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権利関係 第14章

区分所有法

この章では、マンションなどの区分所有建物のルールを定めた「建物の区分所有等に関する法律」(区分所有法)を学びます。区分所有法は、2025年5月に成立した改正法のうち区分所有法に関する部分が2026年4月1日から施行され、集会の決議要件が大きく変わりました。古い教材の数字のまま覚えないよう注意してください。

専有部分と共用部分

一棟の建物のうち、構造上区分され、独立して住居・店舗・事務所などに使える部分は、それぞれ所有権の対象になります(区分所有法1条)。この所有権を区分所有権、その対象となる部分を専有部分といいます。専有部分以外の建物の部分などを共用部分といいます(区分所有法2条)。

  • 法定共用部分:廊下や階段室など、構造上共用されるべき部分。区分所有権の対象になりません(区分所有法4条1項)。
  • 規約共用部分:本来は専有部分にできる部屋(集会室など)や附属の建物を、規約で共用部分としたもの。その旨の登記をしなければ第三者に対抗できません(区分所有法4条2項)。

共用部分は区分所有者全員の共有に属し、各共有者の持分は、規約に別段の定めがなければ専有部分の床面積の割合によります。床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積(内法面積)で計算します(区分所有法11条・14条)。共有者は、持分を専有部分と分離して処分できません(区分所有法15条)。共用部分については、民法177条(登記による対抗)は適用されません(区分所有法11条3項)。

敷地利用権と管理者

分離処分の禁止

専有部分を所有するための敷地に関する権利を敷地利用権といいます。敷地利用権が共有などの場合、区分所有者は、専有部分と敷地利用権を分離して処分できません。ただし、規約で別段の定めをすれば分離処分も可能です(区分所有法22条1項)。分離処分禁止に反する処分の無効は、善意の相手方には主張できませんが、分離処分できない旨の登記がされた後の処分なら主張できます(区分所有法23条)。

管理者

区分所有者は、規約に別段の定めがない限り、集会の決議で管理者を選任・解任できます(区分所有法25条1項)。管理者は区分所有者である必要はなく、法人もなれます。管理者は共用部分の保存、集会の決議の実行、規約で定めた行為をする権利と義務を負い(区分所有法26条1項)、少なくとも毎年1回集会を招集し、事務の報告をしなければなりません(区分所有法34条2項・43条)。

管理費の滞納などの債権は、債務者である区分所有者から専有部分を買った人(特定承継人)にも請求できます(区分所有法7条・8条)。中古マンションの買主は、前の所有者の滞納管理費を請求されることがある、ということです。

規約

  • 設定・変更・廃止:集会の特別決議(後述)で行います。一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすときは、その人の承諾が必要です(区分所有法31条1項)。
  • 公正証書による規約:最初に専有部分の全部を所有する者(分譲業者など)は、公正証書によって、規約共用部分・規約敷地・分離処分を可能にする定めなどに限り、単独で規約を設定できます(区分所有法32条)。
  • 作成と保管:書面または電磁的記録で作成し、管理者が保管します。利害関係人から請求があれば、正当な理由がない限り閲覧を拒めません。保管場所は建物内の見やすい場所に掲示します(区分所有法30条5項・33条)。
  • 効力:規約と集会の決議は、区分所有者の特定承継人にも効力を生じます。賃借人などの占有者も、建物などの使用方法については区分所有者と同じ義務を負います(区分所有法46条)。

集会の招集と決議

招集

集会は管理者が招集します。区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を持つ人は、管理者に集会の招集を請求できます。この定数は規約で減らせます(区分所有法34条)。招集通知は、会日の少なくとも1週間前に、会議の目的たる事項と議案の要領を示して発します。この期間は規約で伸ばすことはできますが、縮めることはできません(区分所有法35条1項)。区分所有者全員の同意があれば、招集手続を省略できます(区分所有法36条)。

2026年4月からの決議のしくみ

改正前は、多くの決議が「区分所有者全員」を母数にしていたため、集会に来ない無関心な人や所在不明の人がいると、決議が成立しにくい問題がありました。改正後は、建替え決議など区分所有権の処分を伴う決議を除き、集会に出席した区分所有者の多数決で決める方式になりました。

  • 普通決議:法律や規約に別段の定めがない限り、出席した区分所有者とその議決権の各過半数で決します(区分所有法39条1項)。
  • 特別決議:区分所有者の過半数で議決権の過半数を持つ人が出席し(定足数)、出席者とその議決権の各4分の3以上で決します。定足数は規約で引き上げることができます(区分所有法17条1項・31条1項など)。
  • 出席の扱い:書面や代理人による議決権の行使も、出席として数えます(区分所有法39条2項)。規約か集会の決議があれば、電磁的方法による議決権行使もできます(同条3項)。
  • 議決権:規約に別段の定めがなければ、共用部分の持分の割合(床面積の割合)によります(区分所有法38条)。専有部分を数人で共有するときは、議決権を行使する人を1人定めます(区分所有法40条)。

所在等不明区分所有者の除外

区分所有者が誰か分からない、または所在が分からないときは、他の区分所有者か管理者の請求により、裁判所は、その人以外の区分所有者で決議できる旨の裁判をすることができます(区分所有法38条の2第1項)。裁判で所在等不明とされた区分所有者は議決権を持たず、建替え決議などの母数からも除かれます(同条2項)。

