税・その他 第10章
景品表示法・公正競争規約
この章では、5問免除の範囲で出題される「景品表示法」と、不動産業界の自主ルールである「公正競争規約」を学びます。法律の仕組みと、規約が定める広告表示の具体的な数字(徒歩所要時間、「新築」の定義など)の両方が問われます。実際の不動産広告を思い浮かべながら読むと覚えやすい分野です。
景品表示法の目的と仕組み
不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)は、不当な景品類や表示によって顧客を誘引することを防ぎ、一般消費者の利益を保護することを目的としています(景品表示法1条)。対象には不動産の取引も含まれます(同法2条3項)。
不当な表示の禁止
事業者は、次のような表示をしてはなりません(景品表示法5条)。
- 優良誤認表示:品質や規格などの内容について、実際のものや他の事業者のものよりも著しく優良であると示す表示(1号)
- 有利誤認表示:価格などの取引条件について、実際のものや他の事業者のものよりも著しく有利であると誤認される表示(2号)
- 内閣総理大臣が指定する表示:不動産については「不動産のおとり広告に関する表示」が指定されています(3号)。
措置命令と課徴金
- 措置命令:違反行為があるときは、その差止めや再発防止のための措置などを命じることができます。違反行為がすでになくなっていても命じることができます(景品表示法7条1項)。
- 合理的な根拠の提出:優良誤認表示かどうかを判断するため、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。期間内に提出しないと、その表示は優良誤認表示とみなされます(同条2項)。
- 課徴金:優良誤認表示・有利誤認表示をした事業者には、対象商品などの売上額の3%の課徴金の納付が命じられます。課徴金の額が150万円未満の場合などは命じられません(同法8条1項)。
これらの権限は内閣総理大臣にありますが、消費者庁長官に委任されています(同法38条1項)。また、その事務の一部は都道府県知事が行うこともできます(同条11項)。
公正競争規約
事業者や事業者団体は、景品類や表示について、内閣総理大臣と公正取引委員会の認定を受けて、協定または規約を設定できます(景品表示法36条1項)。不動産業界では「不動産の表示に関する公正競争規約」(表示規約)と「不動産業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」(景品規約)が設けられ、不動産公正取引協議会連合会と各地区の協議会が運用しています。
景品類の制限(景品規約)
不動産の事業者が一般消費者に景品類を提供する場合の上限は、次のとおりです(景品規約3条)。
- 懸賞(くじなど)で提供する場合:取引価額の20倍または10万円のいずれか低い額まで。提供できる景品類の総額は、その懸賞に係る取引予定総額の100分の2以内
- 懸賞によらないで提供する場合(契約者全員にプレゼントなど):取引価額の10分の1または100万円のいずれか低い額まで
たとえば、3,000万円の住宅の購入者全員に提供する景品は、3,000万円の10分の1(300万円)と100万円の低い方である100万円が上限です。なお、正常な商慣習に照らして値引きと認められる経済上の利益(代金の減額など)は、景品類にあたりません(同規約2条3項)。上の金額は、2025年8月26日に変更された現行の景品規約によるものです。
広告表示のルール(表示規約)
広告を始められる時期
宅地の造成や建物の建築の工事完了前は、宅建業法33条の許可等の処分(開発許可や建築確認など)があった後でなければ、その宅地・建物の内容や取引条件に関する広告をしてはなりません(表示規約5条)。
交通・距離・面積の表示
- 徒歩所要時間:道路距離80メートルにつき1分として計算し、1分未満の端数は1分に切り上げます(表示規約施行規則9条9号)。たとえば道路距離500メートルなら、500÷80=6.25なので「徒歩7分」です。
- 起点と着点:物件の起点は、物件の区画のうち駅などに最も近い地点(マンション・アパートは建物の出入口)、着点は駅などの施設の出入口です(同条7号)。
- 電車などの所要時間:朝の通勤ラッシュ時の所要時間を明示し、乗換えが必要なときはその旨を明示して、乗換えにおおむね要する時間を含めます(同条4号)。
- 新設予定の駅:その路線の運行主体が公表したものに限り、新設予定時期を明示して表示できます(同条6号)。
