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税・その他 第5章

譲渡所得の課税と特例

この章では、個人が土地や建物を売ったときにかかる所得税(譲渡所得)と、その特例を学びます。マイホームを売ったときの3,000万円特別控除や軽減税率は、要件と「どの特例と一緒に使えるか」がよく問われます。数字だけでなく、特例どうしの関係を整理しながら読み進めてください。

譲渡所得の計算の流れ

個人が土地や建物を売ったときの所得は、給与所得などとは分けて税額を計算します(分離課税)。課税の対象となる金額は、次の式で求めます(国税庁タックスアンサーNo.3208)。

課税譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

  • 取得費:買ったときの代金や購入手数料に、その後の改良費などを加えた額です。建物は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引きます。
  • 取得費が分からないとき:売った金額の5%を取得費とすることができます。実際の取得費が5%より少ない場合も同じです(国税庁タックスアンサーNo.3258、租税特別措置法31条の4)。
  • 譲渡費用:仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、借家人への立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用など、売るために直接かかった費用です。

長期譲渡所得と短期譲渡所得

売った年の1月1日において所有期間が5年を超えるものが長期譲渡所得、5年以下のものが短期譲渡所得です(租税特別措置法31条1項・32条1項)。実際に売った日までの期間ではなく、「売った年の1月1日」で判定する点が重要です。

たとえば、Aが2021年4月1日に買った土地を2026年10月に売った場合、売った年の1月1日(2026年1月1日)時点の所有期間は4年9か月なので短期譲渡所得です。2027年1月以降に売れば、1月1日時点で5年を超えるので長期になります。相続や贈与で取得した不動産は、原則として被相続人や贈与者が取得した日から所有期間を計算します(国税庁タックスアンサーNo.3202)。

区分所得税住民税
長期譲渡所得(1月1日に5年超)15%5%
短期譲渡所得(1月1日に5年以下)30%9%
出典:租税特別措置法31条・32条、国税庁タックスアンサーNo.3208・No.3211(2026年10月確認)。このほか復興特別所得税(所得税額の2.1%)がかかります。

土地や建物の譲渡で生じた損失は、原則として給与所得など他の所得と損益通算できません(租税特別措置法31条1項後段)。例外として、マイホームの買換えなどで生じた一定の譲渡損失は、損益通算や繰越控除が認められています(同法41条の5・41条の5の2)。

居住用財産の3,000万円特別控除

自分が住んでいる家屋や、その家屋とともにその敷地を売った場合は、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます(租税特別措置法35条1項・2項)。主な要件は次のとおりです(国税庁タックスアンサーNo.3302)。

  • 所有期間の要件はありません。長期・短期どちらでも使えます。
  • 以前住んでいた家屋は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。
  • 配偶者・直系血族、生計を一にする親族など「特別の関係がある者」への譲渡には使えません(同法施行令20条の3第1項)。
  • 前年または前々年にこの特例(または居住用財産の譲渡損失の特例)の適用を受けていないこと。
  • その年・前年・前々年に、マイホームの買換え特例や交換特例の適用を受けていないこと。

居住用財産の軽減税率

売った年の1月1日において所有期間が10年を超える居住用財産を売った場合は、長期譲渡所得の税率が軽減されます(租税特別措置法31条の3)。課税長期譲渡所得金額のうち6,000万円以下の部分は所得税10%、6,000万円を超える部分は15%です。家屋と敷地の両方の所有期間が10年を超えている必要があります。

この軽減税率と3,000万円特別控除は、要件を満たせば重ねて受けることができます(国税庁タックスアンサーNo.3305)。たとえば、15年住んだ自宅を売って譲渡益が5,000万円出た場合、まず3,000万円を控除し、残りの2,000万円に10%の所得税率を適用します。

特定の居住用財産の買換え特例

マイホームを売って新しいマイホームに買い換えた場合に、売却益への課税を将来に繰り延べる特例です(租税特別措置法36条の2)。2027年12月31日までの譲渡が対象です。主な要件は次のとおりです。

  • 売った年の1月1日において所有期間が10年を超え、居住期間が10年以上であること
  • 譲渡の対価が1億円以下であること
  • 買換資産は、居住部分の床面積50平方メートル以上、敷地は500平方メートル以下であること(同法施行令24条の2第3項)
  • 売った年の前年から翌年までの間に買換資産を取得し、一定の期限までに住むこと

この特例は、その年・前年・前々年に3,000万円特別控除(空き家の特例を除く)や軽減税率の適用を受けている場合は使えません。3,000万円控除・軽減税率のセットと、買換え特例は「どちらかを選ぶ」関係と覚えましょう。

その他の主な特例

  • 被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除:1981年5月31日以前に建築された、区分所有建物ではない被相続人の自宅を相続した人が、耐震改修や取壊しをするなどして売った場合に使えます。2027年12月31日までの譲渡で、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、対価が1億円以下であることなどが要件です。相続人が3人以上の場合は1人あたり2,000万円です(租税特別措置法35条3項〜5項)。
  • 収用等の5,000万円特別控除:土地収用などで資産を手放した場合に、譲渡所得から最高5,000万円を控除できます(同法33条の4)。
  • 優良住宅地の造成等のための譲渡:国や地方公共団体などへの一定の土地の譲渡は、2028年12月31日までの譲渡について、課税長期譲渡所得金額2,000万円以下の部分が所得税10%になります(同法31条の2)。
  • 固定資産の交換の特例:1年以上持っていた土地と土地、建物と建物などを交換し、交換前と同じ用途に使う場合は、譲渡がなかったものとみなされます。交換の時の両資産の価額の差額が、高い方の価額の20%を超えると使えません(所得税法58条)。

数字・期間のまとめ

特例など主な数字・要件根拠
長期・短期の区分売った年の1月1日に所有期間5年超か措置法31条・32条
居住用財産の3,000万円控除所有期間不問、前年・前々年に適用なし措置法35条
居住用財産の軽減税率1月1日に10年超、6,000万円以下の部分10%措置法31条の3
買換え特例所有10年超・居住10年以上、対価1億円以下、2027年12月31日までの譲渡措置法36条の2
空き家の3,000万円控除1981年5月31日以前の建築、対価1億円以下、2027年12月31日までの譲渡措置法35条3項
収用等の特別控除最高5,000万円措置法33条の4
固定資産の交換1年以上所有、差額は高い方の価額の20%以内所得税法58条
出典:e-Gov法令検索「租税特別措置法」「同法施行令」「所得税法」、国税庁タックスアンサー(2026年10月確認)

試験で問われやすいポイント

  • 長期・短期は「売った年の1月1日」で判定します。売った日ではありません。
  • 3,000万円特別控除には所有期間の要件がありません。軽減税率は1月1日に10年超が必要です。
  • 3,000万円特別控除と軽減税率は併用できますが、買換え特例とは併用できません。
  • 配偶者や直系血族への譲渡には、居住用財産の特例は使えません。
  • 土地・建物の譲渡損失は、原則として他の所得と損益通算できません。

まとめ

  • 譲渡所得は、譲渡価額から取得費・譲渡費用・特別控除を差し引いて計算し、取得費が不明なら売った金額の5%を使えます。
  • 1月1日に5年超なら長期(所得税15%)、5年以下なら短期(所得税30%)です。
  • マイホームは3,000万円控除と10年超の軽減税率を併用でき、買換え特例とは選択関係です。
  • 買換え特例と空き家の特例は2027年12月31日までの譲渡が対象です。

この章の内容は、税・その他の一問一答で確認できます。

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