- 公拡法は有償譲渡の前に届け出て、原則3週間は地方公共団体等以外に譲り渡せません。
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