権利関係 第12章
借地借家法(借地)
この章では、借地借家法のうち「借地」のルールを学びます。借地借家法は、土地や建物を借りる人を保護するために民法の賃貸借を修正した法律で、権利関係では例年まとまった出題があります。存続期間や定期借地権の数字が多いので、表で整理しながら覚えましょう。
借地権とは
借地権とは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権のことです(借地借家法2条1号)。土地を貸す人を借地権設定者、借りる人を借地権者といいます。
建物の所有が目的でなければ、借地借家法は適用されません。たとえば、資材置き場や青空駐車場として土地を借りる場合は、民法の賃貸借だけが適用されます。また、臨時設備の設置など一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合は、存続期間・更新・建物買取請求・定期借地権などの規定は適用されません(借地借家法25条)。
存続期間と更新
存続期間
借地権の存続期間は30年です。契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間になります(借地借家法3条)。30年より短い期間を定めた場合や、期間を定めなかった場合は、30年になります。
更新後の期間は、最初の更新が20年、2回目以降が10年です。これより長い期間を定めることはできます(借地借家法4条)。これらに反する特約で借地権者に不利なものは無効です(借地借家法9条)。
更新のしかた
合意による更新のほか、次の2つの方法で契約が更新されたものとみなされます。どちらも土地の上に建物があることが条件です(借地借家法5条)。
- 更新請求:期間満了時に借地権者が更新を請求したとき
- 使用の継続:期間満了後も借地権者が土地の使用を続けるとき
借地権設定者は、遅滞なく異議を述べれば更新を拒めます。ただし、異議には正当の事由が必要です(借地借家法6条)。正当事由は、双方が土地を必要とする事情を中心に、これまでの経過、土地の利用状況、立退料などの財産上の給付の申出を考慮して判断されます。立退料の申出は、正当事由を補う要素の1つであり、それだけで正当事由が認められるわけではありません。
建物の滅失と再築
借地上の建物が火災や取壊しでなくなっても、借地権は当然には消滅しません。ルールは、最初の存続期間中か、更新後かで異なります。
最初の存続期間中の滅失
借地権者が残りの期間を超えて存続する建物を再築したとき、借地権設定者の承諾がある場合に限り、借地権は承諾日または建物の築造日のいずれか早い日から20年間存続します。残存期間のほうが長ければ、その期間によります(借地借家法7条1項)。
借地権者が再築する旨を通知し、借地権設定者が通知を受けてから2か月以内に異議を述べなかったときは、承諾があったものとみなされます(借地借家法7条2項)。承諾がなくても、借地権者は再築すること自体はできます。その場合、期間は延長されず、当初の期間満了時に更新できるかの問題になります。
更新後の滅失
更新後に建物が滅失した場合、借地権者は地上権の放棄または土地賃貸借の解約の申入れができます(借地借家法8条1項)。借地権者が承諾を得ずに残存期間を超える建物を築造したときは、借地権設定者が地上権の消滅請求または解約の申入れをできます(同条2項)。いずれも、申入れなどから3か月で借地権が消滅します(同条3項)。やむを得ない事情があるのに借地権設定者が承諾しないときは、借地権者は裁判所に承諾に代わる許可を求めることができます(借地借家法18条)。
借地権の対抗力
借地権の登記がなくても、借地権者が土地の上に自分の名義で登記された建物を所有していれば、借地権を第三者に対抗できます(借地借家法10条1項)。たとえば、Aの土地を借りたBが、自分名義で登記した建物を建てていれば、Aがその土地をCに売っても、BはCに借地権を主張できます。
- 建物の登記は、表示に関する登記(表題登記)でもよいとされています(判例)。
- 建物の登記名義が借地権者本人ではなく、家族(たとえば長男)名義の場合は、対抗力は認められません(判例)。
- 建物が滅失しても、建物を特定する事項・滅失の日・新たに建物を築造する旨を土地の見やすい場所に掲示すれば、対抗力が続きます。ただし、滅失の日から2年を過ぎた後は、その前に建物を再築して登記した場合に限られます(借地借家法10条2項)。
地代の増減と建物買取請求
地代等増減請求
地代が税金の増減や経済事情の変動、近隣の地代との比較で不相当になったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は将来に向かって増額または減額を請求できます。ただし、一定期間地代を増額しない特約があれば、それに従います(借地借家法11条1項)。協議が調わない間は、請求を受けた側は自分が相当と考える額を支払えば(または請求すれば)足ります。裁判で額が確定したら、差額に年1割の利息を付けて精算します(同条2項・3項)。
