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権利関係 第8章

保証・連帯債務

この章では、他人の借金などを代わりに支払う責任を負う「保証」と、複数の人がそれぞれ全額を支払う責任を負う「連帯債務」を学びます。不動産取引では、賃貸借契約の連帯保証人や、夫婦がペアで住宅ローンを組む場面などで関係します。2020年4月の改正で、連帯債務の効力や個人の保証人を守るルールが大きく変わった点に注意が必要です。

保証債務とは

保証契約

保証人は、主たる債務者(お金を借りた本人など)がその債務を履行しないときに、代わりに履行する責任を負います(民法446条1項)。たとえば、BがAから500万円を借り、CがBの保証人になった場合、Bが返済しなければ、AはCに支払いを請求できます。

保証契約は、債権者と保証人の間で結ばれる契約です。主たる債務者Bは契約の当事者ではありません。そのため、Bに頼まれずに保証人になることや、Bの意思に反して保証人になることもできます(求償の範囲は変わります。民法462条)。

保証契約は、書面(または電磁的記録)でしなければ効力を生じません(民法446条2項・3項)。口頭だけの約束では保証人にならないということです。保証人が軽い気持ちで責任を負うことを防ぐためです。

保証債務の範囲

保証債務は、主たる債務の元本だけでなく、利息、違約金、損害賠償など、主たる債務に従たるすべてのものを含みます(民法447条1項)。

保証債務の性質

付従性

保証債務は、主たる債務を担保するためのものなので、主たる債務に従います。

  • 主たる債務が成立しなければ保証債務も成立せず、主たる債務が弁済などで消滅すれば保証債務も消滅します
  • 保証人の負担が主たる債務より重いときは、主たる債務の限度に減らされます(民法448条1項)
  • 保証契約の後に主たる債務の内容が重くなっても、保証人の負担は重くなりません(同条2項)
  • 保証人は、主たる債務者が主張できる抗弁(同時履行の抗弁など)を債権者に主張できます(民法457条2項)
  • 主たる債務者が債権者に対して相殺権・取消権・解除権を持っているときは、それによって主たる債務者が債務を免れる限度で、保証人は履行を拒むことができます(同条3項)

随伴性

主たる債務の債権が譲渡されると、保証債務もそれに伴って新しい債権者に移ります。

補充性(催告の抗弁・検索の抗弁)

保証人は、主たる債務者が履行しない場合に、二次的に責任を負う立場です。そのため、次の2つの権利があります。

  • 催告の抗弁:債権者からいきなり請求されたとき、「まず主たる債務者に請求してください」と言える権利(民法452条)。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたときや、行方不明のときは主張できません
  • 検索の抗弁:債権者が主たる債務者に催告した後でも、主たる債務者に弁済する資力があり、かつ執行が容易であることを保証人が証明すれば、債権者はまず主たる債務者の財産に執行しなければならない(民法453条)

主たる債務者に生じた事由の効力

主たる債務者に対する履行の請求など、時効の完成猶予・更新の事由が生じると、その効力は保証人にも及びます(民法457条1項)。主たる債務の時効が進んでいるのに保証債務だけが残ることを防ぐためです。反対に、保証人に生じた事由は、弁済など債務を消滅させるものを除き、原則として主たる債務者に影響しません。

連帯保証

連帯保証とは、保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担する保証です。不動産の賃貸借やローンでは、ほとんどの場合、連帯保証が使われます。普通の保証との違いは次のとおりです。

項目普通の保証連帯保証
催告の抗弁・検索の抗弁あるない(民法454条)
分別の利益(保証人が複数いるとき、人数で割った額だけ負担すればよい)ある(民法456条・427条)ない
付従性あるある
保証人に生じた事由の主たる債務者への影響原則として影響しない更改・相殺・混同は主たる債務者にも効力が及ぶ(民法458条)
民法427条・452条〜454条・456条・458条をもとに作成

連帯保証人には催告・検索の抗弁がないため、債権者は、主たる債務者に請求せずに、いきなり連帯保証人に全額を請求できます。

2020年4月の改正で、連帯保証人に対する履行の請求は、主たる債務者に効力が及ばなくなりました(民法458条・441条)。たとえば、債権者が連帯保証人に請求しても、それだけでは主たる債務の時効は更新されません。ただし、債権者と主たる債務者が別の合意をしていれば、その合意に従います(民法441条ただし書)。

個人の保証人を守るルール

2020年4月の改正で、個人が保証人になる場合の保護が強化されました。

個人根保証契約の極度額

根保証契約とは、一定の範囲に属する不特定の債務をまとめて保証する契約です。たとえば、建物賃貸借の保証人は、将来発生する賃料の滞納や原状回復費用など、金額が決まっていない債務を保証します。

保証人が個人である根保証契約(個人根保証契約)は、極度額(保証する上限額)を定めなければ効力を生じません(民法465条の2第1項・2項)。極度額の定めも書面などでする必要があります(同条3項)。改正前は、貸金債務の根保証だけが対象でしたが、2020年4月からは賃貸借の保証など、すべての個人根保証契約に広がりました。