主な決議事項と要件

決議事項要件根拠
共用部分の管理、軽微な変更(形状・効用の著しい変更を伴わないもの)、管理者の選任・解任普通決議(出席者の各過半数)18条・25条・39条
共用部分の重大な変更定足数+出席者の各4分の3以上(規約で過半数まで減らせる)17条1項
上のうち、瑕疵の除去やバリアフリー化に必要な変更定足数+出席者の各3分の2以上17条5項
規約の設定・変更・廃止、管理組合法人の設立定足数+出席者の各4分の3以上31条・47条
使用禁止・競売・引渡しの請求訴訟定足数+出席者の各4分の3以上(弁明の機会が必要)58条〜60条
大規模滅失(建物価格の2分の1超)の復旧定足数+出席者の各3分の2以上61条5項
建替え決議区分所有者と議決権の各5分の4以上(全体が母数)62条1項
耐震性不足などの事由がある建物の建替え決議区分所有者と議決権の各4分の3以上62条2項
「定足数」は区分所有者の過半数かつ議決権の過半数を持つ者の出席。e-Gov法令検索の建物の区分所有等に関する法律(2026年4月1日施行の改正を反映した現行法)と法務省「改正の概要」をもとに作成(2026年10月確認)

共用部分の変更が特定の専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときは、その専有部分の所有者の承諾が必要です(区分所有法17条2項)。保存行為(小さな修理など)は、各区分所有者が単独でできます(区分所有法18条1項ただし書)。集会では、あらかじめ通知した事項についてのみ決議できますが、特別決議以外の事項は規約で別段の定めができます(区分所有法37条)。議事録は議長が作成し、議長と出席した区分所有者2人が署名します(区分所有法42条)。

義務違反者に対する措置

区分所有者は、建物の保存に有害な行為など、区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはなりません。賃借人などの占有者も同じです(区分所有法6条1項・3項)。違反者に対しては、次の段階的な措置があります。

  1. 行為の停止等の請求:裁判外でも請求できます。訴訟を起こすには普通決議が必要です(区分所有法57条)。
  2. 専有部分の使用禁止請求:相当の期間の使用禁止を訴えで請求します(区分所有法58条)。
  3. 区分所有権の競売請求:判決確定から6か月を過ぎると競売を申し立てられません(区分所有法59条)。
  4. 占有者に対する契約解除・引渡し請求:賃借人などの占有者が違反した場合です(区分所有法60条)。

2〜4は訴えによる必要があり、特別決議と、あらかじめ違反者に弁明の機会を与えることが必要です(区分所有法58条2項・3項、59条2項、60条2項)。

復旧と建替え

建物の価格の2分の1以下に相当する部分が滅失した(小規模滅失)ときは、各区分所有者が共用部分と自分の専有部分を復旧できます。集会で復旧の決議(普通決議)をすることもできます(区分所有法61条1項・3項)。2分の1を超える部分が滅失した(大規模滅失)ときは、特別な多数決で復旧を決議します(同条5項)。決議の日から2週間を経過すると、決議に賛成しなかった区分所有者は、賛成者に建物と敷地の権利を時価で買い取るよう請求できます(同条7項)。

建替え決議は、区分所有者と議決権の各5分の4以上で行います。出席者ではなく全体(所在等不明として除外された人を除く)が母数です。耐震性の不足、火災に対する安全性の不足、外壁の剥落のおそれ、給排水管の著しい劣化、バリアフリー基準への不適合のいずれかに当たる場合は、4分の3以上に緩和されます(区分所有法62条1項・2項)。建替え決議の集会の招集通知は会日の少なくとも2か月前に発し、会日の少なくとも1か月前までに説明会を開かなければなりません(同条6項・8項)。2026年4月からは、建物の更新(一棟リノベーション)や建物・敷地の売却、取壊しなどの決議も、各5分の4以上で行えるようになりました。建物・敷地の売却を伴う決議では、敷地利用権の持分の価格でも5分の4以上が必要です(区分所有法64条の5〜64条の8)。

数字・期間のまとめ

項目数字・期間根拠
集会の招集請求区分所有者と議決権の各5分の1以上(規約で減らせる)34条3項
招集通知会日の1週間前まで(規約で伸長のみ可)35条1項
建替え決議の招集通知・説明会2か月前まで/説明会は1か月前まで62条6項・8項
管理者の集会招集・事務報告毎年1回34条2項・43条
管理組合法人の理事の任期2年(規約で3年以内の別段の定め可)49条6項
競売の申立て期限判決確定から6か月59条3項
e-Gov法令検索の建物の区分所有等に関する法律(2026年4月1日施行の改正を反映)をもとに作成(2026年10月確認)

試験で問われやすいポイント

  • 2026年4月以降、普通決議・特別決議は出席者が母数。建替え決議は全体が母数のまま
  • 特別決議には定足数(区分所有者・議決権の各過半数の出席)がある。書面・代理人による行使も出席に数える
  • 招集通知の1週間は規約で伸ばせるが縮められない。招集請求の5分の1は規約で減らせる
  • 規約共用部分は登記がなければ第三者に対抗できない
  • 滞納管理費は特定承継人(買主)にも請求できる
  • 使用禁止・競売・引渡し請求には、特別決議・弁明の機会・訴えの3つが必要

まとめ

  • 共用部分の持分は専有部分の床面積(内法)の割合。専有部分と分離して処分できない
  • 2026年4月施行の改正で、多くの決議が出席者の多数決になり、所在等不明区分所有者を裁判で除外できるようになった
  • 重大変更・規約は出席者の4分の3、瑕疵除去・バリアフリーの変更と大規模滅失の復旧は3分の2
  • 建替えは全体の5分の4。耐震性不足などの事由があれば4分の3

この章の内容は、権利関係の一問一答で確認できます。

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