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権利関係 第17章

共有・相隣関係

この章では、1つの物を複数人で所有する「共有」と、隣り合う土地の所有者どうしの利用を調整する「相隣関係」を学びます。どちらも2023年4月施行の民法改正で大きく見直されました。共有物の管理の決め方と、隣地の竹木の枝の切取りなどの新しいルールを押さえましょう。

共有と持分

共有では、各共有者が「持分」という割合的な権利を持ちます。持分は、特に定めがなければ等しいものと推定されます(民法250条)。各共有者は自分の持分を自由に譲渡でき、他の共有者の同意はいりません。

各共有者は、共有物の全部について、持分に応じた使用ができます(民法249条1項)。たとえば、A・B・Cが3分の1ずつ共有する別荘は、Aも別荘全体を使えますが、使える程度は持分に応じたものになります。2023年4月からは、次の点が条文で明確になりました。

  • 共有物を使用する共有者は、別段の合意がない限り、他の共有者に対し、自分の持分を超える使用の対価を償還する義務を負います(民法249条2項)。
  • 共有者は、善良な管理者の注意(社会通念上求められる注意)をもって共有物を使用しなければなりません(民法249条3項)。

なお、判例は、共有者の1人が他の共有者の協議を経ずに共有物を占有している場合でも、他の共有者は当然には明渡しを請求できないとしています。占有している共有者にも、持分に応じて共有物全体を使用する権利があるためです。

保存・管理・変更

共有物について何かをするときに、誰の同意が必要かは行為の種類で決まります。

行為の種類具体例決め方
保存行為雨漏りの修繕、不法占拠者への明渡し請求各共有者が単独でできる(252条5項)
管理行為共有物を使用する共有者の決定、短期の賃貸借の設定・解除、管理者の選任・解任持分の価格の過半数(252条1項)
軽微な変更形状または効用の著しい変更を伴わない変更(砂利道のアスファルト舗装など)持分の価格の過半数(251条1項・252条1項)
変更(軽微なものを除く)建物の建替え、増改築、宅地造成共有者全員の同意(251条1項)
処分共有物全体の売却共有者全員の同意
e-Gov法令検索の民法249条〜252条の2をもとに作成。具体例は当サイトによる(2026年10月確認)

「過半数」は共有者の人数ではなく、持分の価格で数えます。たとえば、Aが持分2分の1、BとCが4分の1ずつのとき、AとBが賛成すれば4分の3となり、管理行為を決められます。A単独では2分の1なので、過半数に届きません。

短期の賃貸借は管理行為

2023年4月から、次の期間を超えない賃借権などの設定は、持分の価格の過半数で決められることが明記されました(民法252条4項)。これを超える期間の賃貸借は、原則として共有者全員の同意が必要です。

  • 樹木の栽植または伐採を目的とする山林:10年
  • それ以外の土地:5年
  • 建物:3年
  • 動産:6か月

ただし、借地借家法の適用がある建物賃貸借は、正当事由がなければ更新を拒絶できず、期間内に終了する保証がありません。そのため、定期建物賃貸借などで3年以内に確実に終了する場合を除き、全員の同意が必要と考えられています。

共有物の管理者

共有者は、持分の価格の過半数で共有物の管理者を選任できます(民法252条1項)。管理者は管理に関する行為ができますが、軽微でない変更には共有者全員の同意が必要です(民法252条の2第1項)。管理者は共有者である必要はありません。

所在等不明の共有者がいる場合

共有者の中に、誰か分からない人や所在が分からない人がいると、全員の同意や過半数の決定ができず、土地の活用が止まってしまいます。2023年4月の改正で、裁判所を使った次の手続が設けられました。

  • 変更・管理の裁判:裁判所は、所在等不明の共有者以外の共有者の同意で変更を加えたり、その人以外の共有者の持分の過半数で管理事項を決めたりできる旨の裁判をすることができます(民法251条2項・252条2項1号)。催告しても賛否を明らかにしない共有者がいる場合も、管理事項については同様の裁判ができます(民法252条2項2号)。
  • 持分の取得・譲渡:不動産の共有では、裁判所の裁判により、所在等不明共有者の持分を他の共有者が取得したり、第三者に譲渡する権限を得たりできます。所在等不明共有者は、時価相当額の支払いを請求できます(民法262条の2・262条の3)。

このほか、所有者が分からない土地・建物については、裁判所が管理人を選任して管理させる所有者不明土地管理命令・所有者不明建物管理命令の制度もあります(民法264条の2・264条の8)。