個人根保証契約の元本は、主たる債務者または保証人が死亡したときなどに確定します(民法465条の4第1項)。確定後に生じた債務は保証の対象外になります。

債権者の情報提供義務

  • 主たる債務の履行状況:主たる債務者から頼まれて保証人になった人(委託を受けた保証人)が請求したときは、債権者は、遅滞なく、元本・利息などの不履行の有無や残額などの情報を提供しなければなりません(民法458条の2)。法人の保証人も対象です
  • 期限の利益の喪失:主たる債務者が期限の利益(分割払いなど、期限まで支払わなくてよい利益)を失ったときは、債権者は、それを知った時から2か月以内に個人の保証人に通知しなければなりません。通知しなかった場合、通知するまでに生じた遅延損害金を保証人に請求できません(民法458条の3)

事業のための債務の保証

主たる債務者が、事業のために負担する債務の保証を個人に頼むときは、自分の財産・収支の状況、他の債務の状況などの情報を提供しなければなりません。情報を提供しなかったり、事実と違う情報を提供したりしたために保証人が誤解して保証した場合、債権者がそれを知り、または知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消せます(民法465条の10)。

また、事業のための貸金債務を個人が保証する場合は、原則として、契約締結の日前1か月以内に作成された公正証書で保証の意思を表示しなければ、保証契約は効力を生じません(民法465条の6)。ただし、主たる債務者である法人の取締役や、主たる債務者と共同して事業を行う人などは、この手続きは不要です(民法465条の9)。

連帯債務

連帯債務とは

連帯債務とは、複数の債務者が、同じ内容の給付について、それぞれ全部を履行する義務を負い、誰か一人が履行すれば全員の債務が消えるものです。たとえば、B・C・Dの3人が共同でAから土地を900万円で買い、代金を連帯して支払う約束をした場合です。

債権者Aは、連帯債務者の一人に対し、または同時もしくは順番に全員に対し、全部または一部の履行を請求できます(民法436条)。連帯債務者の一人について契約の無効や取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務には影響しません(民法437条)。

他の連帯債務者に影響する事由

連帯債務者の一人に生じた事由は、原則として他の連帯債務者に影響しません(相対的効力、民法441条)。例外として、次の事由は全員に効力が及びます(絶対的効力)。

事由他の連帯債務者への効力条文
弁済及ぶ(全員の債務が消滅)—
更改(債務の内容を新しいものに置き換える契約)及ぶ民法438条
相殺及ぶ。反対債権を持つ人が相殺を援用しない間は、他の人はその人の負担部分の限度で履行を拒める民法439条
混同(債権者と債務者が同じ人になること)及ぶ民法440条
履行の請求及ばない民法441条
免除及ばない民法441条
時効の完成及ばない民法441条
民法436条〜441条をもとに作成

2020年4月の改正前は、履行の請求・免除・時効の完成も、一定の範囲で他の連帯債務者に効力が及びました。改正後は相対的効力に変わったので、古い知識と混同しないよう注意しましょう。なお、債権者と他の連帯債務者が別の合意をしていれば、その合意に従います(民法441条ただし書)。

求償

連帯債務者の一人が弁済したときは、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分に応じて求償できます(民法442条1項)。自分の負担部分を超えて支払ったかどうかに関係なく、支払った額について負担部分の割合で求償できる点が特徴です。

上の例で、B・C・Dの負担部分が等しいとき、Bが300万円を弁済すると、BはCとDにそれぞれ100万円ずつ求償できます。

連帯債務者の一人が免除を受けたり、その人について時効が完成したりしても、他の連帯債務者は、その人に対して求償することができます(民法445条)。

数字・期間のまとめ

項目内容条文
保証契約の方式書面または電磁的記録民法446条2項・3項
期限の利益喪失の通知知った時から2か月以内(個人保証人)民法458条の3
事業用貸金の個人保証の公正証書契約締結の日前1か月以内に作成民法465条の6

試験で問われやすいポイント

  • 保証契約は債権者と保証人の契約で、書面でしなければ無効。主たる債務者に頼まれていなくても保証人になれる
  • 主たる債務者への履行の請求による時効の完成猶予・更新は、保証人にも及ぶ
  • 連帯保証人には、催告の抗弁・検索の抗弁・分別の利益がない
  • 連帯保証人や連帯債務者の一人に対する履行の請求は、原則として他の者に効力が及ばない
  • 個人根保証契約は、極度額を定めなければ無効。建物賃貸借の個人保証も対象
  • 連帯債務者の一人が弁済すると、負担部分を超えていなくても、負担部分の割合で他の連帯債務者に求償できる

まとめ

  • 保証債務には付従性・随伴性・補充性があり、保証契約は書面が必要
  • 連帯保証人は催告・検索の抗弁と分別の利益を持たず、いきなり全額を請求される
  • 個人根保証契約は極度額の定めが必要で、債権者には保証人への情報提供義務がある
  • 連帯債務では、弁済・更改・相殺・混同だけが他の債務者に影響し、請求・免除・時効の完成は影響しない
  • 抵当権など物による担保は抵当権・根抵当権の章を参照

この章の内容は、権利関係の一問一答で確認できます。

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