権利関係 第18章
請負・委任・その他の契約
この章では、売買・賃貸借以外の主な契約として、請負・委任・贈与・使用貸借・消費貸借を学びます。宅建業者の媒介契約や、マンションの管理委託契約は委任(準委任)の性質を持ち、建物の建築工事は請負にあたるため、実務にもつながる分野です。それぞれの契約で「いつ報酬を払うか」「いつ解除できるか」「何で終了するか」を比べながら覚えましょう。
請負
請負は、請負人がある仕事を完成することを約束し、注文者がその結果に対して報酬を支払うことを約束することで成立します(民法632条)。家の建築やリフォーム工事が典型です。仕事の完成が目的である点が、委任との大きな違いです。
報酬の支払時期
報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に支払います(民法633条)。つまり、請負人の仕事の完成が先、目的物の引渡しと報酬の支払いが同時という順番です。
注文者の責めに帰することができない事由で仕事を完成できなくなったときや、完成前に契約が解除されたときでも、すでにした仕事のうち可分な部分で注文者が利益を受けるときは、その部分を完成とみなします。請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求できます(民法634条)。
請負人の契約不適合責任
請負は有償契約なので、売買の契約不適合責任の規定が準用されます(民法559条)。完成した建物に欠陥があれば、注文者は修補などの追完、報酬の減額、損害賠償、解除を請求できます。2020年4月の改正前にあった「建物などの土地の工作物は解除できない」という制限は削除され、建物でも要件を満たせば解除できます。
- 注文者の指図などによる不適合:注文者が提供した材料の性質や、注文者の指図によって生じた不適合については、責任を追及できません。ただし、請負人がその材料や指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは別です(民法636条)。
- 期間の制限:注文者は、種類・品質の不適合を知った時から1年以内に請負人に通知しなければ、責任を追及できなくなります。ただし、引渡しの時に請負人が不適合を知っていたか、重大な過失で知らなかったときは、この制限はかかりません(民法637条)。
新築住宅の請負人は、構造耐力上主要な部分などの瑕疵について、引渡しから10年間責任を負います(住宅の品質確保の促進等に関する法律94条)。
注文者による解除
請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除できます(民法641条)。注文者にとって不要になった仕事を続けさせても意味がないためです。完成した後は、この方法では解除できません。
委任
委任は、委任者が法律行為をすることを受任者に委託し、受任者がこれを承諾することで成立します(民法643条)。法律行為でない事務(たとえば建物の管理業務)を委託する契約は準委任といい、委任の規定が準用されます(民法656条)。
受任者の義務
- 善管注意義務:受任者は、無償の場合でも、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負います(民法644条)。無償の寄託で受寄者の注意義務が「自己の財産に対するのと同一の注意」に軽減されるのとは異なります。
- 復受任者の選任:委任者の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、ほかの人に事務を任せられません(民法644条の2)。
- 報告義務:委任者の請求があればいつでも事務の状況を報告し、委任の終了後は遅滞なく経過と結果を報告します(民法645条)。
- 受取物の引渡し:事務処理で受け取った金銭などは委任者に引き渡します(民法646条)。
報酬と費用
委任は、特約がなければ無償です。受任者は特約がなければ報酬を請求できません(民法648条1項)。報酬を受ける場合も、原則として事務を履行した後でなければ請求できません(同条2項)。委任者の責めに帰することができない事由で履行できなくなったときや、委任が途中で終了したときは、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求できます(同条3項)。
一方、費用については、受任者は前払いを請求できます(民法649条)。必要な費用を支出したときは、その費用と支出の日以後の利息の償還を請求できます(民法650条1項)。受任者が自分に過失なく損害を受けたときは、委任者に賠償を請求できます(同条3項)。
解除と終了
委任は、委任者・受任者のどちらからでも、いつでも解除できます(民法651条1項)。ただし、次の場合は、やむを得ない事由があったときを除き、相手方の損害を賠償しなければなりません(同条2項)。
