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権利関係 第13章

借地借家法(借家)

この章では、借地借家法のうち建物の賃貸借(借家)のルールを学びます。アパートや店舗を借りる契約が対象で、更新の通知期間や定期建物賃貸借の要件がよく問われます。民法の賃貸借との違いを意識しながら読み進めてください。

借家の規定が適用される範囲

借地借家法の借家の規定は、建物の賃貸借に適用されます。居住用か事業用かは問いません。ただし、次の場合は適用されません。

  • 一時使用のための賃貸借であることが明らかな場合(借地借家法40条)
  • 使用貸借(無償で借りる契約)。借地借家法は賃貸借を対象とするため、無償で借りている人は保護されません

期間と更新

期間

期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない賃貸借とみなされます(借地借家法29条1項)。一方、民法の50年の上限は適用されないため、50年を超える期間も定められます(同条2項)。なお、定期建物賃貸借には1年未満のルールが適用されず、半年などの短い期間も有効です(借地借家法38条1項)。

期間の定めがある場合の更新

当事者が期間満了の1年前から6か月前までの間に、相手方に「更新しない」旨(または条件を変えなければ更新しない旨)の通知をしなかったときは、従前と同じ条件で更新したものとみなされます。ただし、更新後は期間の定めがない賃貸借になります(借地借家法26条1項)。

通知をした場合でも、期間満了後に賃借人が使用を続け、賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときは、やはり更新したものとみなされます(借地借家法26条2項)。転借人が使用を続けている場合も、賃借人の使用継続とみなされます(同条3項)。

正当事由

賃貸人からの更新拒絶の通知や解約の申入れには、正当の事由が必要です(借地借家法28条)。賃貸人と賃借人(転借人を含みます)が建物を必要とする事情を中心に、これまでの経過、建物の利用状況と現況、立退料などの財産上の給付の申出を考慮します。賃借人から更新を拒絶したり解約したりするのに、正当事由は要りません。

期間の定めがない場合の解約

  • 賃貸人から:正当事由が必要で、解約申入れの日から6か月を経過すると終了します(借地借家法27条1項・28条)。6か月経過後も賃借人が使用を続け、賃貸人が遅滞なく異議を述べなければ、更新したものとみなされます(同法27条2項)。
  • 賃借人から:借地借家法に定めがないため民法によります。いつでも申し入れることができ、申入れから3か月で終了します(民法617条1項)。

これらの更新・解約に関する規定に反する特約で賃借人に不利なものは無効です(借地借家法30条)。たとえば「賃貸人は3か月前の予告でいつでも解約できる」という特約は無効です。

建物賃貸借の効力

対抗力は「引渡し」で足りる

建物の賃貸借は、登記がなくても、建物の引渡しがあれば、その後に建物の所有権などを取得した人に対抗できます(借地借家法31条)。A所有のアパートの一室を借りて鍵を受け取り、住み始めたBは、建物がCに売られても、Cに賃借権を主張できます。この場合、賃貸人の地位はCに移ります(民法605条の2)。

借賃増減請求

建物の借賃(家賃)が、税などの負担の増減、価格の変動などの経済事情の変動、近隣の同種の建物の家賃との比較で不相当となったときは、当事者は将来に向かって増額・減額を請求できます。一定期間増額しない特約があればそれに従います(借地借家法32条1項)。協議が調わないときの扱いと年1割の利息による精算は、借地の地代と同じです(同条2項・3項)。

造作買取請求権

賃貸人の同意を得て付けた畳・建具・エアコンなどの造作(建物に付加した物)がある場合、賃借人は、賃貸借が期間満了または解約申入れで終了するときに、賃貸人に時価で買い取るよう請求できます。賃貸人から買い受けた造作も同じです(借地借家法33条1項)。

造作買取請求権は、特約で排除できます。強行規定を定めた借地借家法37条に33条が含まれていないためです。また、賃借人の債務不履行で解除された場合には、条文上「期間の満了又は解約の申入れ」による終了にあたらないため、請求できません。

転借人と同居者の保護

転借人への通知

建物が適法に転貸されている場合、賃貸借が期間満了または解約申入れで終了するときは、賃貸人は転借人にその旨を通知しなければ、終了を転借人に対抗できません。通知をすると、転貸借は通知の日から6か月で終了します(借地借家法34条)。債務不履行解除や合意解除の扱いは、民法の賃貸借の章で確認してください。