費用負担・持分の放棄・分割

  • 費用負担:各共有者は持分に応じて管理費用などを負担します。1年以内に負担しない共有者がいるときは、他の共有者は相当の償金を払ってその持分を取得できます(民法253条)。
  • 放棄・相続人の不存在:共有者の1人が持分を放棄したとき、または死亡して相続人がいないときは、その持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。ただし判例は、相続人がいない場合は、特別縁故者への財産分与(民法958条の2)が優先し、分与されなかったときに初めて他の共有者に帰属するとしています。
  • 分割請求:各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できます。ただし、5年を超えない期間は分割しない旨の契約ができ、更新もできます(更新の時から5年以内)(民法256条)。
  • 裁判による分割:協議が調わないときは裁判所に請求できます。裁判所は、現物分割のほか、一部の共有者に他の共有者の持分を取得させて代わりにお金を払わせる方法(賠償分割)も命じることができ、これらで分割できないときなどは競売を命じます(民法258条)。

相続によって生じた共有(遺産共有)は、原則として遺産分割の手続で分けます。ただし、相続開始から10年を経過したときは、一定の場合に共有物分割の手続で分けることもできます(民法258条の2)。遺産分割については相続の章で扱います。

相隣関係

隣地使用権

土地の所有者は、境界付近の塀や建物の築造・修繕、境界標の調査や測量、越境した枝の切取りのために、必要な範囲で隣地を使用できます。ただし、住家に立ち入るには居住者の承諾が必要です(民法209条1項)。使用する場合は、隣地の所有者と現に使用している人に、あらかじめ目的・日時・場所・方法を通知します。事前の通知が困難なときは、使用開始後に遅滞なく通知すれば足ります(同条3項)。

公道に至るための通行権

他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者は、公道に出るため、周りの土地を通行できます(民法210条)。通行の場所と方法は、通行権者に必要で、かつ周りの土地にとって損害が最も少ないものを選び、必要なら通路を開設できます(民法211条)。通行する土地の損害に対しては償金を払います(民法212条)。

ただし、土地の分割や一部譲渡によって袋地が生じた場合は、分割された他方の土地(残りの土地)だけを通行でき、償金は不要です(民法213条)。また、電気・ガス・水道などを引くために他人の土地に設備を設置したり、他人の設備を使用したりする権利も、2023年4月から明文化されました(民法213条の2)。

竹木の枝と根

  • 根:隣地の竹木の根が境界線を越えてきたときは、自分で切り取ることができます(民法233条4項)。
  • 枝:原則として、竹木の所有者に切除させることができるだけです(民法233条1項)。ただし2023年4月から、①切除を催告したのに相当の期間内に切除しないとき、②竹木の所有者が分からないか所在不明のとき、③急迫の事情があるときは、自分で枝を切り取ることができます(同条3項)。竹木が共有の場合、各共有者は単独で枝を切り取れます(同条2項)。

境界付近の建築

建物を建てるときは、境界線から50センチメートル以上離さなければなりません。違反して建築しようとする人がいるときは、隣地の所有者は建築の中止・変更を求められますが、建築着手から1年を経過したか、建物が完成した後は、損害賠償の請求しかできません(民法234条)。境界線から1メートル未満の距離に、他人の宅地を見通せる窓や縁側(ベランダを含む)を設けるときは、目隠しを付けなければなりません(民法235条)。異なる慣習があれば、その慣習に従います(民法236条)。

数字・期間のまとめ

項目数字・期間根拠
過半数で設定できる賃借権等山林10年/土地5年/建物3年/動産6か月以内民法252条4項
費用を負担しない共有者の持分取得1年以内に負担しないとき民法253条2項
分割禁止の契約5年以内(更新も更新時から5年以内)民法256条
遺産共有の共有物分割相続開始から10年経過後民法258条の2
境界線からの建物の距離50センチメートル以上民法234条
建築の中止・変更を求められる期限着手から1年以内かつ完成前民法234条2項
目隠しが必要な窓・縁側境界線から1メートル未満民法235条
e-Gov法令検索の民法をもとに作成(2026年10月確認)

試験で問われやすいポイント

  • 管理行為の過半数は、人数ではなく持分の価格で数える
  • 形状・効用の著しい変更を伴わない軽微な変更は、全員の同意ではなく過半数で決められる
  • 不法占拠者への明渡し請求などの保存行為は、各共有者が単独でできる
  • 隣地の竹木の根は自分で切れる。枝は原則として切除させるだけだが、催告しても切らないときなどは自分で切れる
  • 分割・一部譲渡で生じた袋地は、残りの土地だけを無償で通行できる

まとめ

  • 保存は単独、管理と軽微変更は持分の過半数、軽微でない変更と処分は全員の同意
  • 短期の賃貸借(建物3年・土地5年以内)は過半数で設定できる
  • 所在等不明共有者がいても、裁判所の手続で管理・変更や持分の取得ができる
  • 相隣関係では隣地使用権、通行権、枝の切取り、50センチメートルと1メートルの距離を押さえる

この章の内容は、権利関係の一問一答で確認できます。

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