- 面積:メートル法で表示し、1平方メートル未満は切り捨てて表示できます。土地の面積は水平投影面積です(同条13号・14号)。
- 畳数:畳1枚あたりの広さは1.62平方メートル(各室の壁心面積を畳数で割った数値)以上という意味で用います(同条16号)。
- 納戸:採光・換気の基準を満たさず建築基準法上の居室と認められない部分は、「納戸」などと表示します(同条17号)。
- 地目:登記簿に記載されている地目を表示し、現況と違うときは現況の地目を併記します(同条19号)。
明示しなければならない事項の例
- 建築基準法42条の道路に2メートル以上接していない土地は、「再建築不可」または「建築不可」と明示します(表示規約施行規則7条4号)。
- 市街化調整区域の土地は、原則として「市街化調整区域。宅地の造成及び建物の建築はできません。」と明示します(同条6号)。
- 路地状部分のみで道路に接する土地で、路地状部分の面積がおおむね30%以上を占めるときは、その旨と割合または面積を明示します(同条8号)。
特定の用語の使い方
「新築」は、建築工事完了後1年未満で、居住の用に供されたことがないものをいいます(表示規約18条1項1号)。完成から1年以上たった未入居の物件や、1年未満でも人が住んだことがある物件は「新築」と表示できません。
また、「最高」「格安」「完全」「日本一」「特選」「完売」など、最上級や著しい安さ・人気を意味する用語は、表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を現に持っている場合でなければ使えません(同条2項)。
物件の名称、二重価格表示、おとり広告
- 物件の名称:公園や河川などの名称は、物件がそこから直線距離で300メートル以内にある場合に、街道などの道路の名称は直線距離で50メートル以内にある場合に、物件の名称に使えます(表示規約19条1項)。
- 二重価格表示:過去の販売価格を比較対照価格として表示できるのは、値下げ前2か月以上にわたって実際に公表していた値下げ直前の価格で、値下げの日から6か月以内の表示であることなどの要件をすべて満たす場合に限られます。過去の販売価格の公表日と値下げの日も明示します(表示規約20条、同施行規則12条)。
- おとり広告:物件が存在しないため取引できない物件、存在するが取引の対象となりえない物件、存在するが取引する意思がない物件の広告は禁止されています(表示規約21条)。成約済みの物件を広告し続けることも、取引の対象となりえない物件の表示にあたります(不動産公正取引協議会連合会「おとり広告ガイドライン」)。
数字・期間のまとめ
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 課徴金 | 売上額の3%(150万円未満は命じない) | 景品表示法8条 |
| 景品(懸賞) | 取引価額の20倍か10万円の低い方、総額は取引予定総額の2%以内 | 景品規約3条 |
| 景品(懸賞以外) | 取引価額の10分の1か100万円の低い方 | 景品規約3条 |
| 徒歩所要時間 | 道路距離80メートルで1分、端数は切上げ | 表示規約施行規則9条 |
| 畳1枚の広さ | 1.62平方メートル以上 | 同上 |
| 新築 | 工事完了後1年未満かつ未入居 | 表示規約18条 |
| 物件の名称 | 公園・河川などは300メートル以内、道路は50メートル以内(直線距離) | 表示規約19条 |
| 二重価格表示 | 値下げ前2か月以上公表した価格、値下げから6か月以内 | 表示規約施行規則12条 |
試験で問われやすいポイント
- 徒歩所要時間は80メートル1分で、端数は切り捨てではなく切り上げです。
- 「新築」は1年未満かつ未入居の両方が必要です。
- 工事完了前の物件は、開発許可や建築確認などの処分があるまで広告できません。
- 懸賞によらない景品は「10分の1か100万円の低い方」です。
- 合理的な根拠の資料を期間内に出さないと、優良誤認表示とみなされます。
- 道路に2メートル以上接していない土地は「再建築不可」などの明示が必要です。
まとめ
- 景品表示法は優良誤認・有利誤認などの不当表示を禁止し、措置命令や課徴金(売上額の3%)で是正します。
- 不動産の景品は、懸賞なら20倍か10万円、懸賞以外なら10分の1か100万円の低い方が上限です。
- 表示規約では徒歩80メートル1分(切上げ)、「新築」は1年未満・未入居、二重価格表示やおとり広告の制限などが定められています。
宅建業法上の広告の規制は、広告・業務上の規制の章で確認できます。
この章の内容は、税・その他の一問一答で確認できます。