建物買取請求権
存続期間が満了し、契約が更新されないときは、借地権者は借地権設定者に対して、建物などを時価で買い取るよう請求できます(借地借家法13条1項)。借地権者の債務不履行で契約が解除された場合は、この請求はできないとするのが判例です。
借地上の建物を買った第三者が、借地権設定者から賃借権の譲渡・転貸の承諾を得られない場合、その第三者も建物の買取りを請求できます(借地借家法14条)。これらの規定に反する特約で借地権者に不利なものは無効です(借地借家法16条)。
裁判所による許可
借地権が賃借権の場合、借地上の建物を第三者に譲渡すると、通常は土地の賃借権も一緒に移るため、民法612条により借地権設定者の承諾が必要です。借地権設定者に不利となるおそれがないのに承諾してもらえないときは、借地権者の申立てにより、裁判所が承諾に代わる許可を与えることができます(借地借家法19条1項)。この申立ては、建物を譲渡する前に借地権者がします。
建物が競売・公売で第三者に取得された場合は、その第三者が申立てをします。申立ては、建物の代金を支払った後2か月以内に限られます(借地借家法20条1項・3項)。このほか、建物の種類・構造などを制限する借地条件の変更や、増改築の許可も、裁判所に申し立てることができます(借地借家法17条)。
定期借地権
更新がなく、期間満了で確実に土地が返ってくる借地権が定期借地権です。次の3種類があります。
| 種類 | 存続期間 | 建物の用途 | 契約の方式 |
|---|---|---|---|
| 一般定期借地権(22条) | 50年以上 | 制限なし(居住用も可) | 公正証書による等の書面(電磁的記録も可)で特約 |
| 事業用定期借地権等(23条) | 10年以上50年未満 | 専ら事業用(居住用は不可) | 公正証書に限る |
| 建物譲渡特約付借地権(24条) | 30年以上 | 制限なし | 方式の定めなし |
- 一般定期借地権:更新がない、建物の築造による期間の延長がない、建物買取請求をしない、の3つを特約で定めます(借地借家法22条)。「公正証書による等」とあるため、公正証書以外の書面でもかまいません。
- 事業用定期借地権等:存続期間30年以上50年未満なら、更新などを排除する特約を定めることができます。10年以上30年未満なら、更新・期間の延長・建物買取請求の規定はそもそも適用されません(借地借家法23条1項・2項)。社宅や賃貸マンションのように、居住用の建物を目的とするものは対象外です。契約は公正証書でしなければなりません(同条3項)。
- 建物譲渡特約付借地権:設定後30年以上経過した日に建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する特約です。借地権は譲渡で消滅しますが、建物を使い続けている借地権者や建物の賃借人が請求すれば、期間の定めのない建物賃貸借がされたものとみなされます(借地借家法24条)。
数字・期間のまとめ
| 項目 | 数字・期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 借地権の存続期間 | 30年(これより長い定めは有効) | 借地借家法3条 |
| 更新後の期間 | 最初の更新20年/2回目以降10年 | 借地借家法4条 |
| 再築の通知への異議 | 通知を受けてから2か月以内 | 借地借家法7条2項 |
| 承諾ある再築による延長 | 承諾日か築造日の早い日から20年 | 借地借家法7条1項 |
| 更新後の滅失による消滅 | 申入れ等から3か月 | 借地借家法8条3項 |
| 滅失後の掲示による対抗力 | 滅失の日から2年まで | 借地借家法10条2項 |
| 競売取得者の許可申立て | 代金支払後2か月以内 | 借地借家法20条3項 |
| 地代増減の精算利息 | 年1割 | 借地借家法11条 |
試験で問われやすいポイント
- 借地権の期間を20年と定めても30年になる。期間の定めがないときも30年
- 更新請求・使用継続による更新は、建物がある場合に限られる
- 対抗力のある建物登記は借地権者本人の名義が必要。家族名義では対抗できない
- 譲渡の許可を申し立てるのは、通常の譲渡なら借地権者、競売なら買受人(第三者)
- 事業用定期借地権は公正証書に限る。一般定期借地権は公正証書以外の書面でもよい
- 地代を「一定期間増額しない」特約は有効。条文が例外として認めているのは増額しない特約だけ
まとめ
- 借地権は建物所有目的の地上権・土地賃借権。存続期間は30年、更新後は20年・10年
- 更新拒絶には正当事由が必要。立退料の申出は判断要素の1つ
- 本人名義で登記した建物があれば、借地権の登記がなくても第三者に対抗できる
- 定期借地権は3種類。期間・用途・方式の違いを表で区別する
この章の内容は、権利関係の一問一答で確認できます。