借地上の建物の賃借人

借地上の建物を借りている人は、借地権の期間満了で土地を明け渡さなければならなくなることがあります。この場合、建物の賃借人が借地権の満了を1年前までに知らなかったときに限り、裁判所は、知った日から1年を超えない範囲で明渡しの猶予を与えることができます(借地借家法35条)。

居住用建物の賃貸借の承継

居住用建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合、事実上の夫婦や養親子と同様の関係にあった同居者は、賃借人の権利義務を承継します。承継を望まない同居者は、相続人なしに死亡したことを知った後1か月以内に賃貸人に反対の意思を表示します(借地借家法36条)。相続人がいる場合は、賃借権は相続人が相続します。

定期建物賃貸借と取壊し予定の建物

定期建物賃貸借(定期借家)は、契約の更新がなく、期間満了で確定的に終了する建物賃貸借です(借地借家法38条)。要件と効果を整理します。

  • 契約の方式:期間を定め、公正証書による等の書面で契約します。電磁的記録による契約も書面とみなされます(38条1項・2項)。公正証書である必要はありません。
  • 事前説明:賃貸人は契約前に、更新がなく期間満了で終了することを、その旨を記載した書面を交付して説明しなければなりません。賃借人の承諾があれば電磁的方法による提供もできます(38条3項・4項)。この書面は契約書とは別個の書面であることが必要とするのが判例です。説明をしなかったときは、更新がない旨の定めは無効になり、普通の建物賃貸借になります(38条5項)。
  • 終了の通知:期間が1年以上の場合、賃貸人は期間満了の1年前から6か月前までの間に終了を通知しなければ、終了を賃借人に対抗できません。通知期間を過ぎて通知したときは、通知の日から6か月を経過すれば対抗できます(38条6項)。
  • 賃借人の中途解約:居住用で床面積200平方メートル未満の建物について、転勤・療養・親族の介護などのやむを得ない事情で生活の本拠として使えなくなったときは、賃借人は解約を申し入れることができ、申入れから1か月で終了します(38条7項)。
  • 賃料改定の特約:借賃の改定に関する特約がある場合は、借賃増減請求(32条)は適用されません(38条9項)。たとえば「賃料は減額しない」という特約も有効になります。

また、法令や契約によって一定期間後に建物を取り壊すことが明らかな場合は、取り壊す時に賃貸借が終了する旨を定めることができます。この特約は、取り壊すべき事由を記載した書面(または電磁的記録)でしなければなりません(借地借家法39条)。

数字・期間のまとめ

項目数字・期間根拠
期間の定めがないとみなされる期間1年未満(定期建物賃貸借を除く)借地借家法29条
更新しない旨の通知期間期間満了の1年前から6か月前まで借地借家法26条
賃貸人からの解約申入れ申入れから6か月で終了(正当事由必要)借地借家法27条
賃借人からの解約申入れ申入れから3か月で終了民法617条
転借人への通知による転貸借の終了通知から6か月借地借家法34条
同居者の承継を拒む意思表示死亡を知った後1か月以内借地借家法36条
定期借家の終了通知(期間1年以上)満了の1年前から6か月前まで借地借家法38条6項
定期借家の賃借人の中途解約居住用200平方メートル未満/申入れから1か月借地借家法38条7項
e-Gov法令検索の借地借家法・民法をもとに作成(2026年10月確認)

試験で問われやすいポイント

  • 法定更新後の契約は「期間の定めがない」賃貸借になる。従前と同じ期間ではない
  • 正当事由が必要なのは賃貸人からの更新拒絶・解約申入れだけ
  • 造作買取請求権を排除する特約は有効。借地の建物買取請求権を排除する特約は無効
  • 定期借家の契約は書面でよく、公正証書に限られない。事前説明の書面は契約書とは別に必要
  • 定期借家の中途解約の特例は、居住用・200平方メートル未満・やむを得ない事情がそろったときに限られる

まとめ

  • 1年未満の期間は期間の定めなしとみなされ、50年を超える期間も定められる
  • 更新しない旨の通知は満了の1年前から6か月前まで。賃貸人には正当事由が必要
  • 建物の引渡しがあれば、登記がなくても新しい所有者に対抗できる
  • 定期借家は書面での契約と別書面による事前説明が必須。説明がなければ普通借家になる

この章の内容は、権利関係の一問一答で確認できます。

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