- 相手方に不利な時期に解除したとき
- 委任者が、受任者の利益(報酬を得ることだけによるものを除く)をも目的とする委任を解除したとき
委任は、次の事由で終了します(民法653条)。委任者と受任者で事由が異なる点に注意してください。
| 終了事由 | 委任者 | 受任者 |
|---|---|---|
| 死亡 | 終了する | 終了する |
| 破産手続開始の決定 | 終了する | 終了する |
| 後見開始の審判 | 終了しない | 終了する |
委任が終了しても、急迫の事情があるときは、受任者やその相続人は、委任者側が事務を処理できるようになるまで必要な処分をしなければなりません(民法654条)。また、終了事由は、相手方に通知したか、相手方が知っていたときでなければ、相手方に対抗できません(民法655条)。代理との関係は代理の章もあわせて確認してください。
贈与
贈与は、贈与者が財産を無償で与える意思を表示し、受贈者が受諾することで成立します(民法549条)。書面は成立の要件ではありませんが、書面によらない贈与は、各当事者が解除できます。ただし、履行の終わった部分は解除できません(民法550条)。不動産の場合、判例は、引渡しか所有権移転登記のどちらかがあれば履行が終わったとしています。
- 贈与者の責任:贈与者は、目的物を贈与の目的として特定した時の状態で引き渡すことを約束したものと推定されます(民法551条1項)。
- 負担付贈与:受贈者が一定の負担(たとえば贈与者の介護)を負う贈与です。贈与者は負担の限度で売主と同じ担保責任を負い、双務契約の規定も準用されます(民法551条2項・553条)。
- 死因贈与:贈与者の死亡によって効力を生じる贈与で、性質に反しない限り遺贈の規定が準用されます(民法554条)。
使用貸借と消費貸借
使用貸借
使用貸借は、物を無償で使用させる契約です。2020年4月の改正で、合意だけで成立する諾成契約になりました(民法593条)。ただし、貸主は、借主が物を受け取るまでは解除できます。書面による使用貸借の場合は、この解除はできません(民法593条の2)。賃貸借と比べた主な違いは次のとおりです。
| 項目 | 使用貸借 | 賃貸借 |
|---|---|---|
| 対価 | 無償 | 賃料を支払う |
| 通常の必要費 | 借主が負担(595条1項) | 貸主が負担(608条1項) |
| 借主の死亡 | 契約が終了する(597条3項) | 賃借権は相続される |
| 第三者への対抗 | 対抗できない | 登記や借地借家法の要件で対抗できる |
| 借地借家法の適用 | なし | 建物所有目的の借地・建物賃貸借にあり |
使用貸借は、期間を定めたときは期間満了で終了し、期間を定めず使用目的を定めたときは、その目的に従った使用を終えた時に終了します(民法597条1項・2項)。目的に従った使用に足りる期間が経過したときは、貸主は解除できます。期間も目的も定めなかったときは、貸主はいつでも解除できます。借主は、いつでも解除できます(民法598条)。
消費貸借
消費貸借は、お金などを借りて使い、同じ種類・品質・数量の物を返す契約です。原則として、借主が物を受け取ることで成立します(民法587条)。ただし、書面でする消費貸借は、合意だけで成立します。この場合、借主は物を受け取るまで解除できますが、貸主に損害が生じたときは賠償しなければなりません(民法587条の2)。住宅ローンの金銭消費貸借契約が典型例です。
数字・期間のまとめ
| 項目 | 数字・期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 請負の契約不適合の通知 | 不適合を知った時から1年以内 | 民法637条 |
| 新築住宅の請負人の瑕疵担保責任 | 引渡しから10年 | 住宅品確法94条 |
| 使用貸借の損害賠償・費用償還の請求 | 返還を受けた時から1年以内 | 民法600条 |
試験で問われやすいポイント
- 請負の報酬は目的物の引渡しと同時。委任の報酬は履行の後(後払い)
- 注文者は完成前ならいつでも損害を賠償して解除できる。委任は双方がいつでも解除できる
- 無償の委任でも受任者は善管注意義務を負う
- 委任者が後見開始の審判を受けても委任は終了しない。受任者の後見開始では終了する
- 書面によらない贈与は解除できるが、履行が終わった部分は解除できない
- 使用貸借は借主の死亡で終了し、通常の必要費は借主が負担する
まとめ
- 請負は仕事の完成が目的。不適合は知った時から1年以内に通知する
- 委任は原則無償で、いつでも解除できる。不利な時期の解除などは損害賠償が必要
- 贈与・使用貸借は無償契約。書面の有無で解除の可否が変わる
- 消費貸借は原則として物の受取りで成立し、書面でするなら合意で成立する
この章の内容は、権利関係の一問一答で確認できます。